ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

実戦形式の打撃練習「ライブBP」でいきなり本塁打! 大谷翔平の早期復帰をサポートする最新の打撃マシン「ビジョン」とは?

丹羽政善

実戦形式の打撃練習「ライブBP」に初参加し、笑顔を見せる大谷翔平 【写真は共同】

フリーマン長男は大谷が大好き

 2月17日の練習前、少しはにかみながら大谷翔平(ドジャース)と一緒に写真に収まったフレディ・フリーマン(ドジャース)の長男チャーリー君。照れながら父親のもとに戻ると、そのまま大谷の方をじっと見つめた。

「これ、すごい喜んでいるんだよ」

 その日の練習が終わってから一連の経緯を明かし、そのときの写真を披露したフリーマン。「まぁ、7歳だから、こういうシャイな反応になるけど」

 その日の朝、チャーリー君は大谷がクラブハウスに到着すると、ジョー・ケリー(ドジャース)の長男ノックス君を伴って、ロッカーまでやってきた。

 大谷とチャーリー君は、2022年にロサンゼルスで行われたオールスターゲームで一度会っている。フリーマンはキャンプ初日、「さっき翔平に会ったら、『チャーリーはどこ?』って聞かれたんだ。2年前のことなのに、ちゃんと名前を覚えてくれているなんて、すごいうれしかった」と笑みを見せたが、今度はチャーリー君が、ノックス君を紹介する形になった。

 ノックス君にサインをもらうよう促したチャーリー君だが、大谷が、「チャーリー、元気?」と話しかけると、そっけなく背中を向けて歩き去った。

 ただ、やはりチャーリー君は大谷のことが大好き。フリーマンは、「チャーリーは土曜日にやってくる。ずっと追いかけるから、翔平は疲れてしまうかもね」と話していたが、その土曜日、大谷が屋外でトレーニングを始めると、ついて回った。

 大谷がメディシンボールを真上に投げるトレーニングをしているときも近くに。あるとき、そのボールがチャーリー君たちの方向へ。「危ない」と言いつつ、慌てて取りに行った大谷の顔面をワンバウンドしたボールが直撃すると、大谷の「ハハハハハハハハ」という笑い声が、キャンプ地に響いた。

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大谷の仕上がりに「みんな驚いている」

子どもと触れ合う大谷 【写真は共同】

 キャンプ開始から2週間。大谷の調整が順調だ。アリゾナ州グレンデールにあるキャメルバックランチというキャンプ施設に着いた当初は、軽くティーバッティングをする程度だったようだが、キャンプインするころにはほぼ室内ケージでフルスイング。12日には161日ぶりに屋外で打撃練習を行った。そして19日にはライブBPに参加し、いきなり本塁打を放っている(映像参照)。

 角度がなかったため、よくてフェンス直撃の二塁打かーー。そんな打球だった。決してフルスイングではない。やや、タイミングも外された。もちろん、シーズン中、あるいは、通常のキャンプなら、超えてもおかしくない。しかし、リハビリ中。しかも、ライブBP初日で、あの打球が打てるとはーー。

「予想よりも早く仕上がっている」とデイブ・ロバーツ監督。「みんな驚いている。翔平以外は」。

 契約した当初は、「開幕に間に合わせてくれーーそんなプレッシャーを掛けないように気を使った」という。しかし、もはや気遣いは無用。「今の流れは、非常にいい」と、監督は開幕で打席に立つ可能性が高いことを示唆する。
 もちろん、昨年9月に右ひじの手術を行ったことで、例年に比べて、調整メニューそのものは遅れている。12月に契約したときは、まだ、素振りしか出来なかった。例年なら、もう打撃練習を始めていてもおかしくない。1月には、投手の球を打つライブBPの練習を始めるころだが、それは2月19日までずれ込んだ。腕を使ったウエイトトレーニングももちろん、制限されていた。ということは、開幕に間に合わせるなら、なんらかの過程を省略する必要もある。

 そもそも、大谷の打撃の軸である「構え」「見え方」がしっくりするには、ある程度の時間を要し、実戦でしか養えない。どう失われた時間を補うかだが、21日の練習後に大谷がこんな話をした。

「いま、5打席ぐらい、ビジョンで打ってきた」

 この大谷が口にしたビジョンが何を意味するかだが、これは、トラジェクトアーク(映像参照)のこと。カナダのベンチャー企業「トラジェクトスポーツ」が開発したその打撃マシンは、スクリーンに実際の投手が投げる映像が映し出され、STATCAST(ホークアイを用いたメジャーリーグ独自のデータ解析ツール)で得られる投球軌道のデータ、縦横の変化量、球速、回転数などを入力することで、その投手の投げる球を“完コピ”できる。

 最大の特徴はジャイロ成分を再現できること。これまでの打撃マシンでは不可能だったが、大谷翔平、千賀滉大らが投げるジャイロスプリットさえ、忠実に再現できるようになった。現在、メジャーでは約20球団が導入しているとされる。

 大谷はそれをエンゼルス時代に使用していたが、そのマシンがドジャースのキャンプ地にもあり、大谷がそれを使っていることを、公に認めた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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