23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

本命視される清水もJ1昇格プレーオフ圏内止まり? 3人のエキスパートによるJ2展望座談会

飯尾篤史

昨季のJ1得点王チアゴ・サンタナを筆頭に、リソースに溢れる清水だが、ゼ・リカルド監督の手腕を疑問視する声も 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 2月18日、2023年シーズンのJ2リーグが開幕する。昇格争いの中心になるのは、降格組の清水エスパルス、ジュビロ磐田か、それともファジアーノ岡山やベガルタ仙台などが昨季の悔しさを晴らすのか。激戦必至のシーズンを前に、今年もJ2を知り尽くす3人のライターによる恒例の座談会を開催。水戸ホーリーホックに密着する佐藤拓也氏、FC町田ゼルビアを追いかける郡司聡氏、そしてJ2全体を幅広くカバーする土屋雅史氏に登場を願い、22チームをA、B、Cとクラス分けしてもらった上で、各チームの陣容について詳しい話をうかがった。

清水の最大の不安要素はゼ・リカルド監督

──今年は1位と2位が自動昇格、3位から6位までがJ1昇格プレーオフに回りますが、ここでは上位7チームまでをAクラスということにしましょう。そのなかで、みなさんが共通してAクラスに挙げているのが、ベガルタ仙台(昨季7位)と清水エスパルス(昨季J1の18位)ですね。

●Aクラス予想(※並び順は北から)
佐藤:仙台、水戸、町田、清水、岡山、徳島、長崎

郡司:仙台、山形、町田、清水、磐田、徳島、大分

土屋:仙台、山形、東京V、清水、磐田、岡山、大分

佐藤 まず、今回のクラス分けをするにあたって考えたのが、5人交代制なんです。カタール・ワールドカップの日本代表もそうでしたが、攻撃のセットを2つ分持っていて、試合中に臨機応変にフォーメーションを変えられるチームが上位に来るんじゃないかと。その意味でちょっと抜けているのが、仙台と清水。特に昨シーズン途中から伊藤彰監督が指揮を執る仙台は、そのベースを残しつつ、各ポジションに本気度の見える補強をしています。

郡司 過去3シーズンのJ2を見ると、実は自動昇格した6チームのうち4つが新監督のチームなんですよ。20年のアビスパ福岡(長谷部茂利監督)、21年の京都サンガF.C.(曺貴裁監督)、22年のアルビレックス新潟(松橋力蔵監督)と横浜FC(四方田修平監督)。ちなみに21年のジュビロ磐田も、前シーズンの途中に就任した鈴木政一監督のもとでJ2を制しています。結局、この3年間で継続のアドバンテージが生かされたのは、20年に優勝したリカルド・ロドリゲス監督(就任4年目)の徳島ヴォルティスだけ。コロナ禍の影響もあったのかもしれませんが、新監督のフレッシュ感で押し切る傾向が近年のJ2にはあるようです。

 そして今年は徳島、磐田、ヴァンフォーレ甲府、FC町田ゼルビア、ジェフユナイテッド千葉、水戸ホーリーホックが新監督のチーム。その中から昨シーズンの天皇杯優勝でACL参戦という負担がのしかかる甲府、毎年のように期待を裏切る千葉(苦笑)、クラブの予算規模的に厳しそうな水戸の3つを外し、さらに仙台など有力チームを引き上げて構成したのが、僕の考えるAクラスなんです。

──なるほど。では、仙台と清水、それぞれの印象はどうですか?

郡司 仙台は昨シーズンの終盤から伊藤監督のもとでチームを作れているので、移籍市場でも先手を打てた感があります。ラージグループでチームを作り上げ、ビルドアップの仕込みができる伊藤監督のようなタイプには、個人的に期待してしまいます。ただ、自動昇格となると少し難しいかもしれません。

 清水に関しては、旧時代のブラジル人監督(ゼ・リカルド監督)がチームを率いていることが最大の不安要素だと個人的には思っていますが、昨シーズンのJ1得点王チアゴ・サンタナを筆頭に、左サイドバックの山原怜音など、やはりリソースに溢れていますからね。プレーオフ出場権は堅そうです。

──座談会初参加の土屋さんは、どんな基準でクラス分けを?

土屋 基本的には去年の順位に準じています。仙台の場合、昨シーズンは結局プレーオフにも回れませんでしたが、一時は首位に立つなど、序盤戦は昇格した新潟、横浜FCとともにリーグを引っ張ってきただけに、きっとどこよりも悔しい思いを味わったはずなんです。その悔しさを知る選手たちの大半が残り、さらに練度が必要な伊藤監督のサッカーを、昨シーズンの終盤戦から積み上げられているのは大きいでしょうね。

 このオフには地元出身の郷家友太(←ヴィッセル神戸)が加わり、アカデミー育ちの工藤蒼生(←阪南大)や菅原龍之助(←産業能率大)が大学経由で加入と、勢いをもたらしそうな材料も多い。クラブとして今年は勝負のシーズンだと思うので、仙台はかなり上位にくると予想しています。

──清水の評価はいかがですか?

土屋 去年に見た印象ですが、ゼ・リカルド監督がどういうサッカーをやりたいのか、正直ちょっと分からなかった。実はJ2からJ1にクラブを昇格させたブラジル人監督って、過去にネルシーニョさん(現柏レイソル監督)とレヴィー・クルピさんしかいないんです。この2人と比べて圧倒的にJクラブでの指導実績が不足するゼ・リカルド監督が、どれほどの采配力を発揮できるか。それがすべてかもしれません。

佐藤 ただ清水に、前水戸監督の秋葉忠宏さんがコーチとして加わったのは大きいと思います。その秋葉さんの後任に就いた水戸の濱崎芳己監督(昨季までは秋葉監督のもとでヘッドコーチを務めた)も、「清水はいい“補強”をしたね」って話していましたけれど、監督だとちょっと突っ走ってしまうこともある秋葉さんですが、コーチだと自分を抑えながら監督を引き立てられるし、選手とのコミュニケーションの取り方も上手いですからね。僕は秋葉コーチが、清水のキーマンの1人になるんじゃないかと見ています。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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