3連覇達成の長崎と2位・東京Vの担当者が語る「ソナエルJapan杯」と真摯に向き合う理由

宇都宮徹壱

ソナエルJapan杯がクラブに与える影響

現時点で東京Vが4位、長崎が6位と、今季のJ2で好調を維持する両チーム。ソナエルJapan杯をきっかけに選手とフロントが一丸となれている部分も小さくない 【©J.LEAGUE】

──そうした努力の甲斐あって、それぞれ1位と2位を獲得することになったと思いますが、この結果はクラブにどんな好影響を与えましたか?

川上 みんな喜んでくれましたし、ホームタウン部として結果を残せたことも大きかったと思っています。僕らの仕事って、どうしても成果が見えにくいんです。それが今回、数字を伴ってアピールすることができましたから。

大賀 川上さんのおっしゃるとおり、ホームタウン活動って、これまで数字で見せられるものがなかなかなかったんです。それが今回また1位になれたことで、サッカーを知らない人たちにもV・ファーレン長崎の活動を知っていただける機会になったと思います。

──オン・ザ・ピッチとの関係性については、いかがでしょうか?

川上 ソナエルJapan杯が始まる前から、今季のヴェルディはJ2で上位をキープしています。そうしたなか、事業サイドでできることは何かと言えば、やはり集客やスポンサード、メディア露出といったところですよね。ホームタウン事業の場合、成果が見えにくいところがあったんですが、ようやく肩を並べられるところまで来たかなと思っています。

大賀 こういった企画も試合と一緒で、クラブ・チーム・ファンサポーターが一つになって勝利がつかめると感じています。この勢いで、シーズン終盤も、選手もフロントも一丸になって、同じ方向に向かって進んで行きたいです。

──あらためて、防災ということについて考えてみたいと思います。今年は関東大震災から100年の節目で、また南海トラフ巨大地震への備えということもあって、例年以上に防災に関する話題がメディアに取り上げられる機会が多かったですよね? このソナエルJapan杯も、そうした文脈の中にあるわけですが、それぞれヤフー防災模試を受験されてみての感想を教えてください。

川上 東日本大震災の時は東京にいたので、大地震に遭遇した経験がないわけではないと思っていました。けれど、突発的な自然災害に対して、まず何をすべきかがパッと頭に浮かばないんですよね。そういう意味で、この防災模試は間違いなくガイドラインになると思います。僕自身、1年ぶりにやってみると、去年と同じところで間違えているんですよ(笑)。ですから、繰り返し受験するのが大事だと思いますね。

大賀 私も3回やっているのに、やっぱり同じところで間違えているんですよね(笑)。長崎も過去には水害や普賢岳の噴火がありましたし、ソナエルJapan杯の期間中にも大きな台風がありました。突然の事態にもすぐに動けるように、繰り返すことでの刷り込みが大事だなって思いました。

成功事例を真似しながら独自性も

東京VのホームゲームにソナエルJapan杯のブースを出展した際には、防災模試にチャレンジする親子サポーターの姿が。こうした光景をさらに増やしたい 【©TOKYO VERDY】

──この対談記事を読んで「来年こそは」と闘志を燃やすクラブも出てくると思います。そこでやや上から目線でも結構なのですが(笑)、何かソナエルJapan杯で上位に食い込むためのアドバイスをいただけないでしょうか?

大賀 クラブによって温度差はあると思うんですが、ソナエルJapan杯の場合、すぐにチラシに落とし込めるデータだったり、ルールを分かりやすくまとめた資料だったりをJリーグから提供していただけるんです。イチから始めるんじゃなくて、すでに予定されているホームゲームやイベントにはめ込むだけで、どのクラブでもすぐにできると思うんですよね。負担を感じることなく、できることから始めることで、捉え方も変わってくるんじゃなかと思います。

川上 「やらされている」ではなく、「やる」に変えることが大事ですよね。といはいえ僕自身、今年もソナエルJapan杯が始まるのは分かっていたけれど、去年と違って大賀さんもいないし、ヴィヴィくんもいない(笑)。どうしたものかと考えた時、長崎でやってきたことをヴェルディに落とし込んでやればいい、という結論に達したんですね。

──あえて言えば「いいとこどり」ですよね(笑)。

川上 そうですね(笑)。シャレン!(Jリーグの社会連携活動)でも、各クラブの担当者が集まって事例を共有しているんですが、素晴らしい事例があれば、どんどん真似しながら広がっていけばいいと思います。ただし、それぞれの地域性やクラブの成り立ちなんかを踏まえながら、独自性を出すことも大事です。われわれは東京のクラブですので、防災の日に東京スカイツリーや東京都庁がライトアップしていた際には、それぞれ許可をいただいて東京ならではの画像をSNSにアップしていました。

──最後の質問です。少し気の早い話ではありますが、来年のソナエルJapan杯に向けて、現時点で考えていることがありましたら教えてください。

川上 まず、V・ファーレンさんは「殿堂入り」でいいんじゃないですか(笑)。ヴェルディの場合は、ベースの部分がないなかで、Best Jump Up賞をいただくことができて、ようやくスタートラインに立てたと思います。ただ、これ以上のジャンプアップはないので、そうなると目指すは優勝しかないですよね。またルールも変わるかもしれませんが、次はそこを狙いたいと思います。

大賀 実はヴィヴィくんとも「そろそろ殿堂入りかな」って話していたんです(笑)。もちろん1位になるのも大事ですが、防災の知識と意識がきちんと浸透することも大事だと思っています。次回もみんなで楽しみながら、さらに浸透させていくことを目指したいですね。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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