「ライバル」前田悠伍の背中を追いかけて 大阪桐蔭の10番・南恒誠が夏に秘めていた思い
最速145キロのポテンシャルを秘めるも、春までは力を出し切れず
186センチの長身で、高いポテンシャルを秘める南。履正社との決勝では登板することなく夏を終えた(写真はセンバツの報徳学園戦) 【写真は共同】
「秋は前田(悠伍)にずっと頼ってきて…。自分も何とか投げてきましたけれど、最後に勝ち切れなかったのは悔しいです」。
ボーイズ、シニアなど硬式野球出身の選手が多い中、南は宝殿中の軟式野球部出身。中学時代は投手以外に捕手や遊撃手もこなした。大阪桐蔭では投手一本で勝負し、優勝した昨春センバツからベンチ入り。2年春の府大会からマウンドに立つようになった。
そんな中、エースの前田悠伍(3年)は1年時から同級生の中だけでなくチームの中心的存在だった。負けじと努力を続け、新チームになった昨秋からは右のエースとして期待されるようになった。現在のストレートの最速は145キロ。他のチームなら不動のエースだろう。
だが、昨秋以降、南にとっては煮え切らないマウンドが続いた。
連覇を果たした昨秋の明治神宮大会の決勝戦では決勝の広陵戦で先発するも制球が定まらず、5四球を出して2回で早々と降板した。さらにセンバツ準決勝の報徳学園戦も先発し、立ち上がりは上々だったものの、7回途中に4連打を浴びて途中降板。エースの前田悠伍にマウンドを譲るも、チームは逆転されセンバツ連覇の夢は潰えた。
「センバツでは、浮いたカーブや低めに集められなかった球を打たれました。でも、それ以上に、相手を自分と対等に見るのではなく、上から見下ろすような気持ちで投げなければと思っていました。色んな舞台で試合をさせてもらっているのに、まだまだ自分がそこまでなり切れていないと思いました」
“投げ切る”ことが南の最大のテーマだった。そのためには、技量はもちろん、気持ちの強さで相手を上回らなければ圧倒できない。だが、前田はマウンドからそういうオーラを常に醸し出しながら投げていた。そう思うと負けられない。ライバルのマウンド姿を思い出すと、白球を握る右手に自然と力がこもった。