松木玖生ら擁するU-20代表がW杯出場に王手 不安を抱えたチームがGSを首位突破できた理由

松尾祐希

グループステージで、若き日本代表は出場国中唯一の全勝を果たした 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 今年5月20日に開幕するFIFA U-20ワールドカップの出場を目指し、若き日本代表がウズベキスタンの地で奮戦を続けている。最終予選を兼ねたAFC U20アジアカップは3月1日に開幕し、冨樫剛一監督が率いるU-20日本代表はグループステージを首位で通過。上位4カ国に与えられる出場権の獲得まであと1勝とし、12日にヨルダンとの準々決勝に臨む。

 グループステージは参加した16カ国中唯一の3戦全勝。7得点・2失点の好成績だったが、振り返ってみると、簡単な試合は一つもなかった。では、何故U-20日本代表は3連勝を果たせたのだろうか。

コロナ禍がU-20代表に与えた影響

 大会前、チームは不安要素だらけだった。過去のU-20日本代表であれば、最上級生の世代を中心に強化し、1学年下の選手もU-17ワールドカップを経験した上でチームに合流してきた。だが、今大会に挑んでいる面々は高校1年次や中学3年次に新型コロナウイルスの感染拡大によって活動を制限されてきた世代。2021年に開催される予定だったU-17ワールドカップも中止になるなど、伸び盛りの時期に経験を積む機会を奪われた。代表の活動も国内合宿が中心。一昨年までは海を渡る機会がなく、今までの世代と比較し、圧倒的に経験値が足りていなかった。

 そうした状況下で昨年初めて、この世代の選手たちは海外遠征を実施した。6月にフランスで開催されたモーリスレベロトーナメントに出場し、9月にAFC U20アジアカップの予選を戦って異国の地で戦う難しさを味わってきた。それでも経験値が足りているとは言い難い。予選を1位通過した後の11月にスペイン遠征を実施したものの、どこまで戦えるかは未知数だった。しかも11月に遠征を行なって以降、国内合宿も含めて一度もトレーニングはできていない。12月はオフ、1月はシーズン前で所属クラブの活動を優先したためだ。

 迎えた今大会。指揮官も選手たちも活動期間が限られた点は「関係ない」と話し、初戦の10日前から現地で調整を進めていたものの、ぶっつけ本番に近い形で開幕を迎えるしかなかった。

不安要素をかき消したピッチ内での修正力

 3日の中国戦(2-1)。日本は明らかに初戦の固さが見られた。「自分たちから試合を難しくしてしまった」と指揮官が振り返った通り、緊張から思うようにプレーできない選手が続出。開始6分にはCKからオウンゴールで先制点を献上するなど、明らかに浮き足立っていた。だが、ここから選手たちはタフに戦っていく。相手のブロックを崩すべく、ボランチの松木が1列前のポジションに入ってチャンスメイク。後半に入るとよりボールが動くようになり、終盤にFW熊田直紀が連続ゴールをマークして逆転勝利を収めた。

 続く6日のキルギス戦(3-0)も同様に序盤は相手のカウンターに苦戦。失点こそ喫していないが、低調な出来に終わってしまう。前半途中からビルドアップの形を変える策もハマらない。「2シャドーが(低い位置に)落ちてしまったので、1トップに入る直紀の周りに誰もいない状況」と主将のMF・松木玖生が反省の弁を述べたように、またしても苦戦を強いられた。だが、この試合も後半に持ち直す。システムを変え、4-2-3-1に変更。松木がトップ下に入ると、ボール回しがスムーズになり、攻撃のテンポが上がった。最終的に終盤の3ゴールで快勝し、修正力の高さでゲームを制した。

 グループステージ突破が懸かる9日のサウジアラビア戦は、過去2戦の課題を修正。立ち上がりから相手の攻撃をうまく跳ね返しながらゴールに迫り、前半15分に松木のゴールで先制。以降は相手にボールを持たせながらショートカウンターで追加点を狙う形にシフトし、うまくゲームをコントロールしていく。後半に入ると、今度は5バックで相手の攻撃を跳ね返しながら時計の針を進めた。75分にCKから失点したのは誤算だったが、直後に松木がCKから勝ち越し点をゲット。以降は松木をシャドーからボランチに配置転換すると、拾えていなかったセカンドボールの回収を改善してゲームを締め括った。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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