渡邊雄太の千葉ジェッツ加入が持つ意味 「代表」「バスケ界」にも及ぶ大物帰国の影響

大島和人

千葉J、代表へのインパクトは?

グリーソン新HCもラプターズ時代に指導を受けた旧知の関係 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 千葉Jは富樫の他にも原修太、金近廉といった日本代表経験者がいる。そこに「超外国籍級」の日本人選手が加わるのだから、かなり強烈な補強だ。千葉Jのチケットやグッズ販売はもちろんだが、Bリーグ初年度の田臥勇太と同様に「相手チーム」の売上にも貢献するだろう。

 代表にとっても、その帰国は大きい。NBAやNCAAでプレーする選手は、夏のオフ期間を除くと代表の合宿や国際試合に参加することが難しかった。しかし渡邊は今後、FIBAアジアカップやワールドカップの予選に縛りなく出場できるようになる。

 彼はこう日本代表への意欲を語っていた。

「今までシーズン中にもかかわらず、Bリーガーたちが日本代表として海外まで行ってプレーしたり、本当に大変なスケジュールをこなしてくれたからこそ、僕だったりアメリカでやっている選手は夏の間だけ帰ってきてW杯やオリンピックに参加できていました。これからはBリーグでやる身として、自分が招集されたときはしっかり期待に応えられるように、全力でやっていけたらなと思っています」

 トレヴァー・グリーソン新ヘッドコーチはオーストラリア出身の56歳だが、トロント・ラプターズ在籍時に指導を受けていた。

「元々決まっていたコーチ(※前ドイツ代表HCのゴードン・ハーバート氏)が、契約をしていたのに断ったことをのちのち知ったので、トレヴァーから僕に連絡が来て『チームと話しをしているのだけど、教えて欲しい』と言われて、どこのチームか聞いたら千葉で驚きました。スタートはそういうところでしたが、でも彼に決まってすごく嬉しかったです。彼の熱量や知識はジェッツだけでなく、日本のバスケット界を盛り上げるのに必要だとも思います」

11年ぶりの帰国

千葉Jファンの「熱量」もBリーグ屈指だ 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 もちろん「日本のバスケット界を盛り上げる」という意味では、誰よりも渡邊にかかる期待が大きい。ただ会見を通して上から目線のコメントは一切せず、他のクラブや選手を「立てる」内容の言葉が多かった。そんな謙虚さ、優しさは彼の「らしさ」だろう。

 渡邊は尽誠学園高を卒業してから、11年にわたってアメリカでプレーしていた。オフは帰国していたものの、「最大1カ月くらい」の日本滞在だったという。期待の新顔はこれまでの日本バスケを支えた仲間たちへの感謝を述べつつ、抱負をこう言葉にしている。

「Bリーグに帰ってくることを、これだけ取り上げてもらえているのは、僕のいない間もずっと盛り上がっていたところが大きな理由だと思います。Bリーグを作り上げてくださっている方々、ずっとプレーをして素晴らしいリーグにしてくれた選手たちに感謝しています。NBAや日本代表の経験をチームメイトやリーグに還元できるように、レベルの高いプレーをコート上でお見せしたいです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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