連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が取り組む球界への恩返し「いろんなスポーツも楽しもう」

工藤公康

野球教室で子どもたちを指導する工藤氏。野球界の未来のためにどんな取り組みが必要なのだろうか 【写真提供:工藤事務所】

 現役通算224勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。最終回となる今回は、「遊び」から多くのことを学んだ自身の少年時代を振り返りながら、野球以外のスポーツに親しむことの重要性について考えます。そして工藤氏が野球をはじめスポーツ界の未来のために、どんなことを考え、取り組もうとしているのか、そのビジョンについて語ります。

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「遊び」から学んだ体の使い方

工藤氏の代名詞である落差のあるカーブ。その原点とは? 【写真は共同】

「カーブはどうやって覚えましたか? どうやって投げていますか?」

 この質問は、私がよく聞かれる質問の1つです。

 実は私は、カーブを誰かから教わったという記憶はほとんどありません。父親に変化球を投げてみたいと言ったところ、変化球の握りと投げ方が書いてある本を渡され、その握りで書かれているように投げたら、カーブの軌道になったというところが始まりです。

 見たことを一回で理解して自分のものにできるほど、器用な人間ではありません。そんな私が、どうしてカーブをすぐに投げることができたのか?

 その理由は、当時の私たちの“遊び”にあったと思います。

 私が子どものころ、近所の子たちと集まって、“メンコ”や“コマ回し”をよくしていました。このメンコ遊びとコマ回しですが、対戦相手に負けてしまうと、自分の持っているコマやメンコが相手に取られてしまう決まりがありました。家があまり裕福でなかった私は、コマやメンコはめったに買ってもらえなかったので、たとえ遊びであっても、1戦1戦が絶対に負けられない戦いだったのです。

 そんな状況ということもあって、私はというと、どうすれば強くメンコを叩きつけることができるのか、どうすれば相手のメンコをひっくり返すことができるのか、どうすれば強くコマを回すことができるのか、子どもながらに研究し、考えてきました。

 その結果、自然と手首の使い方や、コマを強く回すために必要な動きなどが自分の身体に刷り込まれていったのだと思います。当時はまったく意識もしていませんでしたし、理解もしていませんでした。今思えば、そういった遊びの中で養われた力を入れるタイミングや手首の使い方などが、カーブを投げる際の動きと非常にマッチしていたのではないかと思っています。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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