プロ野球2023シーズン終盤戦の12球団見どころ

超大型補強も勝率5割ラインに喘ぐソフトバンク 「五冠王」誕生の可能性と下剋上へのキーマンは?

三和直樹

ソフトバンク2年目の藤本博史監督。優勝候補筆頭だった今季、117試合を終えて貯金1となっている 【写真は共同】

 今年3月31日に開幕したプロ野球は、記録的猛暑の夏を越えていよいよ“勝負の9月”を迎える。セ・パ両リーグの首位球団に優勝マジックが点灯した今、残りの約30試合をどのように戦うべきか。そして注目ポイントはどこか。12球団の終盤戦の“見どころ”を整理しておきたい。今回はソフトバンクだ。

※成績はすべて9月4日時点のもの

「七夕の悲劇」で急降下

 今年“も”優勝候補の筆頭だった。「2強」と目されていたライバルのオリックスが主砲・吉田正尚が退団した穴を森友哉で埋めようとしたのに対し、エース・千賀滉大が抜けたソフトバンクは、FAで近藤健介を獲得しただけでなく、有原航平、オスナ、ガンケル、嶺井博希とNPBで実績のある選手を次々と獲得した。そこに費やした資金は推定80億円と言われた。

 その超大型補強を経て迎えたシーズンは、開幕10試合を8勝2敗の好スタートから始まった。その後、4月18日から5連敗、同29日からも4連敗と苦しんだが、交流戦のあった6月を15勝8敗と大きく勝ち越しに成功。オリックスとの激しい首位争いを続けながら、7月6日終了時点では貯金15で首位に立っていた。

 しかし、そこから一気にチームが崩れる。7月7日から「七夕の悲劇」と言える泥沼の12連敗を喫し、一気に貯金が3にまで減少。8月に入っても調子は上向かず、8月24日からの4連敗で、ついに借金1を背負うことになった。9月は2勝1敗スタートで貯金1としているが、首位のオリックスとは絶望的な13.5ゲーム差。それよりも2ゲーム差で迫る4位・楽天が気になる状況となっている。

QS率12球団ワーストの先発陣

 4月、5月と勢いに乗り切れず、7月に大型連敗を喫し、8月も停滞している最大の要因は、先発投手陣にある。チーム最多勝利が有原航平と和田毅の6勝で、東浜巨、石川柊太、大関友久の3人は5勝以下。救援防御率2.75はオリックスと並んでリーグトップだが、先発防御率3.61は楽天(3.62)をわずかに上回るリーグ5位だ。そして、QS率40.2%はリーグワーストであり、DHのないセ・リーグワーストのヤクルト(QS率41.3%)よりも低い数値となっている。

 その上で今後の終盤戦で注目したいのが、入団5年目のスチュワート・ジュニアだ。鳴り物入りでNPB入りして以降、殻を破れない日々が続いたが、今季は6月18日のシーズン1軍初登板でいきなり自己最速の160キロをマークすると、7月26日のオリックス戦で6回を6安打1失点(自責0)に抑えて待望の来日初勝利を挙げた。その後、課題の制球を乱した試合もあったが、ここまで9試合に先発して3勝4敗、防御率2.61。8月29日のオリックス戦で7回6安打無失点の好投を披露しており、9月以降のピッチングへの期待感を高めている。

 さらに、元守護神で今季から先発に転向した森唯斗にも期待したい。復活を誓ったプロ10年目の今季、6月8日の登板を最後に2軍調整が続いていたが、約3カ月ぶりに登板した9月3日の西武戦で6回途中3安打1失点に抑えて2勝目をマークした。ここから“千賀の穴”を一人で埋めることは困難だが、気迫あふれるピッチングは停滞するチームに必要なもの。周囲の投手陣を奮い立たせることができるはずだ。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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