「ジェフ・コブを15分以内で倒すのは難しいが、持てる技術を総動員して、後楽園のメインらしいスペシャルな雰囲気をみんなで作り上げ、一生に一度のパフォーマンスを見せなければならない」“NJPW WORLD TV王者”エル・ファンタズモ選手にインタビュー!
撮影/山本正二
■『ナッツRV Presents Road to THE NEW BEGINNING』
2月3日 (月) 17:30開場18:30開始
東京・後楽園ホール
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■東京ドームで、熱い観客が全面的に応援してくれたことは、かなり非現実的な感覚だったね。もちろん最高の気分だったよ!
ELP ありがとう!(ニッコリ)
――新日本プロレスでは初のシングル王座の獲得ですね。ファンタズモ選手はシングルマッチを得意とする選手のように思えますが、じつは今まで獲得したタイトルはすべてタッグ王座でした。
ELP ウン。間違いなくそう言えるね。俺はキャリアの最初の15年間をカナダとイギリスでシングルプレイヤーとして過ごし、新日本プロレスでは、まずイシモリ(石森太二)とタッグを組んでやってきた。ヒクレオとも組んだけど、彼はイシモリとは正反対のタイプだった。俺がシングルマッチで戦うことができたのは、『SUPER Jr.』そして『G1 CLIMAX』だけだったから、シングルプレイヤーとしてのあり方を忘れかけていたんだ。でも、今はそこに集中しているよ。
ELP ああ、パンデミックの間は何か月も家の中にいなければならなかったが、その後、日本で初めて試合をすることになったんだ。しかも東京ドームで、さらにパンデミックが完全には収まっていないという異様な雰囲気の中、初めて日本のファンの前で試合をするという状況にとても緊張したのを覚えているよ。
――そして、4 WAYマッチとはいえ、今回初めて東京ドームでのシングルのタイトルマッチを大観衆の前でやるのはどんな気分でしたか?
ELP 2024年にいろいろなことを経験したあとで、生まれ変わった自分として新日本プロレスのリングに戻り、そして年間最大のショーでシングル王座を獲得した。それを熱い観客が全面的に応援してくれたことは、かなり非現実的な感覚だったね。もちろん最高の気分だったよ!
■検査の数日後、知らない番号から電話がかかってきて、いつもなら絶対にそのような着信には出ないのに、なぜか出てしまったんだ。
ELP そうだね。でも、東京ドームという大舞台のリングに立てただけでも、俺にとっては大きな収穫だったよ。去年の10月に自分が癌に侵されているという診断が出たとき、治るのであればどれくらいの期間がかかるのか? どれくらいの期間リングから離れることになるのか? そして癌は転移しているのか? 何もまったくわからなかったんだ。結論の出ないことがたくさんあったけど、自分が復帰する目標として常に『WRESTLE KINGDOM』が頭の中にあった。8時間のバス移動に慣れることも、長いツアーに帯同することも、すべて東京ドームを意識してのことだったんだ。
――あなたには明確な目標があったんですね。
ELP もしも、2月くらいに癌になったという診断を受けていたのであれば、何か具体的な目標に向かって進んでいこうとすることは難しかったんじゃないかなと思うよ。結局、昨年の10月29日に手術をして、「これから5~6週間は何もするな」と医者には言われたんだ。その2週間後にはジムに行くようになったけど。それが良いことだと言うつもりはないんだが、俺は東京ドームまでにはどうしても復帰したかったし、それを目指していたんだ。
――結果的には、すべてのプロセスがかなり速く進んだということですね。
――その電話で“重要な知らせ”を聞いた時、あなたはとても落ち着いていて、冷静だったようですね。
これが俺が悲嘆に暮れるような状態であれば、癌は俺のことをもっと苦しめたと思うんだよ。でも、俺は素直に受け入れた。去年、日本にいる友人が同じような経験をして、一緒に旅をしたんだ。精巣癌は20代の男性に多いと言われているので、俺が罹患した時期は比較的遅かったんだが、検査を受けることの大切さ、自分の身体をケアすることの大切さを学ばせてもらったよ……。
■タナハシと『WORLD TAG LEAGUE 2024』に出場することができなかったのは、大きな痛手だったよ。なぜなら……
ELP タナハシと『WORLD TAG LEAGUE 2024』に出場することができなかったのは、大きな痛手だったよ。なぜなら、彼と二人で同時にトップロープに登り、ハイフライフローやサンダーキス’86を一緒にやるイメージが、俺の頭の中にはあったんだ。
――それは見たかったですね。
――あなたが復帰したとき、棚橋選手はあなたにどんな言葉をかけてくれましたか?
ELP 休んでしまったことを謝ったら、「大丈夫だよ」と言ってくれて、元気な俺がリングに戻ってきたことを喜んでくれたよ、タナハシは満面の笑みで迎えてくれたんだ。新日本プロレスのみんなが歓迎してくれて、復帰初日はこの5年間の合計数よりもたくさんのハグをしてもらったよ。
ELP ああ、バーやレストランで自分が率先してお金を払うたびにね(笑)。どうしてこんなに早くそのような立場になったんだろう? でも、この5年、6年近くは本当にあっという間のことだったと思うよ。俺がここに来たばかりの頃は、まだショウタ(海野翔太)もツジ(辻陽太)もユウヤ(上村優也)もナリタ(成田蓮)もみんなヤングライオンズだった。
彼らが遠征に旅立っていく様子を目の当たりにしたし、ショウタがイギリスに遠征していたときにはそこでも試合をしたし、彼らが日本に戻ってきて、今は東京ドームのメインイベントで試合をやっている。彼らと一緒にツアーに出るのは不思議な感じもするけど、これは同時に自分自身の旅でもあるんだ。今、彼らの先輩の一人として俺が存在しているのは不思議な感じもするが、トップを目指す人たちの壁として立ちはだかれる存在でいることを楽しむだけさ。
■次回、後楽園ホールでジェフに勝つためには、俺はあらゆる手段を尽くさなければならない
ELP ジェフは文字通り、プロレスラーであろうとなかろうと、今までの人生で出会った人物の中で一番強い男なんだ。彼の持つ、人を翻弄するようなパワーは、今までに自分が経験したことのないレベルのものだからな。俺たちは12年前にバンクーバーでも試合をしたし、イギリス、アメリカ、そして東京ドームでも試合をした。俺たちのような対照的な試合スタイルが存在するからこそ、特別なものが生まれるんだ。
ELP 去年の夏の『G1 CLIMAX 34』ではジェフに俺は勝てなかったし、東京ドームでは、俺は直接、彼に勝つことができなかった。そしてサンノゼでも彼には勝てなかった。だから次回、後楽園ホールでジェフに勝つためには、俺はあらゆる手段を尽くさなければならない。
――コブ選手には後楽園にたくさんのファンがいますが、あなたにとっても後楽園での試合は事実上“ホームゲーム”となりますよね。
ELP ああ、そうだね。『BEST OF THE SUPER Jr.26』でのロッキー(・ロメロ)との試合、ロビー(・イーグルス)との試合、そして『G1 CLIMAX 34』のKONOSUKE TAKESHITAとの試合……、あの会場では自分のキャリアの中で最高の試合をしてきた。だが、2023年の『WORLD TAG LEAGUE 2023』以来、後楽園ではメインイベントの試合をやったことがないんだ。
ELP 通常、メインイベントではじっくりと時間をかけることができる。 ただ、今は15分以内にオリンピック選手を倒さなくてはならないスプリント戦もあるということだよな。
――前回の後楽園でのNJPW WORLD認定TV王座のタイトルマッチでは、ジェフ・コブ選手と辻陽太選手が15分のドローに終わりました。あなたは「ドローは負けに等しい」と言うと思いますが、制限時間内にどうやって決着をつける予定なのでしょうか?
ELP ジェフ・コブをあの時間内に倒すのは非常に難しい。持てる技術を総動員して、後楽園ホールのいつものメインイベントのような特別な雰囲気をみんなで作り上げ、一生に一度のパフォーマンスを見せなければならないと思ってるよ。
■友情が壊れたり、落ち込んだり、病気になったりして、自分が最悪だと感じるようなことがあっても、人は必ず立ち直ることができるんだ。
ELP ザックが王座に就いた1年間を振り返ってみてほしい。彼が行った試合は毎回違ったものになっていて、相手がジェフであれ、ナリタであれ、スピードボール(マイク・ベイリー選手)であれ、タナハシであれ、毎回マッチ・オブ・ザ・ナイト級の試合だったよな。 それが今の世界王者になる自信につながったんじゃないかな。
――初めてのシングルのベルトとして、このタイトルは自分にふさわしいものだと思いますか?
なぜなら、多くの人たちに自分自身を見せることができるし、無料でなければ観ることができないかもしれない人たちに新日本プロレスの戦いを見せることができる。NJPW WORLDは素晴らしいプラットフォームだよ。 その責任を負う立場にしてもらえていることには感謝している。
ELP そうだね。まず、人生で問題を抱えている人たちに勇気を与えられるような存在になりたい。友情が壊れたり、落ち込んだり、病気になったりして、自分が最悪だと感じるようなことがあっても、人は必ず立ち直ることができるんだ。物事は一晩で変えられる。俺の2024年は、ずっと下り坂を下っている1年に思えたが、今は逆にピークを迎えてこれまでで最高の状態になっているよ!
(了)
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