連載コラム「工藤公康の野球ファイル」

工藤公康が「大谷翔平の超一流マインド」を分析! 真似できない“飽くなき探求心”とは?

工藤公康

連日、WBCで圧巻のパフォーマンスを見せる大谷翔平。工藤氏は大谷のプレーだけでなく、これまで積み上げてきたマインドにも注目している 【写真:ロイター/アフロ 】

 現役通算224 勝。ソフトバンク監督時代にはチームを5度の日本一に導き、2022 年からは野球評論家として幅広く活躍する工藤公康さん書き下ろしの連載コラム。WBCが開幕して日本中が盛り上がる中、連日侍ジャパンの熱戦に見入っているという工藤氏。第9回目のコラムでは、大谷翔平選手の何がすごいのか、工藤氏ならではの目線から分析します。

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大きな身体をプレーに活かすクレバーな思考法

鍛え上げられた身体にも注目が集まる大谷翔平。工藤氏は相当考えに考えて普段からトレーニングをしていると見ている 【Photo by Kenta Harada/Getty Images】

 3月9日、待ちに待ったWBCが6年ぶりに開幕しました。

 侍ジャパンの選手たちの活躍ぶりは本当に頼もしいです。特にラーズ・ヌートバー選手の全力疾走や「何が何でもボールを捕ってやる!」という守備を見て、私も心が震え、熱くなって応援しています。

  今回、大谷翔平選手が参加してくれたことで、普段あまり野球を見ない方やほとんど野球を知らない方まで侍ジャパンを応援していただいています。彼の影響力というのは、本当にすごいものだと感じています。

 メジャーリーグの舞台で、「二刀流」としてパフォーマンスを発揮する大谷選手。日本代表としても、1次ラウンドから投打で大いにチームの勝利に貢献しています。その技術やパワーのすごさはもちろんですが、彼のマインドという部分にも活躍する所以があると私は思っています。

 例えば、大谷選手の身体がトレーニングによって年々大きくなっていると話題になっているかと思います。パフォーマンスを支える要素として、よくピックアップされていますが、大谷選手のすごさは、その鍛えた筋肉を野球というスポーツにどのように活かすのかということを、ちゃんと長いスパンで、逆算して考えたうえでトレーニングをしていることだと思います。

 大谷選手はそもそも身長が高く、手足が長いことも身体的な特徴の1つです。身体の大きさというのは、投手にとってもそれだけで大きな武器になりますが、手足が長い分、その身体をコントロールすることも難しくなります。投球時の回転によって生じる遠心力も大きくなり、ケガのリスクも高まり、リリースでの再現性をより高めていく必要が生じてきます。

 そういった身体の特徴がある中で、あれだけのパフォーマンスを発揮できるのは、試行錯誤の繰り返しではあったかと思いますが、「どこの筋肉を鍛えればよいか」「どういったトレーニングを行えばよいのか」といったことを整理し、積み上げていった成果でしょう。

 加速させる筋肉だけでなく、その加速させたものを受け止める力、減速させる筋肉、そういった1つひとつの身体や筋肉のバランスが保たれていなければ、あれだけのスピードボールをコントロールすることは難しいと思います。

 自分の身体を理解し、しっかりと向き合ったうえで、野球というスポーツに必要な筋力やトレーニングというものを考え、落とし込む。そういったクレバーさは、なかなか真似できない部分です。

「どうすれば速い球を投げられるのか?」
「どうすれば遠くにボールを飛ばせるのか?」
「どうすればケガを防げるのか?」

 そういった野球の上達のために、自分の体に対する飽くなき探求心があるからこそ、思考と体がうまく結びついていくのではないでしょうか? 

 大谷選手といえば、高校生の時から作成していたマンダラチャートという目標達成シートが有名です。達成したい目標や自分の描く未来を真ん中に置き、そのための要素や方法を9×9の81マスの中に分割して、整理するというものです。

 大谷選手は野球がうまくなるために、24時間365日、自分の身体と向き合い、その自分の身体をピッチング、バッティングに活かすためにはどうしたらいいかを自分の頭で考えに考えて、取り組んでいるのではないかと思います。食事においても、何をどのように食べれば野球につながるのか。睡眠においても、時間やタイミング、どういった寝方をすれば野球にプラスになるのかなど、すべてにおいて野球につなげるための思考を持ち合わせているからこそ、それがパフォーマンスや結果につながっていくのだと思います。

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著者プロフィール

1963年5月5日生まれ。愛知県出身。名古屋電気高校(現:愛知名電高校)から1981年、西武ライオンズからドラフト6位指名を受け、入団。西武黄金期を支え、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズに在籍。現役時代は14度のリーグ優勝、11度の日本一に貢献し、優勝請負人と呼ばれた。現役通算で224勝を挙げ、最優秀選手(MVP)2回、最優秀防御率4回、最高勝率4回など数多くのタイトルに輝き、正力松太郎賞は歴代最多に並ぶ5回受賞。2016年には野球殿堂入りを果たした。2011年に現役を引退後、2015年に福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。7年で3度のリーグ優勝と5度の日本一に導いた。現在は野球評論家として活動しながら、筑波大学大学院博士課程に進学。スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っている。

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