セ・パ「新人王レース」を“中間査定” ハイレベルな争いをリードするのは!?

三和直樹

剛速球を投じる新たな“怪物右腕”

高卒3年目の山下(オリックス)が圧巻のピッチングを継続中。早くも6勝目を挙げて新人王レースの先頭に立つ 【写真は共同】

 パ・リーグの投手では、高卒3年目の山下舜平大(オリックス)が大きなインパクトを残している。ドラフト1位入団からプロ1年目、2年目とファームでしっかりと土台を作ると、3年目の今季は開幕投手として6回途中1失点と堂々の1軍デビューを飾り、登板2試合目からは圧巻の5連勝。今季ここまで9試合に先発して、6勝1敗、防御率1.51の好成績を残している。現時点で規定投球回に11回1/3イニング足りないが、故障することなく先発ローテを守り続けることができれば、新人王レースでトップを走り続けることができるはずだ。

 新人王有資格者の中で山下に次ぐ勝ち星を挙げているのは、高卒3年目の内星龍(楽天)で、救援で23試合に登板して3勝1敗4ホールド、防御率3.47という成績を残している。その他の投手たちは1勝止まりで、山下に太刀打ちできる状況にない。WBCに参戦した宇田川優希(オリックス)も新人王の資格を持ち、今季も中継ぎで11試合に登板して0勝0敗7ホールド、防御率1.86の好成績を残しているが、少なくとも昨季(19試合2勝1敗3ホールド、防御率0.81)を明らかに上回る成績とインパクトを残す必要があるだろう。

 一方、開幕前に新人王の有力候補に挙げられていた大卒ルーキー左腕の曽谷龍平(オリックス)は、ここまで5試合(先発2試合)で0勝2敗、防御率7.20と苦しんでいる。同じく期待の大きかった大卒ドラフト1位の荘司康誠(楽天)も、7試合に先発するも0勝3敗、防御率3.66とプロ初勝利が遠い。ただ、5月28日の日本ハム戦で9回を3安打2失点に抑えるなど、能力の高さは証明済み。味方打線の援護とともに波に乗ることができれば、山下の対抗馬に名乗りを上げることができるかもしれない。

 その他では、社会人出身ルーキー・大津亮介(ソフトバンク)が、中継ぎで26試合に登板して1勝0敗10ホールド、防御率2.78の好成績を収めており、大卒ルーキーの青山美夏人(西武)も20試合に登板して0勝0敗1ホールド2セーブ、防御率3.52と奮闘しているが、中継ぎでの新人王受賞はどうしてもハードルが高くなる。

新風を吹き込んだ「逆輸入」と「育成」のルーキー

鮮烈なNPBデビューを飾った加藤(日本ハム)だが、6月中旬以降は下降線。ここから巻き返せるか 【写真は共同】

 パ・リーグの野手では、2人のルーキーが話題を集めている。

 まずは、加藤豪将(日本ハム)だ。日本人の両親のもとアメリカで生まれ、2022年にメジャーデビューを飾った28歳。昨秋のドラフトで2位指名を受けてNPB入りし、特例で新人王の資格を持っている。故障で出遅れたNPB初年度となったが、5月25日の1軍デビューから10試合連続安打、2打席連続本塁打など、快音連発の日々を過ごした。しかし、6月13日以降は安打が生まれず、ここまで20試合出場で打率.278、4本塁打、10打点の成績となっている。リーグ戦再開とともに復調できるかどうか。

 2人目が、茶野篤政(オリックス)だ。名古屋商科大から独立リーグを経て育成契約でプロ入りした苦労人ルーキーは、春季キャンプから猛アピールを続けてシーズン開幕前に支配下登録を勝ち取ると、いきなり開幕戦にスタメン出場を果たした。その後、打順を1番に上げながら出場を続け、ここまで61試合に出場して打率.267、1本塁打、19打点、6盗塁の成績を残している。ただ、チームメイトの投手の“派手な活躍”を考えると、少なくとも打率3割クリアが新人王獲得のためには外せない条件になる。

 その他では、大卒1年目の友杉篤輝(ロッテ)が二遊間で安定した守備を見せながら26試合に出場して打率.264、0本塁打、7打点で6盗塁をマーク。大卒2年目の池田来翔(ロッテ)は25試合で打率.316、2本塁打、7打点と自慢の打撃でアピールしているが、今後どこまで出場機会を増やせるかが鍵になる。また、新たな二刀流選手として注目されている矢澤宏太(日本ハム)は、投手として2試合に救援登板しながら野手として33試合に出場しているが、打率.184、1本塁打、4打点とインパクトを残せていない。プロの水に慣れた夏場以降の爆発に期待したいところだ。

 昨季の新人王投票は、セ・リーグ1位が大勢(巨人)で209票、2位が湯浅京己(阪神)で74票、3位が長岡秀樹(ヤクルト)で7票。パ・リーグは1位が水上由伸(西武)で177票、2位が阿部翔太(オリックス)で58票、3位が大関友久(ソフトバンク)で10票だった。

 果たして今季、一生に一度しか獲ることができない「新人王」のタイトルを誰が、どのような形で受賞するのか。シーズンはまだ、5分の3が残されている。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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