ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

打率.500、2本塁打、OPS1.486と絶好調の大谷に、最終戦で不安が残った山本 ドジャースキャンプいよいよ打ち上げ

丹羽政善

3月13日のマリナーズ戦の前、サインの求めに応じる大谷翔平 【写真は共同】

 3月13日、ドジャースはアリゾナ州グレンデールで2月9日から行っていたキャンプを打ち上げた。

 最終戦で山本由伸が登板し、4回2/3を投げて、8安打、4失点とやや不安の残る内容だったが、7三振を奪った。「2番・指名打者」で出場した大谷翔平は初回、あわやホームランかという打球を右翼に放ったが、右翼から左翼に吹いていた強い風に押し戻された。その後は、2打席連続で見逃し三振に終わっている。

 キャンプでの通算成績は、山本が3試合に登板し、9回2/3を投げて15安打、9失点、4四球、14奪三振。防御率は8.38だった。大谷は8試合に出場し、22打数11安打、2本塁打、9打点、5得点で、打率は5割ちょうどだった。

※リンク先は外部サイトの場合があります

時差ボケを防ぐ行動サイクルとは?

 さて、13日の試合後、パドレスは早速開幕シリーズが行われる韓国に向けて旅立った。一方でドジャースは14日朝、アリゾナを出発する予定である。

 ドジャースは2014年にオーストラリアで開幕を行った経験を元に、今回は睡眠スペシャリストとも相談し、一番時差ボケになりにくい出発時間を選択したという。パドレスが到着するのはおそらく14日深夜。ドジャースは15日午後。12時間の差がある。

 アメリカ時間で夜に出発すると、飛行機の中で寝てしまい、到着してから寝られなくなる。13日夜は普通に睡眠をとり、機内ではできるだけ寝ないようにして、韓国に到着後、夕食をとって少しゆっくりしてから眠るーーというサイクルを想定しているそう。19年にマリナーズが日本で開幕戦を行ったときも、同様の移動パターンだった。

 もっとも、あのときのマリナーズの選手もそうだったが、米国に戻ってきてからのほうが時差ボケになりやすい。試合後に出発する場合、飛行機のなかで寝てしまう。ロサンゼルスに着くのは夕方。その日の夜にうまく寝られなければ、時差ボケになる。

 ちなみに21日夕方に帰国後、24日にはもうエンゼルスとのオープン戦が組まれている。3試合あるので、選手らはそこで体内時計を修正することになる。

バウアーが見せた圧巻の投球

10日のドジャースのマイナー戦に先発登板した、アジアンブリーズのバウアー 【写真は共同】

 ところで、総じて今回の取材は中身が濃かったが、特に10日は様々なことがあった。

 その日、大谷は「2番・指名打者」でスタメン出場していたが、マイナーリーグのフィールドでは、横浜DeNAベイスターズからFA(フリーエージェント)となっているトレバー・バウアーが、プロ契約の獲得を目的とする選手らで構成される「アジアンブリーズ」の一員として、ドジャースのマイナーリーガーを相手に先発した。初回こそ守備のミスもあって走者を背負ったが、圧巻の投球を見せた。

 初回を終えたとき、バウアーから「どのくらいの球速が出ていた?」と聞かれた。その時点では分からなかったので、2回からネット裏に陣取るドジャースのスタッフの裏に回り、トラックマン(球速、回転数、回転方向などを計測する測定器)のデータを全球確認した。すると、真っ直ぐはすべて90マイル台後半。最速が99マイルだった。

 2回を終えて、関係者に球速を書いたメモをバウアーに渡してもらおうとしていると、また本人がベンチから出てきた。「どうだった?」。そこで球速を伝えると、「本当か?」と驚いていた。

「1回の時点でわかっていたら、100マイルを狙ったのに」

 三回で降板すると大きな拍手が湧き上がり、本球場と変わらぬ熱気に包まれた。その後バウアーは、集まったファン全員にサインをし、写真撮影に応じた。

 現時点で、今後は不透明。「出場停止処分も明けたし、訴訟もすべて和解して、クリアになっている。最低年俸でもプレーする準備が出来ている。普通に考えたら、メジャーリーグの球団と契約出来ると思うけど、どうなんだろう。将来は誰にもわからない」とバウアー。声がかかるまで彼は、1人で練習を続けるようだ。

 同じ日、アリゾナ州フェニックスで行われていた「セイバーアナリティクス・カンファレンス」では、今季から新たに「BASEBALL SAVANT」で検索できるデータが紹介された。

 そのうちのひとつがスイングスピード。これはコンタクトの瞬間の平均値で、ハーフスイングなどスピードの遅い下位10%を除いて計算。昨年の場合、以下が平均値のランキングである。

1. ジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)81.0マイル
2. ジョー・アデル(エンゼルス)79.2マイル
3. ジュニオール・カミネロ(レイズ)78.2マイル
4. 大谷翔平(エンゼルス)77.4マイル
4. マット・ウォルナー(ツインズ)77.4マイル
4. カイル・シュワバー(フィリーズ)77.4マイル
4. ロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス) 77.4マイル

 カミネロは昨年、36回しか打席に立っていないので、サンプルが少ない。アデルもケガなどで62打席。この2人は省いてもいいので、大谷、アクーニャJr.らが、実質2位タイといえそうだ。

 スイングスピードが速ければ、結果が出るわけではない。しかし、納得のメンバーが上位にランクイン。これで、いかに効率的に打球に力を伝えているかを示す「スマッシュファクター」という指標も計算できるようになるので、今季はそんなデータも注目されそうだ。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント