陸上、競泳、バドミントン…28年ロサンゼルス五輪へ次代を担う新星は? 4年後の戦いはもう始まっている

折山淑美

競泳ニッポン復活を託された新星スイマー

パリ五輪出場は逃すものの、代表選考会の1500m自由形で優勝した今福和志。指導する太田伸コーチも熱いまなざしを向ける 【写真は共同】

 競泳のロス五輪世代といえば、パリ五輪代表の中では女子100mバタフライの平井瑞希(アリーナつきみ野SC/日大藤沢高3年)と、男子400m個人メドレーの松下知之(東洋大1年)は注目の選手だ。3月の代表選考会ではともに、第一人者の池江璃花子(横浜ゴム/ルネサンス)と瀬戸大也(CHARIS&Co.)を破る優勝で今回、初の代表入りを果たした。

 リオデジャネイロ五輪に高校1年で出た池江は本番で、100mバタフライの自己ベストを大会前より0秒69伸ばす56秒86で5位になり、そこから一気に飛躍した。代表選考会は56秒91の自己ベストで優勝した平井は6月には56秒33まで記録を伸ばしているが、パリでそこからどこまで積み上げて飛躍のきっかけをつかめるか注目。またパリで競泳ニッポン唯一のメダリストとなった松下は、同じ栃木県の先輩の萩野公介が初代表のロンドン五輪で銅メダルを獲得して次のリオでの金につなげたように、ロス五輪に向けてどんな進化を見せてくれるか楽しみだ。

 パリは逃した中では、代表選考会の男子1500m自由形を15分04秒36で制した今福和志(枚方SS/四條畷学園高2年)も、近年世界に遠かった種目ということもあり面白い存在だ。彼を指導する枚方SSの太田伸コーチは「小さい時からジュニアオリンピックには出ているけど、個人の出場は200メートル自由形が種目に入る小学5年からで、完全な長距離タイプの選手。身長も181センチあって今も伸びているので、その辺も有望です」と話す。

 8月下旬のジュニアパンパシフィック選手権の代表だが、オープンウォーターもやっていて9月の世界ジュニアの7.5キロメートルの代表でもある。

「1500メートルに関しては早く14分台の派遣標準記録をいつでも切れるくらいにして、(来年)3月の日本選手権で世界選手権代表権を取るのが最短の目標。オープンウォーターをやっていると1500メートルがドンドン短く感じてくるみたいで、楽しくやっています。世界のトップに行くためにはいずれは海外でも練習拠点を見つけてレベルの高い選手と練習をしなければいけないが、人なつっこい性格で海外の試合に行く度に友達をいっぱい作ってくるので、そこは上手くやっていけると思います」(太田コーチ)

 まだ体は細くて泳ぎも粗いが、これから筋肉をつけながら泳ぎ込めば、さらなる進化も期待大だ。

 同じくオープンウォーター世界ジュニアの10キロメートルに出場する奥園心咲(枚方SS/立命館大1年)も、代表選考会では400メートル自由形と800メートル自由形、200メートルバタフライ、400メートル個人メドレーで決勝に進出し、ジュニアパンパシフィック代表でこれからを嘱望されている選手だ。

「ずっと自由形だったが、2年前のジュニアパンパシフィックの代表になった時くらいから少し記録が止まりかけていたのでオープンウォーターと、競泳ではバタフライや個人メドレーを新しい刺激として入れながらやっているところです。彼女はセンスがよく、どの泳法でもきれいに泳げる。まだあまり出ていない自由形長距離もこれからはやっていくので伸びてくると思うが、まずは種目を決めずに全部やっていき、五輪選が近づいてきたら種目を絞っていけばいいと考えています」(太田コーチ)

 小学2年からマレーシアに5~6年住み、現地で水泳をやりながら長期休暇の時は枚方に来て泳いでいた。英語も話せて海外の試合でも物怖じしないところは利点だ。

 また代表選考会の男子400メートル自由形で4位、400m個人メドレー5位の西川我咲(豊川高3年)も、自由形のセンスはよく、練習も高いレベルでこなしている期待の選手だ。太田コーチは「真面目な選手で、2月のコナミオープンの400メートル個人メドレーで4分11秒94を出したから、五輪代表争いに絡むかと思ったほど。距離適性は400メートルで、これからは400メートル個人メドレーで行くと思うが、自由形も強いので出てくると思います」と評価している。

超高校級プレーヤーから世界の頂へ

女子バドミントン、日本の次期エース候補・宮崎友花。8月4日、インターハイで女子シングルス連覇を成し遂げた 【写真は共同】

 世界のトップで戦っているバドミントンも、女子シングルスのトップ3の山口茜(再春館製薬所)と大堀彩(トナミ運輸)、奥原希望(太陽ホールディングス)が27~29歳になった中、日本4番手の世界ランキング27位にいるのが宮崎友花(柳井商工高3年)だ。所属するのは高校選抜女子団体4連覇中で、8月1日にはインターハイ4連覇を達成し全国大会8連覇の偉業を成し遂げた強豪校。大阪府出身だが、そこで競技をやるため、中学から山口県柳井市に移った。個人でも高校1年の2022年には世界ジュニアで優勝。昨年からナショナルA代表に入っていて、昨年10月のインドネシアマスターズと、今年3月のオレルアン・マスターズで優勝。5月の世界国別対抗ユーバー杯にも第3シングルスとして出場して銅メダルメンバーになった。

 まだ体は細いが、身長は160センチ台中盤で手足が長いのも武器。メンタルも強くスピードもあり、攻撃的なプレースタイルも魅力のひとつ。6月のインドネシアオープンでは1回戦敗退だったが、世界ランキング1位のアン・セヨン(韓国)を相手に第1ゲームは22対20で競り勝つ勝負強さを見せ、次への期待を膨らませた。

 そんな次を狙う選手たちがパリ五輪での先輩たちの戦いを見て、何を思い、何をしていこうとするかを期待したい。

(企画構成:株式会社スリーライト)

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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