週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#23】完全復活なるか、10年に1人の遊撃手・宗山塁 抜群のスピードが武器・庄子雄大

西尾典文
 秋に行われるドラフト会議に向けて、年間400試合以上のアマチュア野球を観戦し、ドラフト中継番組では解説も務めるベースボールライター西尾典文さんが、有望なアマチュア選手を毎週レポートします。

 高校生と大学生のプロ志望届提出もスタート。候補選手は最後のアピールが続けていますが、今回は大学生野手で最注目のショートと、それに続く存在となりそうな選手を紹介します。
(企画編集:Timely!編集部)

*現時点のレベルバロメーター:★の数
★★★★★ 5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆ 4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆ 3:上位指名(2位以上)の可能性あり
★★☆☆☆ 2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆ 1:育成であれば指名濃厚

「10年に1人の大学生ショート。完全復活に期待かかる」

打撃、守備ともに秀逸な明大・宗山には複数球団からの指名がありそう 【写真提供:西尾典文】

宗山塁(明治大 4年 遊撃手 175cm/78kg 右投/左打)

【将来像】鳥谷敬(元阪神、ロッテ)

安定感抜群の守備と広角に鋭く打ち分ける打撃で鳥谷以来の大物と見られる

【指名オススメ球団】ソフトバンク
今宮健太の後釜候補として最適な人材と考えられるため

【現時点のドラフト評価】★★★★★
複数球団の1位入札濃厚

 今年の野手で最大の目玉と見られているのが宗山だ。初めてプレーを見たのは広陵の1年秋で出場した明治神宮大会。チームは初戦で奥川恭伸(現ヤクルト)に完璧に抑え込まれてコールド負けを喫したが、宗山自身は2安打を放ち、その高いミート力は際立っていた。大学でも1年春の途中からショートのレギュラーに定着し、これまで3度のベストナインも受賞している。

 しかし今年の宗山はアクシデントが重なることとなる。2月のオープン戦で右肩に死球を受けて骨折。リーグ戦の開幕には何とか間に合ったものの、その後のオープン戦では右手の指を負傷し、春は5試合の出場で4安打という成績に終わったのだ。積み上げてきた実績があるだけに評価が下がることはなさそうだが、ドラフトの目玉としては寂しい最終学年のスタートとなったことは確かだろう。

 そんな宗山が久しぶりに多くの観客の前でプレーする機会となったのが8月31日と9月1日に行われた「北海道ベースボールウィーク2024」だ。東京六大学の選抜チームの一員として参加した試合だが、両日とも多くのファン、関係者が会場となったエスコンフィールドに詰めかけていた。31日の日本ハム二軍との試合では途中出場ながら2安打をマーク。翌日の東京六大学オールスター戦では3番、ショートでフル出場し、先制のタイムリーを含む2安打を放ち、復調ぶりをアピールした。ショートの守備が取り上げられることが多いが、打撃もリーグ戦通算打率.334が示すように高い技術を備えていることは間違いない。特に素晴らしいのがスイングの軌道とバランスの良さだ。タイミングをとる動きに無駄がなく、ボールを長く見て振り出すことができ、どのコースにもスムーズにバットが出ている。春は骨折による調整不足からか少し力みも見られたが、夏はしっかり練習ができたとのことで、そんな雰囲気も感じられなかった。

 守備も全てが高レベルだが、特に際立っているのがハンドリングの巧みさだ。難しいバウンドのゴロに対しても難なくさばき、素早く持ち替えて送球することができている。それを可能にしていると思われるのが準備と落ち着きである。速く動いていても捕球する位置をよく考えているように見え、決して慌てるようなことがない。日本ハム二軍との試合でも二遊間の緩いゴロを見事にさばいてアウトにして見せた。

 ここ数年は1年目から一軍で活躍している野手は少ないが、そうなれる可能性は十分に秘めており、10年以上ショートのレギュラーとして期待できる稀有な存在である。学生野球最後のシーズンは春の悔しさを晴らすような活躍でドラフト指名に花を添えてくれることを期待したい。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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