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“冨安愛”が増殖、レギュラーに肉薄する初ゴール アルテタ監督に「I love him」と言わせたシェフィールド・U戦の余波

森昌利

シェフィールド・U戦で終了間際にチーム5点目となるゴールを決めた冨安。クラブ在籍3年目、待望の初ゴールに喜びを爆発させる 【写真:ロイター/アフロ】

 冨安健洋が10月28日のシェフィールド・ユナイテッド戦で、アーセナルでの自身初ゴールを決めた。奇しくもこの試合は、彼にとってプレミアリーグ通算50試合目。途中出場ながら、得点だけでなく攻守にわたって多大な貢献を果たした日本代表DFに対して、ミケル・アルテタ監督は最大源の賛辞を送った。

アルテタ監督は開口一番、そして力強く言った

 先週は遠藤航も見事なヘディングでリバプールでの初ゴールを奪った。そしてアヤックスとのヨーロッパリーグ、日曜日にはフラムとのプレミアリーグと三笘薫の取材を2試合したが、今回は冨安健洋に焦点を当てたい。

 もちろん日本の「愛」も同じだろうが、英語の「LOVE」という言葉には重みがある。

 カップルであれば、「I love you」とどちらかが言った瞬間に関係が劇的に進展する。それは「like」の好きから「love」に心境が変化することで、その人の心の中で“不変的関心”が芽生え、「頭の中にあなたが常にいるのです」と打ち明けることになるからだろう。

 もちろんこう言ってしまうとある種の責任も発生するわけで、そう簡単には言えない。しかし、アーセナルのミケル・アルテタ監督は10月28日にホームで行われたシェフィールド・ユナイテッド戦後、冨安について聞かれると、「I love him, everybody loves him」(彼を愛している。みんな彼のことを愛しているんだ)と開口一番、しかも力強く語ったのだった。

冨安がこれほど白い歯を見せたことはない

冨安はシェフィールド・U戦の4日前に行われたCLセビージャ戦でもハイパフォーマンスを披露。フル出場し、敵地での2-1の勝利に貢献した 【写真:REX/アフロ】

 この試合で冨安はアーセナルでの初ゴールを記録した。本人にとってプレミアリーグ50試合目の出場となる記念すべきゲームだった。

 試合後に冨安は「ずっと決めてなかったんで、やっと決められて良かったと思います」と話して、ここまでゴールが出なかったことを恐縮するようなコメントをしたが、これは照れ隠しのようなものだろう。ゴールを決めた瞬間、冨安の表情が記者席のモニターに大写しになったが、日本代表DFがピッチ上でこれほど白い歯を見せたことはない――と断言できるほど、そこには満面の笑顔が映っていた。

 しかし、この初ゴールは41歳のスペイン人指揮官が冨安に愛を注いでいることを公言するきっかけを与えただけで、全てではない。その愛は、冨安がこの試合でも見せた、まさに「アーセナルのために体を張っている」という全力を尽くすパフォーマンスが対象となっているのである。

 冨安はシェフィールド・U戦の4日前、グループ戦突破のために必勝が課された欧州チャンピオンズリーグのアウェーゲームに先発した。フル出場を果たし、厄介なチームであるセビージャを相手に敵地スペインで2-1の勝利に貢献した。

 ちなみに筆者はBBCの視聴者投票による選手採点を好んでいる。日本のメディアがよく引用する現地新聞等の採点は、その試合を取材している記者が片手間に行うことが多くて、案外いい加減だ。翌日の紙面を見て、「あれ、なんでこの選手の評価がこんなに高い?」、もしくは「低い?」と首を傾げることも多々ある。その一方で、目の肥えた英国のサッカーファンの投票で決まるBBCの採点はけっこうしっくりとくるのだ。

 そのBBCの採点で、セビージャ戦にフル出場を果たした冨安の点数は「7.40」だった。これは1ゴール・1アシストを記録したマン・オブ・ザ・マッチのガブリエウ・ジェズスの「7.83」、先制点を決めたガブリエウ・マルティネッリの「7.81」、そして1億ポンド(約180億円)のボランチ、デクラン・ライスの「7.77」に続くチーム4番目の高得点。これを見ても、日本代表DFがいかにこの試合の1点差勝利に貢献したかがわかる。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2023-24で23シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル28年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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