ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

.600に迫る打率にOPSは驚異の1.667 大谷翔平の覚醒をサポートしたドライブライン・ベースボールの「ビッグ3」とは?

丹羽政善

3月6日のホワイトソックス戦で内野安打を放つ大谷翔平 【写真は共同】

大谷が昨年つかんだ“いい感じ”の正体

 ドジャースは3月6日の試合を終え、20日に韓国で行われる開幕シリーズまでの残り試合が、あと7試合となった。

 大谷翔平はここまで5試合に出場し、12打数7安打、6打点、4得点、打率.583、OPS1.667。もちろん、まだサンプルが少ないので、この数字だけで好不調を評価できないが、キャンプ初日にこんな話をしていた。

「バッティングは去年、かなりいい感じをつかめていた。基本的には、それを継続していくところと、微妙に変えるところかなと思うので、いまのところは大きく変えてないですし、必要なところところで、調整しながらキャンプ中に直していけたらと思います」

 大谷はこれまで、打撃については、「一番は構え」と話してきた。

「構えがしっかりした方向で力が伝わっていないと、いい(スイング)軌道に入っていかないですし、同じように振っていても、最初の構えの時点で間違った方向に進んでいると、いい動きをしてもいい結果につながらないものかなと思うので」

 意識しているのは常にそこかと問うと、「8割5分くらい構えで決まっているくらいの感じ。ピッチングもそうですけど、やっぱりどういうイメージで打席に立っているかが、一番大事」と強調した。

 では、昨年つかんだ“いい感じ”というのは、その構え同様、新しく打撃の軸になるようなものか?

「何をすればいいか、いい状態を維持しやすいのかとか、そういう調整も含めて、『なんでこうなってるのか』っていうのを理解すれば、その好調を維持したりとか、不調を早く脱したりというのがしやすいと思うので、そこは去年、良かったところ」

 その感覚が継続できているなら、いまの状態も必然か。さすがに打率5割を維持することは出来ないとしても。

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MVP受賞会見で吐露した大谷の思い

エンゼルスに所属していた2021年、初のMVPを受賞した大谷(写真は46本目の本塁打を放ったときのもの) 【写真は共同】

 そんな大谷だが、コロナ禍の2020年には、どん底を味わった。あの年、大谷は打者として44試合に出場すると、153打数29安打、7本塁打、打率.190、出塁率.291、OPS.657と散々だった。

 トミー・ジョン手術(側副靭帯再建術)からの復帰となった投手としても、2試合に先発し、0勝1敗、防御率37.80。右前腕を痛めて途中離脱し、どちらかに絞るべきでは? との声も上がり始めた。

 よって、迎えた21年は二刀流の存続がかかっていた。その年から、投打同時出場も含め、登板前後は試合を休むという制限が撤廃され、それは大谷に対する期待——との捉え方が多かったが、大谷本人はむしろ追い込まれていたのである。

 その年の11月、MVPの受賞会見でこう思いを吐露した。

「プラスの部分ももちろん、ポジティブな部分ももちろん、あるとは思います。そこに対して自分で頑張りたいなという気持ちが出てきたのもあるんですけど……」

 どこか歯切れが悪く、続いた言葉こそが、本当の意味だった。

「どちらかというと、なんて言うんですかね、『ある程度形にならなかったら、この先考える必要があるんじゃないかな』っていうニュアンスもあったので、それ(頑張ろうというポジティブな気持ちと危機感)が五分五分かなっていう感じですかね」

 その後、3年連続で結果を残したことで懐疑的な声が消えたわけだが、その覚醒をサポートしたのが、20年のオフに訪れたドライブライン・ベースボール(以下、ドライブライン)だった。

 発祥はシアトル郊外のケントという街だが、アリゾナ州にもあり、ロックアウトで開幕が遅れた22年春、大谷はケントでキャンプ前のトレーニングを行ったあと、キャンプ施設が閉鎖されたままだったため、アリゾナ州のドライブラインで開幕に備えている。テンピからスコッツデールへと当時とは場所を変えたドライブラインは昨年末、施設内に新たなラボを増設したというので、5日午後、そこを訪れた。

 ケントの施設と比べると大きさは5分の1ほどか。しかし、メインのビルには室内ケージ/マウンドが2つあり、ウエイトトレーニングスペースもある。もう一つのビルには、新しくモーションキャプチャを備えたラボが作られ、訪れたときにはちょうど、アマチュア選手のアセスメント(動作解析、データ測定)が行われていた。

 このラボこそがドライブラインの心臓部で、同施設を訪れる選手はまず、ラボでアセスメントを行い、その解析結果を元にトレーニングメニューが組まれる。そして、6週間後に再度、同様のアセスメントを行い、進捗を確認するというのが一般的な流れ。

 ラボそのものはまだ完成しておらず、今後、マーカーレスのモーションキャプチャシステムが設置される見込みだという。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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