プロ野球観戦のお供におススメの選手名鑑は? ポケット版&ワイド版の全16誌を徹底比較
開幕前の2月に各社から一斉に発売されたプロ野球選手名鑑。大きくワイド版とポケット版の2タイプに分かれるが、ワイド版のサイズは微妙に異なる 【YOJI-GEN】
※リンク先は外部サイトの場合があります
ワイド版の中で群を抜くデータ充実度は
最も大きいのがベースボール・マガジン社の『2024プロ野球全選手カラー写真名鑑&パーフェクトDATA BOOK』(リストA=以下同の⑧)で、今回取り上げた9誌の中で唯一のA4判(210×297ミリ)だ。これに続くのが、日刊スポーツPRESSの『プロ野球選手カラー名鑑2024』(④)、日本スポーツ企画出版社の『2024プロ野球オール写真選手名鑑』(⑤)、そして同じくベースボール・マガジン社の『2024年度プロ野球カラー選手名鑑号』(⑦)で、サイズはいずれもB5判(182×257ミリ)。それ以外の5誌はすべてひと回り小さいA5判(148×210ミリ)となる。
発売日は9誌中6誌が2月14日と足並みをそろえるが、例年1週間ほど早く⑦が『週刊ベースボール』の本誌として発売される(今年は2月10日)。「どこよりも早い!」と銘打たれた名鑑は、新加入選手の写真が新シーズンのものではなく、またデータ量も十分とは言えないが、値段は他が1000円前後なのに対して週刊誌価格の580円とリーズナブル。1日も早く新シーズンの名鑑を手に入れたい読者にはありがたい1冊だろう。
独自路線を行くのが竹書房の『野球太郎No.050 プロ野球選手名鑑+ドラフト候補名鑑2024』(③)で、こちらは他社よりも2週間遅い2月28日の発売。通常号を選手名鑑として発売しているが、全体の40ページ近くを今年のドラフト展望に割き、高校、大学、社会人などドラフト候補選手の名鑑を充実させている。プロ野球選手名鑑もデータ量は少ないが、選手を「松・竹・梅」で評価したり、寸評欄も「WHAT・GOOD・ADVICE」の3項目で書き分けるなど他社とは一線を画す。値段は唯一の2000円台だが、読みごたえは十分だ。
一方、データ充実度で群を抜くのが、⑤と⑧だ。MLB専門誌『スラッガー』で培ったノウハウを日本のプロ野球選手名鑑に反映させ、メジャーで普及していたセイバーメトリクス系のデータをいち早く取り入れた日本スポーツ企画出版社の⑤は、それまで打率や防御率など簡単なデータしか載っていなかった名鑑のマーケットに一石を投じた1冊と言える。巻頭で「OPS」「UZR」「WAR」といった指標の解説をまとめ、さらに主力級24選手に付けた詳細データには「データ寸評」を添えてフォローするなど、セイバーメトリクス初心者にも分かりやすいモノづくりが特徴だ。
これに追随したのがベースボール・マガジン社の⑧で、詳細データ付きの選手数は⑤を上回る32人。セイバーメトリクス系の指標は限られるとはいえ、投手の「対戦打者別成績」、打者の「チーム別打撃成績」などデータの拡充に余念がない。判型の大きさを生かした見やすさもプラスポイントで、また球団公式SNSに飛べるQRコードを載せたり、選手の誕生日が一覧で見られる「バースデイチェック」のページを設けるなど、細かな配慮も老舗らしい。ただ、データが増えた分、選手寸評は減少傾向か。
同じく老舗の日刊スポーツPRESSが発行する④も、過去の成績表が3シーズン分と控え目ながら、投手には「アウトの内訳」、野手には「安打の傾向」というデータを付記している。ただそれ以上に目を引くのが、前年のシーズンハイライトをはじめとしたグラビアや、球場グルメ、マスコット情報などの充実ぶり。表紙にも謳っているように、読めば「球場に行きたくなる」名鑑だろう。ちなみに誌面にあるQRコードからは、日刊スポーツコムの名鑑ページにアクセスすることも可能だ。
リストA:ワイド版9誌の特徴 【YOJI-GEN】
解説者名鑑や出身校別ランキングなどで差別化
ワイド版で最も多いのがA5判サイズ。程よくデータを盛り込んだうえで、見やすさも追求するが、それだけに各社とも独自色を打ち出して差別化を図っている 【YOJI-GEN】
デザインで分かりやすく他誌と差別化しているのがミライカナイの⑨で、各選手横並びではなく注目選手のみ扱いを大きくしている。過去の成績は昨シーズンの1年分だけだが、選手寸評の分量は多め。10ページを割いた顔写真付きの解説者名鑑や、順位、タイトル争いを予想する巻末の「2024プロ野球 予想メモ」なども同誌ならではのこだわりで、総ページ数はワイド版では最大の320ページに及ぶ。
歴史のある宝島社の②はワイド版で唯一、表紙の写真が3人のみ(他は基本的に12人)。「12球団イニシャルロゴシール」の付録も唯一で、特別感がある。チーム紹介文やコーチの寸評などはないが、余計なものは削ぎ落し、見やすさとコンパクトさを重視した1冊と言えそうだ。アマチュア時代の戦績に、甲子園出場歴だけではなく、都道府県大会の成績も掲載されているのが嬉しい。
コスミック出版の①は、比較対象の上記2誌にはない球団ごとのシーズン展望記事が掲載されているが、「文字が大きく読みやすい!」との謳い文句通り、こちらも見やすさが売り。巻頭の頓宮裕真(オリックス)インタビュー、カラー写真付きのマスコットキャラクター&スタジアムガイドなども差別化ポイントだ。
同じA5サイズながら、発売日が5日遅い(2月19日)双葉社の『プロ野球2024 最強データ選手名鑑』(⑥)も、後発ゆえになおさら独自色を打ち出そうと様々なアイデアを盛り込んでいる。伊原春樹さん(元西武コーチなど)の球場にまつわるコラム、プロ野球系YouTubeチャンネル33選など硬軟織り交ぜた企画に加え、現役選手・監督・コーチの「出身校別ランキング」も、球界の“横のつながり”が見えて興味深い。