3連覇達成の長崎と2位・東京Vの担当者が語る「ソナエルJapan杯」と真摯に向き合う理由

宇都宮徹壱

3連覇を成し遂げた長崎の大賀さん(左)と、「Best Jump Up賞」を受賞した東京Vの川上さん(右)。昨年まで長崎で同僚だった2人が、クラブとしてソナエルJapan杯に取り組む意義について語ってくれた 【YOJI-GEN】

 8月8日から約1カ月にわたって開催されたJリーグとYahoo! JAPANの共同企画「ソナエルJapan杯2023」。ここでは関東大震災から100年という節目の年に行われた第3回大会の総括として、優勝したV・ファーレン長崎の大賀結莉さん、2位・東京ヴェルディの川上潤也さんの各ホームタウン事業担当者に話を伺った。

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長崎と東京Vの担当者の意外な接点

 今年で3回目となる「Jリーグシャレン! ヤフー防災模試 共同企画 ソナエルJapan杯(以下、ソナエルJapan杯)」が、9月4日に終了した。ソナエルJapan杯とは、防災意識を高めることを目的に、災害時に必要な知識や能力を問う「ヤフー防災模試」を、Jリーグに所属する全クラブのファン・サポーターがスマートフォンで受験。その点数をクラブ間で競い合うという企画で、今年はJリーグ全60クラブのランキングが発表された。

 見事1位に輝いたのはV・ファーレン長崎。前々回、前回につづく3連覇を達成しただけでなく、総合点が唯一の5桁(13,281点)という圧勝ぶりであった。そして7542点を叩き出し、2位となったのが東京ヴェルディ。過去2回はいずれも予選リーグ敗退となっていたが、今回一気にジャンプアップしたことで「Best Jump Up賞」を獲得している。

 この結果を受けて、長崎と東京V、両クラブの担当者に取材。3連覇の偉業と驚異のジャンプアップは、いかにして達成されたのか、それぞれ語っていただいた。

──長崎の大賀さん、ヴェルディの川上さん、今日はよろしくお願いします。本題に入る前に、簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。まずは大賀さんから。

大賀結莉(以下、大賀) V・ファーレン長崎のスポーツ推進部タウン推進課兼普及インストラクター、大賀結莉と申します。出身は長崎で、『ジャパネット』のアスリート社員として、陸上のハードル競技をずっとやっていました。2021年に現役を引退してからは、V・ファーレンで働いています。

川上潤也(以下、川上) 東京ヴェルディのホームタウン部、川上潤也です。出身は埼玉で、以前はイベントの仕事をしながら、埼玉や東京の街クラブで指導をしていました。2021年の4月からは長崎でスクールコーチとタウン推進を並行してやっていました。そこで大賀さんと一緒にソナエルJapan杯を担当していまして……。

──えっ、そうだったんですか?

川上 そうなんですよ(笑)。その後、去年の9月に運営に異動して、今年の3月からヴェルディで、今の仕事を担当しています。

大賀 前回のソナエルJapan杯では、それこそ川上さんと一緒に「どうすれば1位になれるか」について、一緒に考えていたんですよ。その川上さんがヴェルディに移られて、しかもホームタウン部で働かれているということで、「今年はヴェルディさんが上がってくるんだろうな」とは思っていました。ですから今回のBest Jump Up賞の受賞も、実はそれほど驚きではありませんでした。

川上 もちろん僕自身は長崎での経験がありましたが、ヴェルディがここまで上がるとは思わなかったです(笑)。狙って獲れたBest Jump Up賞というわけではありませんが、ただやるからには「上位を狙えたらいいね」という感じで始めたら、結果的に大きく順位を上げることができました。

欠かせない広報との緊密な連携

マスコットのヴィヴィくんによるインスタライブも、ソナエルJapan杯の周知に欠かせなかった。見事3連覇を達成した長崎には「殿堂入り」の声も!? 【©VVN】

──そうしたなかで、今回のソナエルJapan杯でも長崎が圧倒的な強さをみせて3連覇を達成しました。大賀さん、なぜV・ファーレンの強さが突出しているのか、教えてください。

大賀 もともと私が異動する前から、試合以外でも何事も一生懸命に1番を目指す姿勢が確立されていましたし、多くのファン・サポーターの皆さんもそれに賛同していただいています。クラブがきちんとルールを発信すれば、ファン・サポーターがしっかりついてきてくれる環境もありますので、そこが強みとなっているのかなと。「勝ち負けだけでなく、しっかりホームタウンを巻き込むことも大切」ということを意識して取り組みました。

──川上さんは、ヴェルディに移籍してすぐのソナエルJapan杯ということで、個人的な意気込みもあったかと思うのですが。

川上 この機会を活かしながら、各ホームタウンとの関係性を強いものにしたいというのは、確かにありました。クラブでも、スタッフと顔を合わせるたびに「ソナエル、受験した?」と念押ししていましたね。そして行政、ホームタウン活動をご支援くださっているパートナー企業、スクールやアカデミーにも働きかけましたし、アルバルク東京(Bリーグ)や立川アスレティックFC(Fリーグ)といった同じホームタウンで活動している他競技にも声をかけました。そこまでやったのは、個人的な意気込みというよりも、防災を通じてクラブのことを多くの人に知っていただく絶好の機会と捉えていたからです。その結果として、順位がついてくると思っていましたね。

──V・ファーレンの強さについて、先ほど大賀さんから「試合以外でも何事も一生懸命に1番を目指す姿勢が確立されていた」というお話がありました。とはいえ、J1を3連覇したクラブが1つしかないように(鹿島アントラーズ)、連覇と3連覇では重みが違うと思います。当然、プレッシャーもあったはずですが、前回とは違った新しい取り組みはあったのでしょうか?

大賀 今年はルールも変わりましたし、他クラブもV・ファーレン対策をしてくるかもしれない。そういったことは考えましたが、基本的にはやり方を変えずに精度を上げていくことに注力していましたね。たとえばSNSでの発信では、広報のアドバイスは欠かせませんでした。それとルール変更に関しては、ヴィヴィくん(V・ファーレンのマスコット)のインスタライブでしっかり説明して、質問の書き込みがあれば、その都度レスをしていました。

──ヴェルディの場合、まずはクラブ内での周知というところからのスタートだったと思いますが、具体的にはどんなことをされていたのでしょうか?

川上 おっしゃるとおりで、クラブ内でもソナエルJapan杯を知らないスタッフもいました。そこで社内メールを流していたんですが、回数が多すぎると迷惑メールになってしまうので(苦笑)、グループ分けが決まった時など節目のタイミングでの告知を心がけてきました。クラブ外に向けては、やっぱりSNSでの発信が重要でしたが、われわれの場合はベレーザ(WEリーグの日テレ・東京ヴェルディベレーザ)もありますから、どのタイミングで発信するかについては、広報と緊密に連携を取るようにしていましたね。

大賀 広報とのコミュニケーションは本当に大切ですよね。どの曜日のどの時間帯に発信すれば埋もれないか、というノウハウは広報が一番持っています。今回はリポストにもルールがあったので、素材だけ提供して、ポストするタイミングは広報に判断してもらっていました。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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