熱戦開幕! プロ野球2023

新人王の最右翼は社会人No.1右腕 識者のセ・リーグ「ルーキー即戦力ランキング」

西尾典文

今季もルーキーがキャンプ、オープン戦で躍動している。ヤクルトのドラ1右腕・吉村貢司郎もそのひとり。オープン戦では4試合に登板し、14イニングを投げ防御率0.00をキープ。即戦力右腕として大きな期待がかかる 【写真は共同】

 今年も多くのルーキーが注目を集めている。昨年は大勢(巨人1位)が抑えに定着して見事新人王を獲得したが、それ以外の選手を見てみると、セ・リーグでは松本竜也(広島5位)、パ・リーグでは北山亘基(日本ハム8位)、上川畑大悟(日本ハム9位)、野村勇(ソフトバンク4位)など、下位で入団した選手の活躍が目立った。

 そこで、本稿ではドラフトの順位に関係なく即戦力として期待できるセ・リーグのルーキーを、アマチュア野球に精通したスポーツジャーナリストの西尾典文氏がランキング形式で紹介していく。(※オープン戦の成績は3月19日終了時点)

1位:吉村貢司郎(東芝→ヤクルト1位/投手)

 社会人ナンバーワンの呼び声高い右腕。大学時代は故障も多く、スピードはありながらも不安定な投球が目立ったが、社会人で上半身の力を上手く抜くフォームを身につけたことでストレートも変化球も大きくレベルアップした。昨年は夏場に少し調子を落としたものの、秋には復調し日本シリーズを控えたヤクルトとの練習試合でも見事な投球を見せて、ドラフト1位を勝ち取った。オープン戦でもここまで順調な調整を見せており、開幕ローテーション入りの可能性は高い。セ・リーグ新人王の最有力候補となりそうだ。

2位:船迫大雅(西濃運輸→巨人5位/投手)

 リリーフタイプの本格派サイドスロー。聖光学院高、東日本国際大ではまとまりのある好投手という印象だったが、社会人では年々スピードアップし、ストレートは150キロを超えるまでになった。跳ねるような躍動感あふれるフォームで、高めも低めもホップするような勢いがある。スライダー、シンカーと対になるボールをしっかり操れるのも大きい。オープン戦初登板となった3月11日のオリックス戦では4失点というほろ苦いデビューとなったが、続く14日のソフトバンク戦では走者を背負った場面から登板し、見事に無失点に抑えている。チームは昨年リリーフ陣が不安定だっただけに、1年目からブルペンの一角に食い込みたいところだ。

3位:田中幹也(亜細亜大→中日6位/内野手)

 圧倒的なスピード溢れるプレーが持ち味の内野手。亜細亜大では潰瘍性大腸炎で離脱した時期はあったものの、4年春には鮮やかに復活し、チームを大学日本一に導いた。小柄だがその動きは“動物的”と形容したくなるほどの素早さがあり、守備範囲の広さと隙を突いて次の塁を奪う走塁は、既に一軍でもトップレベルにある。侍ジャパンとの壮行試合でも度々持ち味を発揮して評価を上げた。非力な打撃と体力面は不安要素だが、二遊間が手薄なチームだけに1年目から一軍の戦力として期待は高い。

※本稿執筆後の3月19日、楽天戦で右肩を脱臼。開幕戦での出場は厳しい状況となったが、早期復帰が期待される。

4位:門脇誠(創価大→巨人4位/内野手)

巨人の門脇誠はオープン戦で打率.235、8安打をマーク。ポスト坂本の期待がかかる 【写真は共同】

 ポスト坂本の期待がかかる強打のショート。フットワークとグラブさばきは素晴らしいものがあり、投手として145キロを超えるスピードを誇る強肩も魅力だ。上背はないものの、体つきはしっかりしており、パンチ力も備えている。また、高校1年春から大学4年秋まで公式戦全試合フルイニング出場を果たした体の強さも大きな長所で、原辰徳監督からも「ストロング」という愛称を命名されている。坂本勇人がここ数年離脱することが多く、セカンドの吉川尚輝も故障が多いだけに、いきなり二遊間のポジションを奪う可能性もありそうだ。

5位:益田武尚(東京ガス→広島3位/投手)

 150キロを超えるストレートと多彩な変化球を操る、社会人を代表する右腕。昨年の都市対抗では惜しくも決勝で敗れたものの、開幕戦では5安打完封とさすがの投球を見せた。スピードが取り上げられることが多いが、カーブ、スライダー、カットボール、スプリット、チェンジアップなど多くの球種を駆使して的を絞らせない投球が持ち味。中盤以降もスピードが落ちないスタミナも魅力だ。3月11日のヤクルト戦では先発として3回をパーフェクトと素晴らしいピッチングを見せており、開幕ローテーションに入ってくる可能性もありそうだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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