「角田もリカルドも遅すぎる」批判に、角田裕毅が叩きつけた答え 昇格や移籍の可能性は?
予選8番手の凄み
角田裕毅は、オーストラリアGPで7位入賞(8位フィニッシュも繰り上げ)と好調な走りを見せている 【REDBULL CONTENT POOL】
選手権首位のレッドブルが開幕3戦で97ポイント、2位フェラーリも93ポイントを荒稼ぎする一方で、ウィリアムズ以下の下位3チームはいまだに1ポイントも取れずにいる。
中団勢を見ても、5位アストンマーティンは角田裕毅の所属する6位RBに19ポイントの大差をつけている。全10チームの実力差が、5位と6位を境に真っ二つに分かれている構図といえる。つまり6位RB以下の10人のドライバーにとっては、予選でトップ10に入ることも、決勝レースでのポイント獲得も相当に難しいミッションなのだ。
そんな状況で角田は、予選では2戦連続トップ10内に入り、第3戦オーストラリアGPは7位入賞と大健闘した。中でも圧巻だったのが、オーストラリアGP予選で叩き出した8番手タイムだった。
実は角田のセクター別タイムを見ると、第1区間9番手、第2区間11番手、第3区間10番手と、いずれも8番手に届いていない。ではなぜ、8番グリッドを獲得できたのか。Q3最後のアタックで、全ての区間を自己ベストタイムでまとめたからだった。
対照的に9番手のランス・ストロール、10番手に終わったフェルナンド・アロンソは、ともにセクター1で自己ベストを更新できなかった。もし二人が角田のように区間タイムをきれいに揃えていたら、アロンソはジョージ・ラッセルを抜いて7番手に、ストロールは同じ9番手ながら角田は10番手に落ちていたはずだった。ちなみに7番手だったラッセルも最後のアタックをミスし、角田に1000分の64秒差まで迫られている。
言い換えればこの4人の中では角田だけがノーミスで走り、RBのマシン性能を出し切ったということだ。
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リカルドは、なぜ角田にかなわない?
角田とは対照的に、深刻な低迷から脱出できずにいるダニエル・リカルド(右) 【REDBULL CONTENT POOL】
しかしいざシーズンが始まると、トップ5にかなわないどころか、直近のライバルであるウィリアムズやハースにも純粋なペースで劣った。開幕2戦終了時の評価では、キック・ザウバーやアルピーヌより少し上、10チーム中せいぜい8番目というところだった。普通に考えれば「予選は15番手あたり、レースでのポイント獲得はとても無理」なところだ。
それを角田は予選では常にトップ10前後の速さを見せ、RBのポイントも全て角田が稼ぎ出した。一方、チームメイトのダニエル・リカルドは、深刻な低迷から脱出できずにいる。ここまで3戦で予選は14、14、18番手、決勝レースは13、16、12位。開幕3戦で0ポイント、選手権17位という成績は、12年前のフル参戦1年目より劣るワースト記録だ。
もちろん上で述べたRBの戦闘力からすれば、実力通りの結果ともいえる。しかし同じマシンを駆る角田と比べると、あまりにその差は大きい。レッドブル時代はマックス・フェルスタッペンやセバスチアン・ベッテルと時に互角以上の戦いを繰り広げ、ほんの少し前までレッドブルのナンバー2最有力候補と言われていたリカルドは、いったいどこに行ってしまったのか。
かなり深刻に思えるのは、誰よりもリカルド自身が現状に当惑しているように見えることだ。「ユウキのような速さで、コーナーを回れない」「何が悪いのか見えつつあるが、どう改善したらいいのかわからない」。ユウキをランド・ノリスに替えれば、苦しんだ末に放出された2年前のマクラーレン時代とそっくりのコメントだ。
確かに後輪の挙動がやや不安定なマシンの性格は、当時のマクラーレンと今のRBにある程度共通している。しかしリカルドほどのドライバーが、ここまで対応に苦しむものなのか。マクラーレン時代もリカルドの低迷に、本人を含め誰もはっきりした答えを出せなかった。今はほぼ、それと同じ状況だ。