J1初昇格の町田を進化させる注目の新戦力組 注目はコソボ代表の「司令塔系CB」ドレシェヴィッチ

大島和人

ナ・サンホもアピールを見せる

ナ・サンホは韓国代表経験を持つアタッカー 【(C)FCMZ】

 前線はナ・サンホが新加入組の「目玉」になる。昌子はこう語っていた。

「特徴のある選手が前は多いので、彼らを活かすのも僕らの仕事。各駅(停車)で、テンポ速く回すのも一つだけど、1個飛ばせるなら飛ばしてしまった方がいい。(ナ・)サンホは日本へ久々に戻ってきて、色々考えることはあると思うけど、彼はやっぱり上手ですね。一瞬のスピード、一瞬の切れがあるし、(プレーを)寸前でやめられて、やはり上手い。左に出そうと思ったけど(キャンセルして)、足首だけで1回右に『ちょん』って出した場面は上手いなと見て感じました」

 黒田監督もナ・サンホを高く評価していた。

「サンホが周りを3回も4回も見ながら、情報量を増やしながら、連携を取ろうとしている姿もよく見えた。それがプレーの確率の高さにつながってきているところもあると思う。相手のプレッシャーも激しくなってきたとき、どれくらいできるかはちょっと一つの指標になると思うけれど、少しずつ積み上がって来ている感じはした」

 ナ・サンホは27歳で、韓国ではU-23やA代表の経験もあるアタッカー。2019年から20年の途中までFC東京に所属していて、昨季は韓国の強豪・FCソウルに在籍していた。スピードに加えて「周りと絡める」部分を指揮官は評価していた。

 ナ・サンホと平河はいずれもスピードに恵まれ、トップ、シャドー、サイドと複数の位置で起用できるタイプだ。彼らの起用は「FWがDFラインを下げる、中に食いつかせる」「それによりサイドや手前のスペースが空く」という相乗効果を生む。布陣がどうなるにせよ最終ラインからの精度が高いパスと、スピードに恵まれた前線が合わさればそこに相乗効果が生まれるだろう。

ボランチに求められる前線とのつながり

 ここで重要になるのが「4人目」「5人目」として攻撃に関わる選手の動きだ。黒田監督はこのように指摘する。

「(名桜大戦の1本目は)仙頭(啓矢)が出ていましたけど、この間までのゲームは(ボランチが)アンカー的に落ちるところが多かった。だけどもう少し前の位置で、彼の良さを出したい。配球能力やゴール前に入っていくセンスは高いので、それをもうちょっと要求していきたい。(ボランチの)片方が落ちたとしても、片方は前でつながっておくことは重要です。無駄に後ろが重くならないようにとミーティングでも話をしたけれど、それに関しては少し良くなったかなと思う」

 仙頭啓矢は29歳のMFで、昨シーズンは柏レイソルに所属していた。彼の「前線とつながる能力」も、今季のポイントとなる部分だろう。

 開幕1ヶ月前のトレーニングマッチの一部を見て、シーズン全体を見通すことはナンセンスに違いない。とはいえ「町田のスタイルに適応しながら、プラスアルファをもたらせそうな新戦力が多い」という感想に嘘はない。特にドレシェヴィッチが見せる「最終ラインからのプレーメイク」は町田サポーター以外にもインパクトを残せるものとなるのではないか。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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