ベンドラメ礼生が見た男子バスケのドイツ戦「40分間殴り合いのような試合に泣きそうになった」

青木美帆

前半を1桁の点差で折り返し、ベンドラメにも「勝てるんじゃないか」と思わせたドイツ戦。特に印象に残ったのが、カッティングを繰り返し、ドイツの最重要選手にマッチアップした吉井だ 【Photo by Gregory Shamus/Getty Images】

 パリ五輪の男子バスケ1次リーグ初戦で、世界ランク3位で昨年のワールドカップを制したドイツに77-97で敗れた日本。最終的に20点差をつけられての完敗だったが、それでも東京五輪代表のベンドラメ礼生は、この試合に小さくない可能性を見いだしたという。昨年のワールドカップでの対戦、そして直前の強化試合での対戦から、何が変わったのか。次のフランス戦に向けた展望も含めて、サンロッカーズ渋谷のガードに話を聞いた。

「中から外・外から中」の動きが加わって

河村の鋭いドライブも生かしながら、広くコートを使うバスケはできていた。あとはディフェンス面の対応を改善し、3ポイントを決め切る力が高まれば── 【Photo by Luciano Lima/Getty Images】

 7月20日の強化試合でドイツと対戦(83-104で敗北)した際は、スペーシングが悪く、コートを広く使えていない印象が強かったですが、この試合ではそこがよく改善されていたように思います。しっかりとコーナーまで選手が下りていて、カッティングの質も上がっていましたね。ただカットするだけでなく、何かを起こすためのカッティングになっていました。

 河村(勇輝)選手がドライブするにしろ、八村(塁)選手からインサイドでボールをもらうにしろ、「外だけ・中だけ」ではなく「中から外・外から中」という動きが加わり、全員がトランジションでしっかり走って、コーナーまで広くコートを使うバスケができていました。出だしでシュートを連続で外した時はどうなるかと思いましたし、第2クォーターで離されかけたタイミングもありましたが、そこを耐えて、1桁の点差(44-52)で前半を終えられたのはすごく良かったと思います。

 後半も自分たちのリズムでバスケットができていました。河村選手のドライブを止められる選手はいなかったし、吉井(裕鷹)選手がタイミングよくカッティングすることで相手のディフェンスが収縮し、外の渡邊(雄太)選手や八村選手が空いてきました。

 日本は3ポイントシュートを軸にオフェンスを組み立てているチームですが、3ポイントを打つためには、やはり相手ディフェンスを中に収縮させなければいけません。強化試合では「外・外」とスペーシングを取ってそれができていませんでしたが、今日はたとえシュートに繋がらなくても、ペイントエリアにボールを入れて、ドイツのディフェンスを小さくさせられていた。この試合だけでなく、この先もちゃんと点が取れるイメージが湧きましたね。

 もったいなかったのはディフェンス。河村選手や吉井選手がすごくいいディフェンスをしていたんですが、ファウルになってしまうケースが多かった。最終的に20点差がつきましたが、各クォーター4点ずつくらい余計でしたね。リバウンドではドイツを上回れていましたから、フィジカルで押し切るようなドライブや、ミスマッチでポストプレーを仕掛けられた時の対応を改善していく必要はあるのかなと感じました。

 あとはシュートを決め切る、出だしから打てていた3ポイントを決め切ること。簡単そうに聞こえてそれが一番難しいんですが、日本がやろうとしているのは結局そこ。2点取られても3点取ればいいんです。そして、そのチャンスを作る力を、今の日本は持っていると思います。

 昨年のワールドカップを制したドイツは、今大会でももちろん優勝候補の一角です。その強さの理由は、1つひとつのプレーの堅実さにあると感じました。サイズを生かして強引にシュートを打つこともできるのに、ノーマークを見つけ出してパスを回し、しっかりシュートを打ち切る。スクリーンを使った後も無理せず展開して、確実なプレーを選ぶ。誰かがドライブすれば、それを止められた時のために2人目、3人目も動く。そこの合わせのプレーはすごく上手だなと思いました。

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著者プロフィール

早稲田大学在学中に国内バスケットボールの取材活動を開始。『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立し、現在はBリーグや学生バスケットボールをメインフィールドに活動中。著書に『Bリーグ超解説 リアルバスケ観戦がもっと楽しくなるTIPS50』『青春サプリ。心が元気になる5つの部活ストーリー』シリーズなど

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