F1 日本GP特集(2024年)

ハミルトンが25年に電撃移籍 スクーデリア・フェラーリが皆を魅きつけるわけ

柴田久仁夫(auto sport)

ハミルトンはフェラーリ加入に関して「すべてのドライバーが”あの赤色に包まれたコクピットに座ったら、どんな気分になるのだろう”と夢みるはずだ」と語っている。 【MercedesAMG】

 F1や車に詳しくない方でも、フェラーリの名前は知っているはず。F1においては2008年を最後にタイトルからは遠ざかっているにもかかわらず、7度のチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンも25年から加入することが発表された。他のスポーツに目を向けても、これほどの吸引力を維持し続けるチームは見当たらない。唯一無二の存在、スクーデリア・フェラーリに迫る。

※リンク先は外部サイトの場合があります

フェラーリ抜きでは成り立たない

『スクーデリア・フェラーリ』は、なぜ特別なのか。F1界の人々にとって、それはあまりに自明な問いかもしれない。

 なにしろF1世界選手権が1950年に創設されて以来、フェラーリF1は今も活動を続ける唯一のチームである。当時から車体とエンジンを一貫して内製するフルコンストラクターであり、16回のタイトル獲得数、243勝の勝利数は、ダントツ首位だ(2位はそれぞれ、ウイリアムズ9回、マクラーレン183勝)。

 一方でそんな数字上での強さ以上に、真紅の跳ね馬には他のF1チームからは感じられない独特のオーラがある。それはアスカリやファンジオ、サーティース、ラウダ、シューマッハーなど、錚々たるチャンピオンたちが作り上げた伝統なのか。あるいはコリンズ、フォン・トリップス、ジル・ビルヌーブら、事故死したフェラーリドライバーたちの血塗られた記憶なのか。

 さらにいえば世界中の自動車メーカーの中で、『F1に参戦するために市販車を作っている』のはフェラーリだけである(かつてのロータスも、それに近い存在だったが)。そしてF1はフェラーリの長年の功績に報いるために、通常の分配金以外に数10億円単位の『ヒストリックボーナス』を今も支給していると言われる。

 まさに『フェラーリあってのF1』であり、『F1あってのフェラーリ』ということだ。

3月末のオーストラリアGPでは、サインツとルクレールがワン・ツーフィニッシュを飾った。これは2022年の開幕戦以来の快挙。ふたりともタイトル獲得経験はないが、レッドブル一強時代に割って入れるポテンシャルを秘めている。 【Ferrari】

「フェラーリにこそタイヤ供給を!」

『スクーデリア・フェラーリ』を最もよく知る日本人といえば、浜島裕英氏をおいて他にない。ブリヂストンがフェラーリのパートナーとなった1999年以降、開発本部長として陣頭指揮をとり、フェラーリ8連覇、ミハエル・シューマッハーの6年連続タイトル獲得に大きく貢献した。

 さらに2012年には当時のルカ・ディ・モンテゼモロ会長から直々に招聘され、フェラーリのタイヤエンジニアを務めた。そんな浜島氏が、『フェラーリの特別さ』を痛感させられたのは、ブリヂストンのF1参戦2年目、1998年のことだったという。

「ドイツGPの舞台、ホッケンハイムに行った時のことです。この年から僕らはマクラーレンにタイヤを供給し、ミカ・ハッキネンはフェラーリのミハエル・シューマッハーと激しい優勝争いを繰り広げていました」

「そしたらサーキットで、フェラーリのTシャツを着たドイツ人ファンたちに囲まれてしまったんです。マクラーレンも、メルセデスがパートナーですからね。少しは応援してくれるのかと思ったら、全然違いました」

 この時は冷たい視線を投げられただけで済んだが、フェラーリの地元モンツァでは激しいブーイングを浴びせられたという。

「もちろんF1に来る前から、フェラーリの存在は知ってました。でもここまでフェラーリを熱く応援する人たちがいるのは想定外でした。ああ、フェラーリはF1の中心なんだ。このチームにこそ、タイヤを供給しなければと思いましたね」

 こうして2001年以降のブリヂストンは、実質的にフェラーリのワークスタイヤとなる。ミシュランと激しいタイヤ戦争を繰り広げつつ、浜島氏の率いるブリヂストンはフェラーリとともに黄金時代を築いたのだった。

1/2ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント