セ・パ「新人王レース」を“中間査定” ハイレベルな争いをリードするのは!?

三和直樹

大卒3年目の村上(阪神)が安定感抜群のピッチングで開幕から白星を重ねた 【写真は共同】

 2023年のプロ野球は、セ・パ交流戦(延期分の1試合を除く)を終えてペナントレースの約5分の2を消化した。今季も“新たな発見”が多くあった中で、毎年注目の「新人王レース」は、昨年に引き続いて両リーグともにハイレベルな争いとなっている。

 新人王の有資格者は、支配下登録されてから5年以内(海外のプロ野球リーグ経験者を除く)で、前年までに1軍で、投手は「30イニング以内」、野手は「60打席以内」の選手となっている。リーグ戦が再開する前に、今季の“新人王候補”たちをセ・パ両リーグの投打別に整理したい。(※成績は6月19日終了時点)

抜群の制球力を誇示する右腕が筆頭候補

 セ・リーグの投手では、大卒3年目の村上頌樹(阪神)の活躍ぶりが最も目立っている。昨季ウエスタンで投手2冠を獲得したピッチングを今季、1軍舞台でもそのまま展開し、ここまで10試合(先発9試合)に登板して5勝3敗、防御率1.75の好成績を残している。

 武器は制球力だ。今季67イニングを投げて6四球のみ。奪三振率と与四球率の比率で求める投手指標K/BBは両リーグ断トツの11.50を誇り、これは田中将大や上原浩治らの記録を上回る歴代最高数値となっている。智弁学園高時代から甲子園の大舞台で見せ付けていた投球術、そして強心臓ぶりも魅力だ。直近2試合で2連敗したが、ともに8回まで投げており、安定感は失われていない。

 その村上を追うのが、高卒5年目左腕の横川凱(巨人)だ。2018年に甲子園春夏連覇を果たした大阪桐蔭のメンバー。プロ入りした4人の中では最も目立たない存在だったが、身長190センチと長いリーチから投げ下ろすボールを武器に今季は先発ローテ入りを果たし、ここまで11試合(先発10試合)に登板して3勝4敗、防御率3.47の成績を残している。2ケタ勝利を到達できれば、村上を逆転できる可能性はある。

 その他では、社会人出身でプロ1年目のドラフト1位右腕・吉村貢司郎(ヤクルト)が、今季8試合に先発して2勝1敗、防御率4.54という成績。オープン戦で好投して開幕前は新人王候補No. 1にも推されていたが、現状は期待値を上回る働きを見せることはできていない。同じく開幕前に期待の声が多く上がっていた小園健太(DeNA)、仲地礼亜(中日)は2軍暮らし。育成出身で支配下2年目の左腕・石川達也(DeNA)が1軍で中継ぎ11試合に登板して防御率2.25をマークしているが、新人王を争うには物足りない。

覚醒中の“シン・ゴジラ”

高卒3年目でブレイク中の秋広(巨人)。リーグ戦再開後も爆発を続けられるか 【写真は共同】

 セ・リーグの野手では、文句なしで高卒3年目の秋広優人(巨人)が新人王の有力候補になる。

 二松学舎大付高からドラフト5位でプロ入りした秋広。身長2メートルの体格から“大器”として期待されてきた中で、今季は4月下旬からスタメンの座をつかみ、5月下旬からは3番打者として出場。鍛え上げてきた打撃技術を発揮しながら、ここまで47試合に出場して打率.321、51安打、4本塁打、18打点をマークし、外野守備でも好プレーを披露している。現段階で規定打席には30打席足りないが、リーグ戦再開後もスタメン出場を重ねればクリアできる。2ケタ勝利を挙げる投手が出現した場合、打率3割、2ケタ本塁打が新人王獲得への条件になるだろうが、達成は十分に可能だ。

 社会人出身のプロ1年目内野手・福永裕基(中日)も奮闘している。ドラフト7位指名での入団ながらキャンプ、オープン戦で評価を高めると、開幕後も主にセカンドで54試合に出場して打率.286、2本塁打、13打点をマークしている。チームメイトで二遊間の定位置を争うライバルでもある大卒ルーキーの村松開人(中日)も1軍で出番を得ているが、43試合出場で打率.236、1本塁打、12打点と数字的にはまだ物足りない。

 その他、オープン戦で絶好調だった森下翔太(阪神)は、プロの壁にぶち当たる形で22試合出場、打率.167、0本塁打、7打点と成績が振るわず。同じく注目度の高かった高卒1年目の浅野翔吾(巨人)は2軍で英才教育中だ。大卒1年目の門脇誠(巨人)、高卒4年目の武岡龍世(ヤクルト)、大卒2年目のブライト健太(中日)といった選手たちも、まだ数字が付いてきていない。その中で、交流戦での1軍デビューから安打を量産した高卒2年目・前川右京(阪神)の追い上げがあるかも知れない。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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