不安抱えるバドミントン日本代表、パリ五輪で銅1個の前回大会を超えられるか

平野貴也

パリ五輪に臨む、バドミントン日本代表 【平野貴也】

 厳しい戦いになりそうだ。パリ五輪に臨むバドミントン日本代表は、苦戦必至の様相を呈している。バドミントンは、7月15日に全種目の組み合わせが決定。選手は、20日に出国した。27日には、競技開始を迎える。シングルスは、3~4人1組の予選ラウンドから各組1位が、ダブルスは、4~5ペア1組のグループリーグから各組上位2位が、それぞれ決勝トーナメントに進む。日本は全5種目に出場者がおり、いずれも上位進出を狙える実力を持つ。

 ただし、メダル獲得の可能性は確かにあるが、可能性は高いのかと言われると評価が難しい。朴柱奉ヘッドコーチは、日本の位置をメダル争いの「ボーダーライン」と表現する。その上、6月には、前回の東京五輪で銅メダルを獲得した混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)や、女子シングルスで3大会連続の五輪出場を果たす山口茜(再春館製薬所)が、負傷で大会を欠場や途中棄権となった。男子ダブルスや女子ダブルスは、かなり厳しい組み合わせとなり、暗雲が漂っている。

 前回大会は、銅メダル1個。パリで雪辱を果たす可能性はあるが、早期敗退の可能性もあり、序盤から緊迫した戦いとなる。

混合複は5組の争い、金を狙う渡辺/東野のライバル増加

前回銅メダルの「ワタガシ」ペア。東野(右)の足の回復具合が気がかりだ 【平野貴也】

 混合ダブルスは、渡辺/東野ペアが2大会連続で出場する。前回は、中国が圧倒的な2強で、ほかが3番手を争う勢力図。その中で優位にいた2人が銅メダルを獲得した。しかし、情勢は変化。良い面では、日本が、中国との距離を縮めた。世界ランク1位の鄭思維/黄雅瓊(中国)との通算対戦成績は5勝15敗だが、東京五輪後は、3勝7敗。歴然とした力量差はなくなり、金メダルまでの距離は確実に縮まった。

 一方、前回よりもライバルが増え、メダル獲得の難度自体は高まった。上記の中国ペアと、日本、東京五輪金メダルから男子選手が若手に切り替わった馮雪穎/黄東萍(中国)、23年世界王者の徐承宰/蔡侑玎(韓国)、21年世界王者のデチャポル/サプシリー(タイ)の5組がメダル候補だが、その下の層も台頭している。日本は、同組のデンマークペアが出場を辞退したため、グループリーグを3組で争う。

 6月に左足首を痛めた東野の動きが、どこまで戻っているかが気がかりだが、準々決勝でトップ4シードとの対戦を避けるため、1位通過ができるかが鍵となる。

山口の復調は間に合うか? 女子単も5強の争い

山口は、過去2大会でベスト8。3度目の五輪挑戦でメダル獲得なるか 【平野貴也】

 女子シングルスには、3大会連続出場を果たす山口茜(再春館製薬所)と、初出場の大堀彩(トナミ運輸)が出場する。優勝候補の筆頭は、23年世界王者のアン・セヨン(韓国)。しかし、21年と22年に世界選手権を連覇している山口、21年東京五輪金メダルの陳雨菲(中国)、最も長い期間世界ランク1位を保持していた戴資穎(台湾)、16年リオデジャネイロ五輪の女王キャロリーナ・マリン(スペイン)の4人は、十分に対抗可能で5強の争いと言える。

 山口は、昨秋から負傷を繰り返しており、6月の大会は欠場。7月12日に公開された直前合宿の際に「痛みはないけど、スピードも上げていかないといけない。動きは6、7割」と話しており、復調具合が気がかり。特に、早いタイミングでシャトルを触り続ける攻撃的なラリーには、スピードの持続が不可欠。持ち味を出せるかどうかが分からない部分は、不安要素だ。ただ、金メダル候補の最右翼であるアンも負傷を抱えながら勝利を挙げており、できるプレーでどのように試合を組み立てるかという部分も注目される。

 不調等で5強体制が崩れれば、ダークホース誕生の可能性が急浮上する。日本勢2番手の大堀は、打倒シード選手を狙う立場。昨秋には戴資穎やマリンを破っており、アップセットを狙える力がある。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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