92年ぶりの決勝進出に足りなかった「0.03」 サニブラウンがハイレベルなレースで犯したわずかな失敗とは?
サニブラウンは惜しくも男子100メートルでの決勝進出を逃した 【写真は共同】
もっともこの記録は第3組の4位で、予選突破の条件となる「2位以内」には入れなかった。ワイルドカード2枠目で決勝に進んだ第2組ケネス・ベドナレク(アメリカ)のタイムも、9秒93とサニブラウンを0.03差で上回った。おおよそ「30センチ」の微差で、吉岡隆徳(1932年ロサンゼルスオリンピック)以来となる100メートルの決勝進出はかなわなかった。
80メートル以降の「まとめ」で小さなミス
最後の詰めが決勝進出を逃すポイントだった 【写真は共同】
「いやあ足りないっすね……。マジで、マジで、足りないっす。本当に、もっといけたなと思います。走りの部分でしっかりまとめてこれなかったです」
準決勝3組の第5レーンに入ったサニブラウンは、上々のスタートを切った。すぐ左のキシェーン・トンプソン(ジャマイカ)にはやや離されたが、しっかりついていっていた。しかし「ラスト」で伸びなかった。彼は自らのわずかなミスをこう振り返る。
「80(メートル)くらいまでの動きはよかったんですけど、そこから少しテンポが停滞してしまった。レースプラン通りに最後はいけていなかったです。70メートルくらいからやらなければいけないことは分かっていて、やろうとして体を動かしちゃうんですけど、うまく自分の思った動きができなかった。そこができなかったから、決勝にいけなかっただけなのかなと思います」
ゴール間際の強い前傾姿勢に、このレースにかける思いが出ていた。
「本当に1ミリでも早くゴールに入らなきゃいけないと思いました。準決勝がいちばん切羽詰まるので、ここでしっかり決めなければいけないという走りでした」
記者やファンが映像を見直しても「ここが足りなかった」と指摘できるような崩れはおそらく見つからないだろう。彼も「テンポの停滞」について記者から問われて、言語化に苦労していた。アスリートの繊細な感覚で、それを第三者に伝えることは容易でない。
ただ彼は「そこがうまくいっていたら(9秒)91、2くらいで入れた」と悔いていて、微妙なポイントではあっても、今回の決勝進出を左右するには十分の崩れだった。