工藤公康は侍ジャパンWBC優勝に何を感じたか 心を震わせた監督・選手たちの「利他の心」
侍ジャパン優勝の瞬間、工藤氏はどんな思いが込み上げてきたのだろうか? 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
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流れを作ったダルビッシュの献身性
「チームを一つにする」というダルビッシュの想いが1次リーグの良い流れにつながったと工藤氏は見ている 【Photo by Daniel Shirey/WBCI/MLB Photos via Getty Images】
1次ラウンド初戦の中国戦でとても良い勝ち方ができました。この勝利が、その後のチームの雰囲気や流れにつながっていきました。この試合のきっかけを作ってくれたのは、1回に先頭打者で初球を打って出塁したラーズ・ヌートバー選手。この先頭打者の初球のヒットで、チームが「さあ! 行くぞ!」という雰囲気になりました。
投手の立ち上がりの場面で初球をヒットにしたことで、中国の投手に気持ちの動揺が見られ、その後の近藤健介選手、大谷翔平選手、村上宗隆選手の連続四球につながったのではないでしょうか。結局この中国戦では、序盤に流れをつかんだ日本の雰囲気もあって、終始日本ペースで試合を進めることができました。
この勝ち方が、次戦の韓国戦にも大きく影響を与えたと私は試合を見て感じました。韓国戦では、3点を先制されましたが、チームとしては「さあ! ここから反撃するぞ!」という雰囲気をすぐに作り出すことができていました。韓国はというと、1戦目のオーストラリアに敗れてしまったことで、「もう負けられない! 勝たなければいけない!」というプレッシャーのかかる状況でした。投手心理からみても、3点を先制してもらったことで、「この点数を絶対に守らなければいけない!」という過度の緊張にもつながっていたと思います。
1戦目の中国戦で勢いに乗って勝つことができた日本ベンチは、たとえ3点を取られても、むしろ「ここから! なんとかするぞ!」という雰囲気。一方で、初戦にオーストラリアに敗れて後がない韓国は、バッテリーとしても、「この3点を絶対に守らなければ!」という雰囲気でした。3点を取ってもらったからこそ、「ここから抑えなければいけない!」「良いところに投げなければ!」「甘いところに投げてはいけない!」というプレッシャーを感じてしまったように見えました。
1戦目に勝つか負けるか、どういった勝ち方をするか、相手の状況や心理をどう読み解くか、これが2戦目以降にも大きく左右し、逆転劇を生む要因にもなったと思います。
この良い流れができたのは、チームを一つにするために率先して動いてくれたダルビッシュ投手の取り組みがあってこそだと感じています。まさに1次ラウンドというのは、そんな彼の想いが表れた試合でした。1次ラウンドのスタートダッシュ、チームとしての雰囲気や形があったからこそ、その後の準々決勝、準決勝、決勝にも、少なからずつながった部分があったと思います。