ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

評価高まりドジャース開幕シリーズでの登板が濃厚 問われる山本由伸の“読解力”

丹羽政善

2月28日のレンジャーズ戦に先発で初登板した山本由伸。2回を1安打無失点、3三振と好投した 【写真は共同】

大谷フィーバーに沸くドジャース

 3月20日に韓国で開幕戦を迎えるドジャースは一足早く、2月22日にオープン戦の開幕を迎えた。23日はホーム初開催。球場のコンコースを歩くだけで感じたファンの熱量に驚いたが、売店の値段にもびっくり。

 水1本、5ドル89セント。缶ビール1本15ドル39セント。1ドル=150円で計算すれば、水は884円。ビールは2309円! 球場の売店がやや割高なのは仕方がないが、米国のインフレと円安は、日本から来るファンに多額の出費を迫る。

 チケット代も外野の芝生席で37ドル。消費税、手数料などを入れれば、45ドル前後。日本円で6750円。ホテルは、モーテルレベルでも1泊200ドル。つまり、3万円。

 大谷修行も楽ではない。

 そんな状況ではあるものの、ドジャースのキャンプ地には当たり前のように日本語が飛び交う。ロサンゼルスからなら車で5時間ほど。現地在住の人も少なくないはずだが、日本から来ているファンもかなりいる。23日にはおよそ2200人のファンが、練習見学に訪れた。

 過去、イチローさん(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)がいたときのマリナーズ、松井秀喜さん(ヤンキースGM付特別アドバイザー)がいたときのヤンキースのキャンプも取材したが、これほどまでの数は記憶にない。大谷翔平がエンゼルスに入団した2018年も確かに盛り上がったが、ここまでではなかった。これが、ドジャースというブランドとの相乗効果ということか。

山本由伸は開幕2戦目の登板濃厚か

 ところで、27日も大谷がオープン戦初出場で本塁打を放つなど、連日のように話題を独占しているが、山本由伸に対する首脳陣の評価が日々高まり、韓国で行われる開幕シリーズの2戦目に先発することが濃厚のよう。開幕戦は、レイズからトレードで移籍してきたタイラー・グラスノーと予想されているが、それはすなわち、二人に対する期待の高さを示す。

 もちろん、韓国での開幕シリーズは位置づけが難しい。「先発は4〜5回投げてくれれば、十分」とデイブ・ロバーツ監督も話す。「重要な2試合だが、長いシーズンを考えれば、他の2試合と変わらない」。とはいえ、経験の浅いボビー・ミラーや、ケガの不安のあるジェームズ・パクストンに投げさせるわけにはいかない。よって、ロバーツ監督もなかば、誰が先発するのか認めている。

「まぁ、その2人というのは、妥当な予想だ」

 もっとも、その2試合に間に合わせるため、調整を早めることも要求しない。それよりもいまは、シーズンを通して投げられるような調整を求めている。韓国での2試合は開幕シリーズではあるが、オープン戦の延長線上ーーそれは、パドレス側も同じではないか。ちなみにパドレスの2戦目は、オープン戦のローテーションから考えると、ダルビッシュ有の可能性が高い。

やり投げトレーニングを見せる山本。独特の調整法にも注目が集まる 【写真は共同】

 さて、キャンプインしてからの山本は、独特の調整法に注目が集まっている。肩の手術をして、夏頃の復帰が予想されているクレイトン・カーショウも、「リハビリで、やり投げをやってみようかな」と話したが、山本がそれを始めると、他の投手らは足を止める。

 また、対戦した打者らは、メカニックのユニークさを口にした。「投げる直前に、捕手のミットから目線を切って、正面を向く」とフレディ・フリーマン。「モーションが一瞬、止まるようにも見える。投げるまでの動作が、こっちにいる投手とは違うから、打者は相当戸惑うはずだ」

 また、山本の身長の低さも、これまでの定説に倣えば不利とされる要素だが、それがプラスに働くと見られている。フリーマンがこう説明した。

「すぐにデータを確認したら、縦の変化量が18−20インチ(45.7〜50.8センチ)もあった(大リーグ平均は43センチ前後)。だから、浮き上がってくるように見える」

 山本の場合、他の投手と比べてリリースポイントが低い。となると、角度がない。しかし、その角度がないことが、最近の大リーグでは、特に高めの真っすぐにおいて効果を発揮すると考えられている。まだデータが公にはなっていないが、かなりVAA(バーティカル・アプローチ・アングル)※が低いのではないか。

※VAA:投球がホームベースに到達する時点での角度のこと。地面と平行であれば0度。フォーシームであれば大リーグ平均は-5度程度で、-4度よりも小さくなると、打者の目にはホップして映るといわれる。スイーパーの平均は−7.7度(サイドスロー含む)。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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