工藤公康が2022年パ・リーグ先発投手を振り返る 山本由伸&佐々木朗希の凄さを独自の視点で分析
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全体的なレベルアップが見られた今季のパ・リーグ先発投手
今は投手の分業制が進み、先発投手は5回から6回で交代することが多くなりました。そんな中でも先発投手がある程度のイニングを投げ、試合を作ることができるか、できないかがチームの勝敗に大きく影響します。先発投手の投球イニングが多くなれば、リリーフの負担も減り、目の前の試合だけでなく、その先の試合にもつながっていきます。そういった意味でも、先発投手のクオリティ・スタート率や平均投球イニング数なども、そのチームの状態や特徴を分析する上では、面白いかもしれません。
今回は今シーズンのパ・リーグの先発投手の中で、好成績をおさめた選手のデータや投球フォームを分析し、深掘りしていきたいと思います。
山本由伸はなぜ毎年活躍できるのか?
1シーズン好成績を残すことができたとしても、2シーズン連続でというのは非常に難しいことです。対戦データも蓄積され、相手も当然、研究を重ねてきます。そんな中でも高いパフォーマンスを発揮できるということは、彼自身のこれまでの取り組み方や努力の賜物でしょう。
私が山本投手を見ていて感じる部分のひとつとして、彼は自分のピッチングフォームの中で、力の抜きどころと入れどころの使い分けが非常にうまい。そして、自分自身のピッチングフォームや身体の状態を理解した上で、それを最大限に活かすためのフォームで投球ができているように見えます。だからこそ試合中の修正能力が高く、シーズンを通して大きく崩れることがないのだと思います。
さらに細かいところで言えば、脚を上げて体重移動での力の伝え方が非常にうまい。余計な筋力を使わなくても進行方向に加速する力を生み出し、その力が最終的にリリースでボールに伝わっているように見えます。
力を抜いた状態、いわゆる“ゼロ”の状態を作り出し、そこから力を発揮することができるのは、投手として非常に大切なことです。力は“抜く”からこそ、いざという時に出力できます。常に力を入れている状態で力を発揮することが難しいことは、ダンスや縄跳びなどをイメージすると理解できるかと思います。力に頼ったフォームや、余計な力を使ってしまうことで、フォームが変わってしまい、ボールの制御が難しくなります。それがコントロールの乱れや、障害のリスクにもつながってしまいます。