日本代表再始動を前に森保監督が語る青写真と新コーチへの期待「戦術オプション」「プレーモデル」…菅原由勢、中村敬斗ら新戦力の招集も?

飯尾篤史

日本サッカー史上初めてW杯後に契約を延長した森保監督。26年北中米W杯でベスト8以上を目指す戦いが、3月24日のウルグアイ戦から始まる 【Getty Images】

カタールW杯から約3カ月、日本代表がいよいよ再始動する。3月15日のメンバー発表を前に森保一監督は今、何を思うのか――。チーム作りの構想や新コーチングスタッフへの期待……。第2期森保ジャパンの3つの焦点とは?

「敬斗は強さと逞しさを身につけている」

G大阪からトゥウェンテ、シント=トロイデン、FCジュニアーズと渡り歩いた中村は今季、オーストリアのLASKリンツで大ブレイク 【Photo by Guenther Iby/SEPA.Media /Getty Images】

 カタールW杯メンバーによる“凱旋マッチ”にはならないようだ。東京・大阪で開催される3月24日のウルグアイ戦、27日のコロンビア戦のことである。

 3月15日に予定される日本代表メンバー発表会見に先駆けて、森保一監督はきっぱりと言った。

「メンバーは(W杯と同じ)26人で考えています。カタールW杯を戦ったコアなメンバーはもちろんですが、新戦力やカタールW杯で選外となった選手も加え、選手個々のレベルアップも考えながら、選考したいと思っています」

 森保監督は1月末から2月半ばまで欧州視察を敢行した。

 W杯メンバーである浅野拓磨、田中碧、吉田麻也、遠藤航、伊藤洋輝、鎌田大地、川島永嗣に加え、原口元気、長谷部誠、パリ五輪世代の鈴木唯人と会ったことを2月8日のオンライン囲みの場で明かしていたが、その後、2月10日には菅原由勢が所属するオランダのAZの試合も視察したという。

「由勢はチーム内での立ち位置が明らかに変わったなと感じました。以前はレギュラーの座を取るために戦っていましたけど、今はチームの中心選手として信頼されながらプレーしている」

 現在22歳の菅原は東京五輪世代。オリンピックメンバーからは漏れたものの、最後の選考合宿まで招集されていた選手である。菅原が本職とする右サイドバックは酒井宏樹が32歳、山根視来が29歳と、W杯メンバーの年齢が高い。若い選手の突き上げが必要とされるポジションだから、3月シリーズのメンバーに菅原が入っていてもおかしくない。

 さらに指揮官は、同じく東京五輪世代の選手の名前も口にした。オーストリアのLASKリンツでゴールを量産する22歳の中村敬斗である。

「敬斗は東京五輪世代の海外遠征で招集したことがありますが、欧州の強度の中でも戦っていける強さと逞しさを身につけている。ゴールも今、14得点ですよね。得点感覚やゴールに向かっていく姿勢に磨きが掛かっていると思います。残念ながら見に行けませんでしたが、今後も追っていきたいと思っています」

 実際に彼らが選出されるかどうかは15日のお楽しみだが、W杯から数人のメンバーが入れ替わることは確実だろう。

森保監督が言及した名波、前田両コーチへの期待

日本代表として98年フランスW杯に出場し、磐田や松本を率いた名波氏がコーチに就任。デザインされた攻撃を構築することが期待される 【(C)J.LEAGUE】

 変わるのは選手だけではない。すでにコーチングスタッフには大きな変化があった。

 分業制を敷く森保体制において、攻撃面を担当してきた横内昭展コーチと上野優作コーチが今季からJクラブの監督に転身したからだ。

 日本代表監督の契約延長が発表された昨年12月29日の記者会見の時点では新コーチが決まっていなかったが、森保監督は新コーチへの期待をこんなふうに話していた。

「速攻であれ、遅攻であれ、我々がボールを奪って、そこからボールを握りながらゲームをコントロールする。ゲームを決めに行けるようにしないといけないと思っています。こうしたことを具現化できるコーチに来てもらえればと思っています」

 こうして新たに招聘されたのが、ジュビロ磐田や松本山雅を率いた経験のある名波浩コーチと、磐田U-18のスタッフだった前田遼一コーチである。彼らはすでにJリーグの試合を視察し、スタッフミーティングに参加している。

 森保監督がふたりの新コーチへの期待について、改めて言葉にする。

「攻撃の部分を任せるという点では、横内さん、上野コーチと同じことが言えますが、やれることは違ってくると思うので、いったんスタートしてから変化を付けていきたい。我々の戦術的なコンセプトや考え方は、ひと通りは伝えていますが、名波コーチにも、前田コーチにも、ふたりが入ってきたことがより生かされる形でやっていきたいと伝えています。

 ふたりには客観的に見た代表チームの良かったところ、自分たちが入ったらどこを改善したいかを伝えてもらいました。なので、これまでのレールに乗ってもらうというよりも、これまでのことを伝えるのは最小限にして、彼らにはチームに対していろいろ働きかけをしてほしいと思っています」

 特に、攻撃の構築がメインタスクとなる名波コーチに懸かる期待は大きい。

 カタールW杯終了後、選手たちは一様に3年半後の北中米W杯に向けての最重要課題を口にした。

「攻撃をデザインする力が必要だと感じました。日本サッカーが向上して強豪国を相手に戦っていくには、相手にアジャストするだけではなく、自分たちから行動していく必要があると思います」(守田英正)

「今回はこのやり方で自分たちが目指しているところまで辿り着けそうでしたけど、その先に行こうとしたら、もっとポゼッションができないとダメだと思う」(鎌田大地)

「今後は守備的な戦いではなく、攻撃的にサッカーをしていくことが必要だな、ということはみなさんも感じていると思いますし、選手も感じていることです」(三笘薫)

 第二期森保ジャパンは北中米W杯までの3年半で、相手を見て立ち位置を取り、再現性のある攻撃を繰り出せるようになれるのか――。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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