1分1敗で終わったU-22の欧州遠征で見えたこと 露呈した懸念材料と、可能性を示した選手たち

松尾祐希

欧州の強豪との連戦で、若き日本代表は課題を突き付けられた(写真右はベルギー戦の藤田) 【Photo by Eric Verhoeven/Soccrates/Getty Images】

スコアは善戦、しかし…

 一言で言えば、世界で戦うにはあまりにも不安が残る内容だった。

 3月19日から28日に掛けて、サッカーU-22日本代表が欧州遠征を実施した。このチームがヨーロッパに乗り込んで戦うのは3度目。今回は24日にフランクフルトでドイツ、27日にスペインのピナタルでベルギーと対戦し、前者は2−2で引き分け、後者は2−3で敗れた。スコアだけを見れば、善戦したようにも見える。しかし、現地で取材した実感として、内容的には厳しいものだったと言わざるをえない。

 ブンデスリーガで活躍する選手を揃えたドイツに対しては、序盤から主導権を握られる展開になった。1-1で迎えた後半開始早々には相手のミスを突き、佐藤の折り返しからFW細谷真大(柏)が勝ち越し点をゲット。だが、直後に日本の左サイドを崩されて追い付かれてしまう。後半はインサイドハーフの山本理仁(G大阪)が最終ラインを助けながら前にボールを付け、前半に比べてスムーズにボールが回るようになった。2列目の鈴木唯人(ストラスブール)や前半に得点を決めた左ウイングの佐藤恵允(明治大)が積極的に仕掛け、チャンスになりそうな場面もあった。しかし得点には結びつかず、結果は2−2のドロー。球際では激しく戦った点はプラスの材料で、大岩剛監督は「ボールを支配するところはチャレンジする姿勢が見える」と総括している。とはいえ、90分を通して見れば、ドイツの試合だった。

ベルギー戦で後手を踏んだ理由

 スペインに移動して行われた27日のベルギー戦は、ドイツ戦から7名の選手を入れ替えて臨んだ。初招集となった右SB中村拓海(横浜FC)や昨年3月の候補合宿以来の招集となった平岡大陽(湘南)、大岩ジャパンでは初スタメンとなるFW木村勇大(京都)などがスタートから出場し、気持ちを新たに欧州の強豪国を迎え撃った。しかし、またしても厳しい現実に直面する。

 4−3−3でスタートした日本は立ち上がりから後手を踏んだ。3−4−2−1を採用したベルギーと立ち位置が噛み合わず、ミスマッチが各所で起こる。とりわけ大きな歪みになったのが、日本の右サイドだった。1トップに対しては西尾隆矢(C大阪)が対応し、シャドーには鈴木海音がマークに付いた。そうすると、もう1人のシャドーが宙に浮くため、中村が相手の左ウイングバックを含めて1人で2人をチェックする不自然な状態となった。

 日本の左サイドで攻撃を作られると、一気に逆サイドに振られた時に枚数が足りなくなる場面が散見。何度も突破を許し、ヒヤリとするシーンが見られた。さらにこの日は技術的なミスが目立ち、前半の2失点はいずれも中途半端なボールロストから。あまりにも上手くいかず、試合途中に大岩監督がベンチの屋根を叩くシーンが見られたほどだ。

 日本は32分に中村を下げ、内野貴史(デュッセルドルフ)を投入する。守備を得意とする選手をピッチに送り込み、ゲームの再構築を試みた。だが、改善を図るまでには至らない。そこで大岩監督は後半開始から4−3−3から3−4−2−1に移行し、相手のシステムに噛み合うような配置に変更。しかし、相手はハーフタイム後から4−3−3にフォーメーションを変えてきた。そこで日本はマンツーマンで対応し、ミスマッチが起きないような立ち位置をとる。その効果は顕著に表れ、相手が途中で4−4−2に変更しても柔軟に対応でき、中盤でボールを奪う回数が増えた。

 54分にはドイツ戦と同じくCKから佐藤がネットを揺らすと、64分には山本のパスカットから藤田譲瑠チマ(横浜FM)からつなぎ、最後は鈴木唯が同点ゴールを決めた。しかし、終盤に不用意なパスミスから失点し、遠征ラストマッチは2−3で競り負けてしまった。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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