連載:今を輝くプロ野球選手の高校時代

今を輝くプロ野球選手たちの高校時代【ロッテ編】 2年春に全国制した左腕と甲子園にアーチを架けた男たち

三和直樹

最強世代の一人である藤原(ロッテ)は大舞台での勝負強さが光った 【写真は共同】

 第105回目を数える夏の甲子園大会へ向けて、高校球児たちがすでに熱い戦いを繰り広げている。今回は彼らの「先輩」であるプロ選手たちの高校時代にスポットライトを当てる。
 セ・パ12球団別に選手3名ずつをピックアップし、甲子園での活躍を振り返りたい。今回はロッテ編だ。今をときめくスター選手の高校時代を振り返るとともに、ぜひ先輩たちの後を追いかける高校球児の活躍もチェックしてほしい。

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藤原恭大:大阪桐蔭(大阪)

 高卒5年目の今季、中堅手のレギュラーを獲得した男は、高校時代に“最強世代”の一員として甲子園で暴れ回った。

 中学時代、枚方ボーイズで小園海斗(現広島)らとともに全国優勝を果たした能力は、大阪桐蔭でもすぐに認められて1年夏からセンターの定位置を掴んだ。そして2017年春のセンバツ大会で甲子園デビュー。走攻守において高いレベルのプレーを披露し、大阪対決となった安田尚憲(現ロッテ)擁する履正社との決勝戦では2本塁打&猛打賞の活躍で優勝に貢献した。

 そして翌2018年、4番打者として春夏連続で甲子園に出場し、春は5試合22打数8安打の打率.364、0本塁打、7打点、夏は26打数12安打の打率.462、3本塁打、11打点の活躍で春夏連続での甲子園制覇に貢献した。準々決勝の浦和学院(埼玉)戦で渡邉勇太朗(現西武)のストレートをスタンドに放り込めば、吉田輝星(現日本ハム)を擁した金足農(秋田)と対戦した夏の決勝戦で2塁打2本の3安打2打点をマークした。

 自身が3度立った甲子園の決勝舞台では、打率.571、2本塁打、5打点の大暴れ。根尾昂(現中日)、柿木蓮(現日本ハム)、横川凱(現巨人)らが揃って「最強世代」と呼ばれたチームの中でも、この男の勝負強さは際立っていた。

 U-18侍ジャパンにも2年時、3年時と2年連続で選ばれ、2年時は「1番・ライト」、3年時は「4番・センター」で出場して世代を代表するスター選手であることを証明し、プロ入り後の「トリプルスリー達成」を期待させる能力を見せていた。その意味では、今以上の活躍を今後、期待したいところだ。

 今年の大阪桐蔭も甲子園優勝候補に挙げられるほど戦力は充実しているが、まずは激戦の大阪大会を勝ち抜く必要がある。他府県で強豪校が次々と敗れる波乱が相次いでいる中、彼らの大阪での戦いにも注目が集まる。

小島和哉:浦和学院(埼玉)

 安定したピッチングですっかり先発ローテーションに定着している左腕は、高校2年だった2013年春のセンバツ大会で優勝投手となった。

 タフでクレバー、完成度の高さが光っていた。1年夏からベンチ入りして公式戦のマウンドも経験。1年秋に早くも主戦投手となると、関東大会では前橋育英(群馬)の髙橋光成(現西武)にも投げ勝って優勝に貢献し、早くも注目される存在となった。

 迎えた2年春、初戦の土佐(高知)戦で9回6安打完封劇を披露すると、続く山形中央(山形)戦でも8回4安打1失点の好投。さらに準々決勝の北照(北海道)戦では7回1安打無失点、準決勝の敦賀気比(福井)でも9回5安打1失点と、常に最少失点以下に抑えて決勝進出の原動力となった。

 決勝戦は、同じ2年生エースだった安樂智大(現楽天)を擁する済美(愛媛)との対戦だった。「剛」の安樂に対して「柔」の小島。結果は9回8安打1失点の小島に軍配が上がり、浦和学院が17対1で勝利して同校初の全国制覇を成し遂げた。この大会では安樂が投じた「772球」がその後の高校球界の球数制限に繋がったが、小島も5試合で計580球を投じ、その中で防御率0.64(42イニング、自責3)の快投劇を演じたのだった。

 ただ、2年夏は埼玉県大会で完全試合を達成したが、甲子園では初戦で上林誠知(現ソフトバンク)、熊谷敬宥(現阪神)らを擁した仙台育英(宮城)打線につかまって9回途中11失点(自責8)を喫し、10対11のサヨナラ負け。そして3年時は、県大会で早期敗退が続いて甲子園舞台にたどり着くことはできなかった。それでも早稲田大でエースとなって心身ともにひと回り成長し、プロの舞台でもしっかりと実績を残している。

 浦和学院は1991年の就任からチームを育て上げてきた森士監督が2021年夏の甲子園を最後に退任し、長男の森大新監督の下で再出発。2022年春には甲子園4強入りを果たした。今夏も2回戦、3回戦と順当に勝利し、7月21日に4回戦を戦う予定となっている。

平沢大河:仙台育英(宮城)

 傑出した打撃センスを発揮し、甲子園に3本のアーチを架けた。

 名門・仙台育英で1年秋からショートのレギュラーを奪取し、同学年のエース・佐藤世那(元オリックス)、捕手・郡司裕也(現日本ハム)が揃った中でチームをけん引し、2年秋の明治神宮大会では決勝の浦和学院(埼玉)戦で2ランを放って優勝に貢献した。

 甲子園には2015年に春夏連続で出場し、主将としてチームを引っ張った。春は初戦で神村学園(鹿児島)に12対0の大勝発進も、続く2回戦でエース・平沼翔太(現西武)を擁した敦賀気比(福井)に1対2で敗れて不完全燃焼。だが夏は、明豊(大分)、滝川二(兵庫)、花巻東(宮城)、秋田商(秋田)を下して勝ち上がり、準決勝では清宮幸太郎(現日本ハム)が1年生で3番に座っていた早稲田実(西東京)と対戦し、4回の第3打席で自身大会3本目の本塁打となる3ランを放って7対0の大勝を収めた。

 決勝戦の相手は東海大相模(神奈川)だった。東北勢初の優勝という大きな期待を背負ったが、6対10で頂点には届かず。自身は相手エース左腕・小笠原慎之介(現中日)から2安打を放ったが、最後の最後で涙を飲むことになった。

 平沢が果たせなかった“夢”は、後輩たちが2022年夏に叶え、悲願の「白河越え」を達成した。夏連覇の期待がかかる今夏の仙台育英は、7月20日の県大会準々決勝でライバル東北と激突する。
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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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