嫌な流れを払拭し、ヤンキースの待つWSへと誘う――大谷翔平が珍しく自画自賛した打席とは?【NLCS第6戦】
緊張感あふれるマナイアとの駆け引き
一回表、いきなりメッツに先制を許した。しかも、四球と失策が絡み、無駄な失点だった。大谷も、「嫌な流れだった」と振り返るほど。しかしその裏、先頭の打席に立った大谷は、ショーン・マナイアが2-2から投げた外角のシンカーを捉え、センター前へ。これで俄然、客席が覇気を取り戻した。
大谷も珍しく、「いい打席だった」と自画自賛。
「前回も抑えられていた素晴らしい投手ではあるので、なかなか自分の思い通りの打席、チャンス自体が少ないんじゃないかと思っていた。チームとして流れを戻せるように仕事がしたかった」
1死後、テオスカー・ヘルナンデスのヒットで一、三塁。続くエドマンが、左翼線に運んで、ドジャースは鮮やかに逆転した。
ちなみに、あの中前安打は、シーズン後半に入って2ストライクと追い込まれた後、外角のバックドアシンカーに翻弄されてきた大谷が、ついにそれを捉えた瞬間でもあった。
1打席目の大谷翔平への配球 【参照:MLB.COM「GAME DAY」】
最初の4球は全てシンカーで2-2。いつ、得意のスイーパーを投げてくるのか。意表をついて、チェンジアップで仕留めようとするのか。見ていて、最初から緊張感があった。
当然、大谷の頭にもスイーパーがあったはず。そして、ボールになるスイーパーには手を出してはいけない、そんな意識も働いていたはず。外角に来た時点で、よりそう意識したのではないか。それこそが相手の狙いで、その場合、ボールからストライクゾーンに入って来るシンカーを見逃す傾向があることは、前回、マナイアと対戦したときにも紹介した。
マナイアとしては完璧な配球だったが、どこかで1球、スイーパーを見せておくべきだったかもしれない。もはや大谷に軌道を読まれていた。
10月にプレーできることへの感謝と喜び
試合後に記念撮影を行うドジャースの選手たち 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】
第2戦を終えてニューヨークに移動したとき、大谷は練習日に設けられた会見に出席した。そのとき、バリー・ボンズ(ジャイアンツなど)やアレックス・ロドリゲス(ヤンキースなど)も、プレーオフでは苦しんだが――という、大谷が不振であることを前提にした質問が続いていた。
確かにその時点では、打率.222、出塁率.344、OPS.677だったが、以降の4試合では打率.400、出塁率.571、OPS1.371。もはや懸念の声は消えていた。
期待が大きければ大きいほど、プレッシャーは大きくなる。そこで結果が出なければ、さらに背負うものが重く感じるはず。大谷はそこにどう向き合っていたのか?
その問いに大谷は、「出た結果に対してそれは受け止めればいい」と淡々と答えた。
「それはそれで自分の今後の糧になる。もちろんいい結果を望んでいますし、そうなるように努力はしてますけど、(10月に)プレーするということ自体が大事なので」
10月までプレーできることへの感謝。結果云々より、そこに喜びを感じていた。状況を「楽しい」とも形容したが、振り子の原理でいえば、その対になるのは、どうだろう、これまでポストシーズンをテレビで見ていた悔しさだろうか。
大谷は、怯えることなく、嬉々としてワールドシリーズを迎える。
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