EL参戦による過密日程が三笘薫を苦しめる これは超一流になるために乗り越えなければならない試練
ヨーロッパリーグのマルセイユ戦から中2日で臨んだリバプール戦。特に前半の三笘(左)は明らかに動きが重く、本来のプレーを見せられなかった 【Photo by Steve Bardens/Getty Images】
怪物ぞろいのプレミア戦士も所詮は人間
今年めでたく70歳になったグラハムに言わせると、選手がフィットし過ぎで、90分間ロボットのように戦えるのが面白くない。だから「ゴールが少ない」と不満なのだ。
「60年代のフットボール・ピッチは、毎週ディフェンダーが辱めを受ける場所だった」と言う。イングランドでは今もセンターバックを“センターハーフ”と呼ぶが、それは20世紀半ばまでのFWが6人いたサッカーの名残である。
現在のサイドバックにあたる2人だけで最終ラインを形成して、そこにMFが下がって守備をした。だから試合終盤にはセンターバックも兼ねる両軍のセンターハーフのMFたちがへとへとになり、必ず劇的なゴールが生まれたという。
グラハムは第二次世界大戦の傷跡がそこらじゅうに残っていた60年前のスリリングなサッカーを懐かしがり、「もっとピッチを広げるか、選手が大酒にふけり、一日20本タバコを吸い始めてくれないとゴールが増えない」などと毒舌を吐く。
つまりそのくらい、近年はサッカー選手のアスリートとしての側面が発達したということだ。ふた昔前までは大酒飲み(その頂点にいたのはポール・ガスコインだろうか)が大勢いたサッカー界だが、2023年の今はそんな選手は全く見当たらない。
しかし、そうした鍛え抜かれた怪物ぞろいのプレミア戦士たちも所詮は人間なのだ。過密日程のなかで疲労が蓄積し、時には凡庸な試合もする。残念ながら日曜日に行われたブライトン対リバプールは、そんな試合の典型だった。
遠藤ならあの位置であんな奪われ方はしない
先発出場が期待された遠藤だが、最後までベンチを温めた。アンカーに入ったマック・アリスターのミスから先制点を奪われたように、日本が誇るナンバー6を外したクロップ監督の判断には疑問が残る 【Photo by Bryn Lennon/Getty Images】
どうしてナチュラルなナンバー6である遠藤を先発させないのか? この疑問を日本人記者としてだけではなく、リバプールファンとしても強く抱いた。遠藤を中央に据え、右にソボスライ、左にマック・アリスターと並ぶ中盤が見たかった。現在のリバプールのMF陣を見回したら、この3人の中盤がベストだと思うからだ。
しかし敬愛するユルゲン・クロップ監督の考えは違ったようで、遠藤をベンチに置いたドイツ人闘将に対する不満は、“アンカーとしての感受性が欠如していた”とさえ言えるマック・アリスターのボーンヘッドで奪われたブライトンの先制点で鮮明になった。
フィルジル・ファン・ダイクの縦パスも不用意だったが、マック・アリスターは21歳のFWシモン・アディングラが背後から迫っていることに気づかず、自陣の危険エリアでひったくられるようにボールを奪われて、そのまま右足を振り抜かれてゴールまで奪われた。
遠藤ならあの位置であんなボールの奪われ方はしない。そんな憤怒にも似た感情がこの先制点で湧き上がった。