日本代表と国内大会に共倒れの危機 解消されないバドミントンの「日程問題」

平野貴也

男子で5連覇を飾ったトナミ運輸。表彰式後の集合写真に主力の保木/小林が不在の理由は…… 【筆者撮影】

 バドミントンのS/Jリーグ2022(旧:日本リーグ)は、2月12日に最終日を迎え、男子はトナミ運輸の5連覇、女子は再春館製薬所の2大会ぶり3度目の優勝で幕を閉じた。日本一を決めるリーグ戦だが、個人部門の表彰式には代理選手がズラリと並び、ファインダーから目を離したカメラマンは「選手が違う? 撮る意味ないじゃないか」と戸惑っていた。

 試合を行ったばかりの選手が不在だったのは、2日後にUAEで開幕するアジア混合団体選手権に出場する選手が出国のため移動したからだ。表彰後のチーム写真も主役不在で違和感が拭えなかった。熱戦の余韻もなく、あるチーム関係者は「今年もやりました、というだけの大会になっていますよね」と首を傾げて会場を後にした。日本代表選手は、過密化する国際大会だけで大忙し。代表選手ありきのリーグ開催は、無理が生じている。国際大会の合間に消化するだけで精いっぱいになっている印象だ。

疲弊する代表選手、リーグは「出たい」から「出なければ」へ変化

プロに転向した渡辺は「言える人が言っていかないと」と話し、日程問題に意見を言いにくい選手の立場を代弁した 【筆者撮影】

 以前は、国内選手の誰もが目指した舞台だった。男子で最多18回の優勝(電電東京、NTT東京時代を含む)を誇るNTT東日本の男子チームを率いる川前直樹監督は「私が現役の頃は、日本リーグで戦うのが夢。小さいときに観に行って、こんな華やかなところでやりたいと思いました。今も、チームとしては、一番重きを置いている大会。会社にも、ここを目指すいうところで力を入れてもらっている」と話した。

 今でも、会社が給与とプレー環境を保証している実業団の選手に話を聞けば「会社に恩返しをしたい、負けられない大会」といった言葉が聞かれる。しかし、国際大会をメインで戦う選手にとって、国内大会は明らかに負担となっている。女子シングルスで五輪に2大会連続出場した奥原希望が19年から実業団を辞めてプロに転向した理由の一つは、国際大会への専念だ。男子シングルスの次期エース候補として注目される奈良岡功大(IMG)も高校卒業後は大学や実業団のチームに入らずに活動している。5月から1年間行われる24年パリ五輪の出場権獲得レースの最中にも国内リーグは組まれる。「出なくてもいいなら、出ないかも……」と話す選手もいたが、本音だろう。

 五輪や世界選手権のメダルが目的になり、そのために国際大会を戦い続けて世界ランクを上げる必要がある今の主力選手にとって、賞金もない団体戦でのプレーは、名誉より義務の要素が強い。12月の全日本総合選手権や1月の国際大会を一部欠場した渡辺勇大(BIPROGY)は「疲労でコンディションが良くないので休んだ。今は、連戦で、めちゃくちゃ試合が多い。自分で自分をコントロールすることが、これからは大事だと思う。言える人が言っていかないと」と話した。渡辺は、22年春に退社してプロ契約に変更。社員契約の選手や実績のない若手が改善を訴えるのは難しいことに理解を示した上での発言だ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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