バドミントン女子複の櫻本/東野、新ペア誕生のきっかけは「勝湯」トーク

平野貴也

新ペアでの挑戦を始めた櫻本(右)/東野ペア 【平野貴也】

 新ペア誕生のきっかけは、大浴場での告白だった。バドミントンの女子ダブルスで注目の新ペアが始動した。9月11日に最終日を迎えた全日本社会人選手権がデビュー戦となった、櫻本絢子/東野有紗(ヨネックス/BIPROGY)は、決勝戦で日本A代表の中西貴映/岩永鈴(BIPROGY)に敗れて準優勝となった。すでに連係を築き上げている相手に対し、ペアを組むことを決めてから10日ほどしか練習ができていない状態で臨んだが、東野は「優勝するのが目標で臨んだけど、最後は自分たちの良い形が出なかった」と悔しがった。種目を変えて、もう一度、世界のトップを狙う。強い意気込みが垣間見えた瞬間だった。

 東野は、今夏のパリ五輪において、渡辺勇大(BIPROGY)と組んだ混合ダブルスで2大会連続の銅メダルを獲得。集大成の場として臨んだパリ五輪後に、渡辺とのペア解消を公表した。櫻本は、宮浦玲奈(ヨネックス)と組む女子ダブルスでパリ五輪の出場権獲得レースに臨んだが、惜しくも出場はならず。パートナーの宮浦が現役引退を発表していた。

 2人がペアを組んで全日本社会人選手権にエントリーしたことが明らかになった時点で注目されたが、東野は渡辺と組んで出場した最後の大会となった8月のダイハツジャパンオープンの記者会見で、今後は櫻本と女子ダブルスで2028年ロサンゼルス五輪を目指すと宣言。実績十分の2人が組む新ペアとして注目を集めていた。

東野「サクはどうするの?」 櫻本「有紗と組めたら」

新ペア誕生のきっかけは、お風呂トークだった 【平野貴也】

 だが、異なる種目でプレーしていた2人は、所属チームも異なる。ペアを組むきっかけは、日本代表が合宿を行うナショナルトレーニングセンター内にある「勝湯(かちのゆ)」と名付けられた大浴場での会話だった。元々、2人は仲が良く、種目が違うこともあり、気兼ねなくバドミントンの話をすることが多かったという。当然のように、2人で組んだらどうなるかといった話も何度かしたことがあったが、どちらも当時のペアで真剣に世界の頂点を目指している最中であり、互いが冗談と捉えていた。ただ、その中で東野が「(混合ダブルスでの挑戦を終えたら)女子ダブルスで世界のトップを目指してみたい」と言ったのを、櫻本は聞き逃さなかった。組めたら絶対に楽しい――東野は、櫻本と同じ左利きの選手と組むことに慣れていて、なおかつ後衛の櫻本を生かせる前衛タイプの選手。あっという間にイメージができた。

 新ペア結成へ風が吹き始めたのは、パリ五輪のレース中だった。終盤に差し掛かるにつれ、少しずつ五輪出場権を獲得する選手、出場の可能性が消える選手に分かれていく。五輪後はどうするのかが気になり始めるのは、自然だ。大浴場で一緒になった際、東野が「サクは(五輪が)終わった後どうするの?」と聞いたときに、櫻本が思いを打ち明けた。

「このタイミングで言ってみようかと思いました。自分ができるところまでやりたい。できれば、有紗と組めたらと言いました」(櫻本)

 東野は驚いたが、考えさせてほしいと返答。レースが終わりを迎える頃にあらためて話し合い、東野も組んでやりたいと話して新たなペアが誕生することになった。目標設定は、櫻本の思いがベースだ。東野が組むと言わなければ、現役を退く可能性が高かったため、いつまでやるかの期限は、東野の決断次第で良いと伝えた上で「一度も五輪に出たことがないから、ロスを目指したい気持ちはある」と話すと、3度目の五輪まで見据えるか悩んでいた東野が「よし、じゃあ、やろう」と覚悟を決めたという。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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