投手陣充実の中日がセ・リーグをかき回す!? 侍Jコーチ・吉見一起がセ・パ両リーグの順位を予想 

大利実

立浪和義監督(右)が目指してきた野球が形になってきていると話す吉見氏。2年連続最下位の中日は何位まで順位を上げられるか? 【写真は共同】

 昨年から侍ジャパン投手コーチとして井端監督を支える吉見一起がプロ野球開幕直前の3月26日に、2024年セ・パ両リーグの順位を予想。侍投手コーチとして今季のキャンプで精力的に各球団を視察し、オープン戦で各球団の戦いぶりをチェックしてきた吉見氏が注目するチームとは? 独自の目線による各球団の投手陣の解説を交えながら、今年のプロ野球をズバリ占ってもらった。
<吉見一起氏セ・リーグの順位予想>
1位:阪神タイガース
2位:中日ドラゴンズ
3位:読売ジャイアンツ
4位:横浜DeNAベイスターズ
5位:広島東洋カープ
6位:東京ヤクルトスワローズ

投手層の厚さが強みの阪神

質と量で豊富な阪神投手陣の中で吉見氏は才木浩人に注目。今年は二けた勝利に期待 【写真は共同】

――今シーズンの順位予想を、吉見さんならではの視点でお願いします。まずは、古巣・中日の戦いぶりも気になるセ・リーグから。

 阪神、中日、巨人、DeNA、広島、ヤクルトの順で予想します。

――「阪神の連覇」と予想。

 キャンプを見てきましたが、投打のバランスがよく、戦力も豊富。特に投手陣は、一軍のベンチ入り争いが熾烈で層が厚いのが強みです。野球は点取りゲームではありますが、一番計算できるのは投手力。伊藤将司投手、村上頌樹投手らはケガさえなければ、昨年同様の成績を残せると思います。そこに加えて、昨年不振だった青柳晃洋投手の状態が戻ってきていて、さらに厚みを増すのは間違いありません。

――豊富な投手陣の中で特に期待の投手はいますか?

 昨季、キャリアハイの8勝を挙げた才木浩人投手です。コントロールが安定していて、球のキレがいい。キャンプで見て、昨季以上に楽しみな可能性を感じました。

――オープン戦でチームの状態がなかなか上がってこないことを心配するファンもいます。

 選手たちはまったく気にしていないと思います。実績のある選手が多いので、シーズンが開幕すればスイッチも入ってくるでしょう。

――2位は古巣の中日。Bクラスに予想する評論家も多い中での2位予想ですね。

 投手力はセ・リーグでもトップクラスだと見ています。特に中継ぎの安定感はナンバーワン。一軍の枠を巡る争いが熾烈になるほどです。2位に推したのは、オープン戦から意識の持ち方が変わってきていると感じたことです。「野球偏差値」と言えばわかりやすいでしょうか。考えながらプレーできる若手が徐々に増えてきている。立浪和義監督が目指してきた野球が、3年目にして形になりつつあります。

――得点力を心配する声もあります。

 巨人から補強した中田翔選手がどこまで「核」となれるか。中心となるバッターが決まれば、打線は組みやすい。ただ、打つべく人が打てなければ、Bクラスの可能性もあると見ています。あとは、ビジターでの勝率が悪いのも少し気になるところです。

――昨季はホームで30勝39敗3分、ロードでは26勝43敗2分でした。

 ロードでの勝敗が、Aクラス入りのカギを握るかもしれません。

――3位は巨人。

 正直に言えば、阪神の「1強」で2位以降は団子になると予想しています。巨人は戸郷翔征投手がエースの立場となり、それに次ぐ存在として昨季初の10勝を挙げた山﨑伊織投手が出てきたのが非常に大きい。ここに復活を期す菅野智之投手や、新人の西舘勇陽投手らが加わってくれば、大きな連敗は防げるのではないでしょうか。ただ、中継ぎや抑えを含めた投手層と考えると、阪神に劣ることは否めません。たしか、昨季は阪神との直接対決の成績が悪かったですよね。

――6勝18敗1分です。

 そこまで負け越すと、苦手意識も芽生えていると思います。今季、この数字がどう変わっていくか。

DeNAは今永、バウアーのイニング数をどう埋めるか

小園健太ら若手次第ではDeNAのAクラス入りもあり得ると吉見氏は見る 【写真は共同】

――4位はDeNA。

 度会隆輝選手が加わった打線が強力であることは間違いありません。林琢真選手、森敬斗選手ら楽しみな若手も多くいます。心配なのが、今永昇太投手、バウアー投手が抜けた先発陣です。昨季はこの2人でおよそ280イニングを投げています。このイニングを誰がどのように埋めていくか。1年間戦うことを考えたときに、どうしても不安が残ります。小園健太投手はじめ、Aクラス入りには若手の台頭が必須になるでしょう。

――昨季2位の広島が5位に。

 大瀬良大地投手、九里亜蓮投手、森下暢仁投手、床田寛樹投手と、二けた勝利の実績を持つ先発が揃っています。投手力は高いですが、西川龍馬選手がFAでオリックスに移籍したのが、かなりの痛手です。昨季ブレイクの兆しを見せた末包昇大選手や、侍ジャパンの強化試合に選ばれた田村俊介選手ら、若手がどこまで台頭するか。田村選手のバッティングは、昨年から井端弘和監督が惚れ込んでいました。5位に予想したのは、オープン戦を見て、新外国人のシャイナー選手とレイノルズ選手がうまく機能できるか、不安に感じた点です。この2人の活躍が、Aクラス入りには必須となります。

――最後がスワローズ。

 村上宗隆選手、山田哲人選手が引っ張る打線が武器で、塩見泰隆選手がフルで働くことができれば、より強力になってきます。問題は投手陣です。6球団の中でもっとも不安。オープン戦の段階でケガ人が多く、「先発の軸」が誰になるかまだ見えていません。小川泰弘投手や奥川恭伸投手がケガで離脱している中では、高橋奎二投手の奮闘に期待がかかります。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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