井岡一翔、中谷潤人、田中恒成、那須川天心も登場! 群雄割拠の国内ライト級にも注目!【7月のボクシング注目試合】

船橋真二郎

国内の有力選手がしのぎを削るバンタム級

昨年8月、堤聖也と増田陸(右)は日本タイトルマッチで対戦 【写真:ボクシング・ビート】

 WBCに中谷、WBAに井上拓真(大橋)、IBFに西田凌佑(六島)、WBOに武居由樹(大橋)と4人の日本人王者が並び立つバンタム級。彼らを追走する日本人選手も那須川、元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(志成)、世界挑戦2度の石田匠(井岡)、前日本王者の堤聖也(角海老宝石)、東洋太平洋王者の栗原慶太(一力)など、粒ぞろいの顔ぶれがそろう。

 ナチュラルにスイッチを駆使する堤(28歳、10勝7KO無敗2分)は7月7日、両国国技館のセミでウィーラワット・ヌーレ(タイ/22歳、4勝2KO1敗)と世界前哨戦、“スラッガー”の異名を持つ強打者の栗原(31歳、18勝16KO8敗1分)は7月22日、後楽園ホールのメインでレナン・ポルテス(比/32歳、13勝6KO16敗)と調整試合が決まっている。

 7月18日の後楽園ホールでは日本バンタム級タイトルマッチが行われる。堤が返上した王座を受け継いだ富施郁哉(ワタナベ/26歳、14勝3KO3敗1分)が初防衛戦で増田陸(帝拳/26歳、4勝4KO1敗)と相まみえる。

 サウスポー対決となる両者は昨年5月、「バンタム級モンスタートーナメント」で激突。増田が富施を2度倒して7回TKOで勝利しており、挑戦者優位の予想が大勢を占める。勝ち抜いた増田は同トーナメント準決勝で堤の日本王座に挑戦。判定で敗れたものの、最後まで食らいつく激闘を演じ、評価を高めた。

 増田は今年2月、両国国技館で当時WBO世界バンタム級6位、世界挑戦経験もあるジョナス・スルタン(比)に左ボディストレートでテンカウントを聞かせ、圧巻の初回KOで再起。一躍、世界ランク入りを果たした。上体を立てて構えるアップライトスタイルから放つ左ストレートは威力抜群。堤にプロ初黒星を喫した昨年8月から「1年で世界挑戦できる実力をつけると誓いを立てた」と頭をそり上げ、日々精進してきた。

ヨネクラジム時代から指導を仰ぐ町田主計トレーナー(左)と富施郁哉 【写真:船橋真二郎】

「(増田の存在は)常に頭の片隅にあった」という富施。今年4月、杉本太一(勝輝)との王座決定戦に5回TKO勝ち。昨年12月、大阪で最強挑戦者決定戦に勝利し、挑戦権をつかんだ上での堂々の戴冠だが、「(増田に)負けてる僕が日本チャンピオンで、もう1回やらないと(ファンに)納得してもらえない。倒された相手で怖さはあるけど、覚悟を決めて」。真価を証明する再戦に挑む。

 ともに2017年に閉鎖されたヨネクラジムから移籍した町田主計トレーナーと全日本新人王、24歳以下の日本ユース王者とステップアップしてきた。井上尚弥(大橋)の対戦候補として名前が上がるサム・グッドマン(豪)と2年前に対戦。トップ戦線に浮上する直前の当時10戦全勝のホープに判定負けも、敵地でダウンを奪って一矢を報いた経験もある。

 増田に敗れてからの1年で「自分が強くなった自信がある」。ひとつは決定打となるパンチ。スパーリングでも相手を効かせる、倒す場面が増えたという。実際、判定で勝った挑戦者決定戦では当時の日本1位からダウンを奪い、次の王座決定戦では倒した末にしとめきった。「向こうもさらに強くなってるし、どっちが伸びたか。自分の出せる力を全部出したい」と決意を込める。

 国内に有力選手がひしめくバンタム級の現状を「逆にチャンス。これを超えたら、自分の名前も上がるし、世界にも行けるということなので、ポジティブに捉えて練習に取り組んでいる」と歓迎する。宿敵にリベンジを果たし、成り上がれるか。

日本人世界王者が君臨する階級で世界に近づけるか

日本ミニマム級王者の高田勇仁(左)と師匠のライオン古山こと古山哲夫会長 【写真:船橋真二郎】

 7月18日、日本バンタム級タイトルマッチと「アジア最強ライト級トーナメント」の準決勝が行われる後楽園ホールのメインを飾るのは日本スーパーフライ級タイトルマッチ。これが3度目の防衛戦となる王者の高山涼深(ワタナベ/27歳、8勝7KO無敗)が、キャリア15年で初めてのタイトルマッチに臨む青山功(セレス/35歳、14勝4KO12敗1分)を迎える。

 高山は戦績が示す通りのサウスポーの強打者だが、ここ数戦は力ずくで相手をねじ伏せてきた印象が強い。中学生の頃から指導を仰ぐ小口忠寛トレーナーからは試合のたびに調整段階の甘さを指摘される。高山優位は動かしがたいが、元世界王者の岩佐亮佑と同い年でジム最古参になるベテランのタイトルにかける思いも侮れない。

 世界4団体でベスト10入りする高山が世界に近づくためには、あらゆる面でスキなく試合を終わらせることが絶対条件になる。青山は高い集中力と粘り強さで王者の一瞬のスキを突きたい。イベントは「Lemino」でライブ配信される。

 7月12日の後楽園ホールで開催されるのは日本ミニマム級タイトルマッチ。王者の高田勇仁(ライオンズ/26歳、14勝6KO8敗3分)が金谷勇利(金子/27歳、5勝1KO2敗)の挑戦を受ける。

 高田はアマチュア経験のない、最近では珍しいプロ叩き上げの王者だ。持ち味は歯切れのいい攻撃だが、ここまで3度の防衛戦はすべて判定勝ち。特にジム初の主催興行のメインを任された前戦では「倒したいという気持ちが強すぎた」と力みが目立ち、大勢に影響はなかったものの、最終10回にはダウンを喫した。

 中央大出身の金谷は2月、小林豪己(真正)とWBOアジアパシフィック王座を争って3回TKOで敗れてからダイレクトで2度目のチャンス。前回の経験を生かせるか。WBA3位を筆頭に3団体で世界ランク入りする高田は、同じく世界3団体でランクされるライバル王者の小林との比較の目にもさらされることになるが、気負いは禁物。自然体で本来の力を発揮したい。試合は「BOXING RAISE」で後日配信される。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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