井岡一翔、中谷潤人、田中恒成、那須川天心も登場! 群雄割拠の国内ライト級にも注目!【7月のボクシング注目試合】

船橋真二郎

7月7日、井岡一翔(左)はIBF王者のマルティネスと王座統一戦 【写真:ボクシング・ビート】

5つの世界タイトルマッチが開催

 7月は国内で5つの世界タイトルマッチが開催される。その先陣を切って、七夕の夜に東京・両国国技館に登場するのがWBA世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(志成/35歳、31勝16KO2敗1分)。IBF同級王者のフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン/32歳、16勝9KO無敗)との自身3度目の王座統一戦に臨む。

 攻撃型のマルティネスに対し、井岡は「彼の距離で打ち勝つ」と宣言。前に踏み込んで攻撃を仕掛けてくるIBF王者に踏み込むスペースを与えてしまっては、逆に勢いづかせることになる。前で勢いを止めた上で展開を広げていくのが得策というのが、技巧と戦術に優れたWBA王者の判断なのだろう。アクションが多く、目の離せない攻防が繰り広げられることになりそうだ。

 6月29日(日本時間30日)には米国・フェニックスでWBC同級タイトルマッチが行われる。井岡が長らく標的と定めてきた34歳の王者、ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が全勝を誇る2階級制覇のサウスポー、24歳のジェシー・ロドリゲス(米)を迎える新旧対決も注目の一戦。井岡は勝者との統一戦を望む。キャリアの集大成とも言うべきビッグマッチの実現に向け、いい形で機運を盛り上げたい。試合は「ABEMA」でライブ配信される。

7月20日のビッグイベントに出場する左から那須川天心、田中恒成、加納陸 【写真:船橋真二郎】

 7月20日の両国国技館は3大世界タイトルマッチ。そのひとつとして、今年2月に同会場で王座決定戦を制したWBO世界スーパーフライ級王者、田中恒成(畑中/29歳、20勝11KO1敗)の初防衛戦も行われる。前戦はテーマとして取り組んできたディフェンス面で進境を示し、大差をつける判定勝ちも「KOできなかった悔しさが残った」と満足していない。

 日本人男子3人目となる世界4階級制覇を達成した田中が目標に掲げるのがスーパーフライ級での4団体統一。他の3団体王座の行方が決まった中で戦いに臨む。同級12位で2度目の世界挑戦にかけるジョナタン・ロドリゲス(メキシコ/28歳、25勝17KO2敗1分)を自身も納得のKOで下し、存在感を示したい。

 20日の3大世界戦のトリは世界的評価も高まる万能型サウスポー、WBC世界バンタム級王者の中谷潤人(M.T/26歳、27勝20KO無敗)が務める。

 4団体を日本人王者が独占し、話題を集める世界バンタム級戦線にトップバッターとして登場。恒例のロサンゼルス合宿をへて迎え撃つ指名挑戦者のビンセント・アストロラビオ(比/27歳、19勝14KO4敗)との初防衛戦で「統一戦につながるようなパフォーマンスを」と誓う。

左から弟の中谷龍人マネージャー、中谷潤人、村野健会長 【写真:船橋真二郎】

 アンダーカードでは世界3団体のバンタム級でランク入りする那須川天心(帝拳/25歳、3勝1KO無敗)が、元世界王者のカリド・ヤファイ(英)を初回で下した昨年11月の金星が光るWBA 4位のジョナサン・ロドリゲス(米/25歳、17勝7KO2敗1分)とボクシング転向4戦目にして初の10回戦を行う。

 1戦ごとに進化を示す才能豊かなサウスポーは「全部、獲るつもり」と4人の日本人世界王者に宣戦布告。世界上位ランカーを予告通りにKOし、バンタム級をさらに熱くするか。

 もうひとつの世界戦はWBO世界フライ級王座決定戦。空位の王座を同級2位の加納陸(大成/26歳、17勝8KO3敗1分)、同3位のアンソニー・オラスクアガ(米/25歳、6勝4KO1敗)が争う。昨年4月、代役として1階級下の統一王者・寺地拳四朗(BMB)に急きょ挑んで敗れはしたものの、激闘を演じた中谷潤人の盟友・オラスクアガに下馬評は傾く。

 16歳のときにフィリピンでデビュー。18歳でWBOミニマム級王座をベテランの高山勝成と争って以来、8年ぶりに世界戦のリングに上がるサウスポーの加納は「ガンガン行く」と真っ向勝負を宣言。熱戦に期待したい。イベントは「Amazonプライムビデオ」でライブ配信される。

7月28日、重岡銀次朗は滋賀で3度目の防衛戦 【写真:船橋真二郎】

 7月28日には滋賀・ダイハツアリーナでIBF世界ミニマム級王者の重岡銀次朗(ワタナベ/24歳、11勝9KO無敗1無効試合)が3度目の防衛戦。兄・優大がWBC同級王座から陥落し、単独で臨む初の世界戦となるが、「メインでやりたかったので気合いが入る」と闘志を示す。

 KOを信条とする王者が今回、課題に挙げるのがディフェンス。元同級王者で1位のペドロ・タドゥラン(比/27歳、16勝12KO2敗1分)とのサウスポー対決でよりレベルアップした姿を見せ、「評価の高い相手を倒してこそ」と世界戦4連続KOとともに長期政権を見据える。試合は「ABEMA」でライブ配信される。

 7月は日本人王者を軸に世界戦線が盛り上がりを見せるバンタム級とスーパーフライ級、重岡が君臨するミニマム級の日本タイトルマッチも行われ、将来の世界挑戦を見据える各階級の世界ランカーが登場。また実力者がひしめく群雄割拠の国内ライト級戦線も動き出す。国内の戦いにも注目である。

1/3ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント