J1初昇格の町田を進化させる注目の新戦力組 注目はコソボ代表の「司令塔系CB」ドレシェヴィッチ
今季から町田に加入するCBドレシェヴィッチ(※公式戦の背番号は5) 【(C)FCMZ】
前提として今季の町田はコーチングスタッフの増員があったものの黒田剛監督、金明輝ヘッドコーチら首脳陣は全員が残留。エリキ、ミッチェル・デューク、藤尾翔太といった主力のアタッカーも契約を更新している。戦術的には昨シーズンのベースを残したまま、J1へ挑む状況だ。
ただし、最終ラインは様変わりしそうだ。GKとしてもっとも出場時間が長かったポープ・ウィリアムが横浜F・マリノス、左SBのレギュラー格だった翁長聖は東京ヴェルディに移籍した。一方でGK谷晃生(前FCVデンデルEH)、CB昌子源(前鹿島アントラーズ)といった日本代表級の人材が新たに加わった。
今季初の対外試合、1本目は6名が新加入
エリキが負傷で離脱中、デュークはアジアカップ参加中で不在という事情もあったが、主力と思われる1本目のメンバーは11人中6人が「新加入」という構成だった。高い強度のプレスをかけて押し込みつつ、新加入で元韓国代表のナ・サンホや平河悠がダイナミックな仕掛けを見せる、そんな30分だった。
黒田監督は名桜大戦をこう振り返っていた。
「1本目はDFの背後を取ったりして、流動的に色々な選手が動いていた。スピードのある選手が多いから、その関わりから入った点数が多かった」
そんな強みを引き出したのが最後尾からのビルドアップで、昨季の町田から大きな「変化」を感じた部分でもある。CBは昌子と新加入のイブラヒム・ドレシェヴィッチがコンビを組んでいた。彼らはボランチやSBに「各駅停車」のパスをつけるだけでなく、FWやサイドMFへのミドルパスやロングパスを正確に供給していた。
最終ラインからの配球が町田の強みに
昌子源はリーダーとしても期待される存在 【(C)FCMZ】
黒田監督は試合後にこう述べていた。
「(ドレシェヴィッチは)やはり配球能力が高い。何人か候補がいた中で、映像を見ていて彼の配球能力はすごく魅力的で、だから彼を推薦したというのも一つありました。あと細かいところも結構できて、インサイドのパスも質が高いですね。昌子もミドルパスなどの精度が高いので、その辺で他のCBとは少し差があるかなという感じはしました」
昌子もこう口にする。
「つなぎすぎは良くないと思うけれど、そこは監督が求めているところでもある。サイドチェンジも僕やイボから2、3度ありましたけど、ああやって相手を広げてからの(崩し)とか、そういういい感じでチームとしてできていたのではないかなと思う」
ドレシェヴィッチの技巧はフットサル仕込み
188センチ・81キロの大型CBだが、DFラインの手前、背後、サイドと自在に「プレーメイク」できる技巧派でもある。コソボ代表ではアンカー(中盤の底)でもプレーしているそうだが、いい意味で司令塔的なボールの持ち方、運び方をする。
膝下の柔らかさが印象的で、足裏を使ったプレーやダブルタッチなど「おしゃれ」なプレーも多用していた。育成年代でフットサルを経験し、フィクソ(最後尾)としてプレーしていた名残もあるのだろう。
もちろんJ1レベルの強度、スピードに対してどれだけ攻撃面の強みを発揮できるかは未知数だ。とはいえあれだけ「上手い」CBはJ1でも他に思い浮かばない。守備も積極的なボールへチャレンジを見せ、セットプレーでは高い打点のヘッドからゴールを決めていた。また試合中は昌子と英語で頻繁にコミュニケーションを取っていて、連携面も不安は感じなかった。
昨季の町田は堅守を誇っていて、CBもチャン・ミンギュを筆頭にJ2では十分な実力者を擁していた。ただしJ1で戦うなら自陣からスムーズに脱出する、試合を落ち着かせるといった「質」「判断」がより必要になる。昌子、ドレシェヴィッチの加入は攻撃面で大きな変化をもたらすはずだ。