1分1敗で終わったU-22の欧州遠征で見えたこと 露呈した懸念材料と、可能性を示した選手たち

松尾祐希

問われた選手たちの対応力。その中で可能性を示した選手は?

佐藤(18番)が2試合通じて2G・1Aの活躍を見せ、川﨑(6番)も高い守備力で可能性を感じさせた 【Photo by Alexander Scheuber/Getty Images】

 一見すると善戦に見えるスコアに隠れ、はっきりとした形で課題がまだ炙り出されていない。だが、実際にはまず個人能力で相手が上回っており、相手の変化に対応する力も不足している。特にベルギー戦の前半は相手の策に対応できず、ピッチ内で最適解を出せなかった。「システムに相対した時に確実に出る問題点なので、そこのアプローチはもっと緻密にやるべきだった」と指揮官は反省の弁を述べたが、選手たちが自ら話し合って解決を模索しても良かったはずだ。

 メンタル、コミュニケーションも課題として挙げられる。失点を重ねると、次第に声が少なくなり、途端に静かになる。ハーフタイム後に改善されたが、大岩監督の指示があったからこそ。「自分たちも少し考え方を変えて、ポジションのところでうまくはめれるようにしようという話があった」と藤田が振り返ったが、主体性を持って解決する術がなかったのか疑問に残った。

 悔しさが残る遠征となった今回の2連戦。しかし、可能性を示した選手は複数おり、今後に期待を抱かせた。今季からチームでキャプテンを務める川﨑颯太(京都)はアンカーの位置でボール奪取能力の高さを示している。2試合で2ゴール・1アシストを記録した佐藤は屈強な相手DFにも競り負けず、フィジカルの強さで相手に伍していた。ベルギー戦で対人プレーを得意とする木村誠二(FC東京)が、後半開始から3バックの左で躍動。偽SBの役割を担い、これまで見せていた守備的なアクションではなく、攻撃面でライバルたちとの違いを見せた。「もうちょっと前を生かせる動きができないといけない」と反省の弁を述べたが、新たなオプションとしての計算が立った。

 パリ五輪の最終予選を兼ねたAFC U23アジアカップまで約1年。課題と収穫を経て、チームはどのような成長を遂げていくのか? 今季は所属クラブで出場機会を減らしている選手が多いだけに、まずはそちらで存在感を示さねばならない。欧州遠征の悔しさを糧に、若者たちはそれぞれの舞台でさらなる成長を期す。

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著者プロフィール

1987年、福岡県生まれ。幼稚園から中学までサッカー部に所属。その後、高校サッカーの名門東福岡高校へ進学するも、高校時代は書道部に在籍する。大学時代はADとしてラジオ局のアルバイトに勤しむ。卒業後はサッカー専門誌『エルゴラッソ』のジェフ千葉担当や『サッカーダイジェスト』の編集部に籍を置き、2019年6月からフリーランスに。現在は育成年代や世代別代表を中心に取材を続けている。

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