ベンドラメ礼生が見た男子バスケのドイツ戦「40分間殴り合いのような試合に泣きそうになった」
ドイツの司令塔シュレーダーを抑えた吉井
敗れはしたが、世界ランク3位の強豪を相手に善戦。ベンドラメもサンロッカーズ渋谷でチームメイトのホーキンソンらが戦う姿を見て「泣きそうになった」という 【写真は共同】
さらに吉井選手はこの試合で、河村選手に代わって、ワールドカップのMVPでドイツの最重要選手であるPGデニス・シュレーダー選手のマッチアップを任されました。シュレーダー選手より上背のある吉井選手がフィジカルに守ることで、彼から始まるプレーを減らせていたし、ピックアンドロールに対してスイッチで守ることで、ズレから生まれる展開も打ち消せていました。一方で河村選手はシューターのアンドレアス・オブスト選手にマッチアップしたため、コートの高い位置にいることが増え、リバウンドを受けてからのトランジションがよりスピードアップするという効果が生まれました。
吉井選手はもともとアウトサイドのプレーヤーではないですし、ドライブでぶち抜かれたシーンも何度かありましたが、八村選手がそこで彼を鼓舞していたのが印象的でしたね。第4クォーターで211センチのモリツ・ワグナー選手にマッチアップした時も、結果はファウルになりましたが相手はすごく嫌がっていたし、八村選手も「行け、行け」「もっとやれよ」くらいの感じで接していた。それを見て、すごく信頼を得ているんだろうなと感じました。
ボクシングにたとえると、3分12ラウンドを殴り合い続けたような試合でした。40分間テンポの速いバスケをやりつつ、ディフェンスではずっと体を張る。そういう姿を見て、泣きそうになりました。渡邊選手と、サンロッカーズ渋谷でチームメイトの(ジョシュ・)ホーキンソン選手はほぼフル出場し、ずっとリング下で相手選手とぶつかり合ってポジション争いをしていました。第4クォーターの重要な場面でリバウンドを取ってシュートを決めた時も、すごく感動しましたね。
2年前のワールドカップで対戦した時は、前半でほぼ勝負が決まってしまいましたが(前半は53-31、最終スコアは81-63)、今回は「勝てるんじゃないか」と思いました。あれだけ力の差を痛感させられた相手との対戦で、勝ちをイメージできるってすごいことですよね。もちろん負けたことは悔しいはずで、この結果に満足している選手は1人もいないと思うけど、今までは「どうやって戦おう」と考えるだけだった世界の強豪が、「どうやって倒そう」というところにまできている。
次戦の相手であるフランス(世界ランク9位)は自国開催で気合が入っていますし、やはり厳しい戦いにはなると思います。ただ、ドイツに比べると機動力や平面の戦いでは劣りますし、きっとどこかに隙はあるんじゃないかと思っています。
フランスには224センチという、とんでもないサイズのビクトル・ウェンバンヤマ選手がいるんですが、他の選手が彼のブロックに頼り切ってボールの行方を見ちゃうんですよ。だから、ウェンバンヤマ選手がボールを弾いた時に、吉井選手や馬場(雄大)選手などいいカッティングができる選手は迷わずダンクに跳んでほしい。「レイアップは打たれないだろう」っていう安心感を逆手に取れるかがポイントになるんじゃないかと思っています。
また、今日はベンチメンバーのプレータイムがあまり伸びませんでしたが、彼らも間違いなく戦える選手たち。比江島(慎)選手のドライブは絶対に止められないですし、富永(啓生)選手の3ポイントも、警戒はされるでしょうが打てさえすれば入る。馬場選手にもがんがんウイングを走り回ってほしい。彼らの力も信じていますし、楽しみしかないですよ。
(企画・編集/YOJI-GEN)