バドミントン桃田、2年ぶり日本一で示した確かな改善点

平野貴也

国際大会で5度も初戦敗退を喫するなど苦しんでいる桃田だが、2年ぶりに全日本総合で優勝を飾った 【筆者撮影】

 まだ、復活とは言えない。しかし、桃田に強さと笑顔が戻ってきた。全日本総合バドミントン選手権は30日に決勝戦を行い、男子シングルスの桃田賢斗(NTT東日本)は、2-0(21-11、21-16)で西本拳太(ジェイテクト)を破って2年ぶり5度目の優勝を飾った。マッチポイントでネット前から相手コートへシャトルをたたき込むと、大の字。頭だけをわずかに起こし、3階席から声援を送ったチームメイトに向け、左拳を突き上げた。立ち上がって観衆の拍手を浴びると、感涙。予選で敗れた東京五輪を含めて昨年から不調に苦しみ続けてきただけに、場内インタビューでは「ネットを見ても、あのときの桃田はいないとか、桃田の時代は終わったとか。言いたいことは分かるんですけど、やっている本人は終わりたくないですし、まだまだ強くありたいと思う。皆さん、ネガティブなことは言わないで、明るい応援をよろしくお願いします。もっともっと強い桃田賢斗を見せていきたい」とさらなる後押しを求めた。成績が下降していた桃田にとっては、久しぶりの優勝。結果が何よりの収穫であることは当然だが、プレー内容でも確かな改善点があった。

無敵の19年から交通事故を経て成績下降、得意のレシーブが絶不調に

 桃田が言った「あのときの桃田、桃田の時代」は、主要国際大会でギネス記録の11勝を挙げ、東京五輪の金メダル候補として注目された2019年を指している。しかし、20年1月にマレーシアで国際大会を優勝した直後、交通事故に見舞われて長期離脱。苦しみのトンネルが始まった。21年3月に国際大会へ復帰したが、優勝は一度のみ。22年は5回も初戦敗退を喫するなど苦しみ続けてきた。以前との明確な違いは、得意としていたレシーブができなくなったことだった。以前は、相手にコート後方から強打を打たせ、コントロールレシーブでネット前へ返球。フルスイングした直後に前に走らされた相手が落下点に入るのが遅れ、拾い上げるように球を返すと桃田が優位に立つプレースタイルだった。しかし、最近は相手の強打を拾えず、ノータッチで決められる場面が目立っている。

国際大会を欠場、2カ月の調整でプレースタイルを変化

決勝戦の第2ゲーム後半、積極的に上からのショットで攻撃を仕掛けた桃田 【筆者撮影】

 思い切った決断をしたのは、日本で行われた世界選手権、ダイハツヨネックスジャパンオープンの2大会で早期敗退を喫した後だった。10月に予定していた欧州遠征の2大会を欠場。与えられるランキングポイントの大きい大会だが「あの調子のままワールドツアーに出ても負ける、出るの繰り返しになると思ったので、しっかり自信を持ってプレーできるように練習しようと思って休ませてもらいました」とこの大会に向けて時間をかけて調整を行う決断を下した。ディフェンスのノック練習を1時間続けるなどハードなメニューをこなし、ランニングなども含めて徹底的にフィジカルコンディションを作ってきたという。この大会に合わせて時間をかけて調整したことで、動きの鋭さそのものが上がった面もあるのだろうが、今大会は、これまでとは明らかに異なる戦いぶりを見せていた。決勝戦では、アタック力が武器の西本を相手に、強打を多く打たせることなく、2ゲーム後半からはむしろ桃田が一方的に強打を打ち込んで点数を奪う展開になっていた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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