F1ドライバー角田裕毅の成長と素顔 父・信彰氏に独占インタビュー
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確かにその通り。童顔だった角田選手はF1で3シーズン過ごしている間に、すっかり精悍な顔になった。F1ドライバーは一般人に比べて急激に成熟し、顔つきも変わっていくとよく言われるが、角田選手も例外ではないようだ。
「裕毅の場合は、F1をナメてたようなところがありました。トレーニングをろくにしてなかったり。ああいう性格は、最初に失敗したほうがいいんです。でも冬のテストでピエール(ガスリー。最初のチームメイト)よりいいデータで走れているなんて言われたり、開幕戦でいきなりポイントを獲ったりして、もうイケイケになっちゃった」
「これがたとえば昨年のオスカー・ピアストリみたいに、最初は全然ダメで、マクラーレンも期待が外れたという感じだったら、もうちょっと違ったかもしれません」
振り返ると、角田選手は初年度の車がアルファタウリのベストで、そこからどんどんマシン戦闘力が落ちていった。反比例するように角田選手の実力は上がっていくのに結果が出ない。そんなつらい3年間を過ごしてきた。
「時間は戻らないし、本人もそれは分かっている。プラスに考えればいいと思います」
「そうですね。レースでの走りとかではなくて、実生活というかプライベートで、ずいぶん変化を感じます。今まではどちらかというと、(レースには)来るなっていう雰囲気を出していたんですね。それが1年目の中盤ぐらいからかな、来てもいいよ、来るなら(レース週末の)金曜日ぐらいに一緒にご飯食べようよって言ってくるようになった」
「それで一昨年のイタリアGPだったかな、夫婦で出かけて、金曜日の夕ご飯を一緒に食べました。でもその時は食事して終わっちゃった。翌日からサーキットのパドックに僕らもいたんですけど、裕毅はセッションが始まる直前まで自分の部屋にいて、ガレージにすーっと出てくるだけで、こちらは頑張れよって声をかけるぐらいでしたね」
ところが2年目の後半くらいから、親子の関係が少しずつ変わってきたという。
「向こうから話しかけてくるようになりました。日曜日、レースが終わったら一緒にご飯食べに行こうよとか。昨年なんかは、何時に空港に着くんだとか、逆に聞いてくるようになった」
「昨年の5月は当初、イモラ、モナコ、バルセロナの3連戦だったでしょう。じゃあ続けてレースを観戦しようと、夫婦で出かけたんです。ところがミラノ空港に着いたところで、洪水でイモラが中止になったのを知ったんですね。そしたら裕毅がミラノ市内のホテルを予約してくれて、翌日からはファエンツァのアパートに泊めてもらいました」
1年目の素っ気なさを目の当たりにしていた信彰さんにすれば、息子の変化に面食らったという。
「しかも自宅でおもしろいよと紹介してくれたビデオも、アスリートの身体のケアについてのドキュメンタリーでした。もちろんお酒も飲まないし、炭酸水やジュースも控えている。本当は、お酒はすごく強いんですよ。それが全然飲まなくなった。今は本当にセルフコントロールしてますね」
「昨年あたりから、グランプリが始まる木曜日にまず電話がかかってきて、日曜日のレース後にもかかってくる。そしてまた次のグランプリの木曜日にという具合です。ほかにも決勝レースの朝、起きた時とかね。ホテルの部屋で着替えながら、これから出かけるよとか、報告がてら話します。シーズン最後のほうは、レース週末の金、土、日と、ほとんど毎日、電話がきたこともありました。けっこう変わったなと、私も感じました」
特に用事があるわけではない。かといって1、2分で終わる通話ではなく、わりと長く話すという。
「基本的には、妻宛にビデオ通話でかかってくる。ママが心配してるから電話してねって僕が伝えたのが始まりでした。向こうは着替えながら、こちらは夫婦で最近のどうということのない話をします。『パパはS2000のブレーキのエア抜きで、莉子(角田選手の妹)にブレーキ踏むのを手伝ってもらったんだよ』とか。わざとそういう本当にどうでもいい話をするんです(笑)」
実は信彰さんがあえてこの話題を振ったのは、自分ほど機械いじりが好きでない息子に、こんなやり方もあるんだと教える親心もあったそうだ。ところが角田選手からは「もちろん知ってるよ。カートの頃やってたし」と言われてしまったという。いずれにしても、なんでもない話が、レースを控えた角田選手にはかえって嬉しいのかもしれない。
「かもしれないですね。かかってくるのは、100%向こうからです。こっちから用事があったら、LINEメッセージを送る。何かほしい荷物ある?とか。ファエンツァの自宅からも、時々かけてきますよ。イギリスからイタリアに戻るときに、飛行機の中にバッグを置いてきちゃったとかね。基本は世間話です。ただし、レース後の電話は少ないかな。ガッカリしてることが多いから(苦笑)」