ドジャースキャンプレポート2024(毎週木曜日更新)

.600に迫る打率にOPSは驚異の1.667 大谷翔平の覚醒をサポートしたドライブライン・ベースボールの「ビッグ3」とは?

丹羽政善

ドライブライン打者指導の「ビッグ3」

 大谷がドライブラインで行ったことは、大谷自身も明かすことには消極的。ドライブラインは、大谷側の許可がなければ、話せない。

 よって詳細は不明だが、投手としては、動作解析結果を元にメカニックを修正し、それぞれの球種の質を高めるピッチデザインを行ったことは、他の投手の例からも容易に推測できる。大谷本人がその過程でデータをベースとしたアプローチを受け入れたことは、ビル・ヘイゼルというドライブラインのピッチングコーディネーターの獲得をエンゼルスに促したことでも分かる。

 ドライブラインにおいて打者に対する指導として有名なのは、①バットスピード、②スマッシュファクター(※1)、③スイングディシジョン(※2)という3要素。彼らはそれを「ビッグ3」 と呼ぶ。

※1スマッシュファクター:もともとはゴルフ用語。100マイルのヘッドスピードでボールの初速が150マイルならば、スマッシュファクターは1.50。野球の場合、計算式に球速も考慮され、数値が大きければ大きいほど、スイングスピードを効率的に打球に伝えていることになる。
【計算式】スマッシュファクター=1+(打球初速-バットスピード) / (球速+バットスピード)

※2スイングディシジョン:2ストライクまでは、スイングスピード、打球初速が出やすいコースに狙いを絞る。苦手なコースを克服することで、長所が失われる可能性があるので、そこはあえて追い求めない

 スイングディシジョンについては解釈がやや難しいが、大谷は昨年打球の平均初速が他と比べて遅く、長打も少なかった、外角高めを克服。一方で、内角低めなど、もともと強いコースでも従来のデータを維持しており、ドライブラインの指導の想定を超えてしまった。

 ビッグ3という指導方針は、大谷の成功によって他の選手にも受け入れられたが、こうなると、この理論にはまだまだ進化の余地があるといえそう。

6日のホワイトソックス戦で二盗を決めた大谷 【写真は共同】

 さて、6日の試合で大谷は、初回に二塁内野安打を放ち、その後、フレディ・フリーマンがレフトへ犠牲フライを放った際に、二塁へタッチアップ。二回はタイムリーのあと、二盗に成功。

 試合後、フリーマンが、こんな話をした。

「きょう、(大谷のプレーで)一番すごかったのは、一塁からのタッチアップだ。あれは目立たないし、あまりみんな話をしないかもしれないけど、素晴らしいプレーだった。シーズンが始まったら、ああいうプレーが、勝利を導くかもしれない」

 打撃だけではない。スピードだけではない。そんな細かいプレーにより、大谷はチームメートの信頼を得ている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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