23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

本命視される清水もJ1昇格プレーオフ圏内止まり? 3人のエキスパートによるJ2展望座談会

飯尾篤史

補強戦略が抜群に上手い徳島

頼れる外国籍選手を残留させた上で、前線に柿谷ら有能なアタッカーを加えた徳島。潤沢な資金力でJ1昇格への体制を整えた 【写真:共同通信社】

──磐田(昨季J1の17位)とモンテディオ山形(昨季6位)は、郡司さんと土屋さんがAクラスに予想していますね。

土屋 山形はピーター・クラモフスキー体制3年目で、そのアグレッシブなスタイルはJ2を見ている人なら、誰もが知っています。積み上げてきたものがはっきりしているし、上位に来るためのノウハウもクラブとして持っている。補強に関しても、例えばセンターバック(CB)の熊本雄太(←福岡)や西村彗祐(←大宮アルディージャ)など、層が薄かったポジションに良い選手をしっかり補填していて、強化部が的確な仕事をしている印象を受けますね。

 J1から降格した磐田も、やっているサッカー自体は全然悪くなかったし、単純に戦力値の比較で、J2では間違いなく上位を狙えると思います。(ファビアン・ゴンザレスを巡る契約違反で)補強禁止という重い十字架を背負わされましたが、針谷岳晃(←ギラヴァンツ北九州)や鈴木海音(←栃木SC)などレンタルバックで戻ってきた4人が伸びれば、J2を席巻してもおかしくはありません。

 あと、僕がすごく期待しているのが、高校2年生ながら飛び級でトップチームに昇格した17歳の後藤啓介。191センチの長身で、ボランチもセンターフォワード(CF)もできるんですが、彼が大化けしたらかなり面白そうですよ。横内昭展監督もJクラブの監督を務めるのは初めてですが、A代表と兼任する森保一監督に代わって東京五輪代表の監督を務めるなど経験が豊富なので、僕はそれほど心配していません。

郡司 山形は攻撃の核だった山田康太(→柏)の離脱が痛手ですが、それでも土屋さんがおっしゃる通り、クラブとしてのフィロソフィがしっかりしているクラブですからね。プレーオフボーダーには確実に絡んでくるでしょう。磐田も有力な昇格候補。横内監督が柔軟なチームを作ってくると見ています。

──佐藤さんはこの2チームをいずれもBクラスにしていますが、どのあたりが気になるんですか?

佐藤 いや、Aクラスとはそん色がないし、特に山形は本当に大崩れしないチームですからね。ただ、昨シーズンからのプラスアルファが、現状では見いだせなかった。それは磐田も同じで、横内さんの采配力は魅力かもしれませんが、もう少し伸びしろがないと上には行けないのかなって。

──ファジアーノ岡山(昨季3位)、大分トリニータ(昨季5位)、それから徳島(昨季8位)もお2人ずつがAクラスに挙げていますね。徳島を推されている郡司さん、佐藤さんから、その理由を教えてください。

郡司 徳島は最初に話した“新監督基準”と、豊富な人員を抱えられる予算規模が上位推しの理由です。

佐藤 補強戦略が抜群に上手いですよね。まずホセ・アウレリオ・スアレスとカカを残したのがすごく大きいし、藤尾翔太(→C大阪)が抜けたCFにも、千葉寛汰(←FC今治)、森海渡(←柏)という、純粋に点を取る能力に長けた若手有望株をきっちり獲ってきていて、さすがだなと思いました。

──岡山は佐藤さんがAクラス、郡司さんがBクラスです。

郡司 岡山もAクラスに入れるか迷ったんですが、木山隆之監督のフレッシュ感が2年目でやや薄れてしまう点と、やはり前線からミッチェル・デューク(→町田)が抜けてしまったのは大きなマイナスポイントだろうと。また、町田でプレーした佐野海舟(→鹿島アントラーズ)の実弟である佐野航大に期待していますが、ポテンシャルは夏に個人昇格、もしくは海外移籍の可能性もありそうな選手。仮にそれが実現したら、余計に苦しくなると踏んでいます。

佐藤 先ほど土屋さんが、「仙台が一番悔しい思いをしている」とおっしゃいましたけれど、僕は岡山もそうだと思うんです。昨シーズンは3位になりながら、プレーオフは1回戦で山形に敗れてしまって。確かにデュークはいなくなりましたが、逆に僕は木山さんの次の一手が楽しみですね。このオフには水戸から主力CBの鈴木喜丈を奪っていきましたが(笑)、すでに柳育崇とヨルディ・バイスがいるなかで彼を獲ったということは、おそらく今シーズンはいろんなバランスを変えてくるんじゃないかと。木山さんもまだJ1昇格経験がないので、今年こそはと強い気持ちで臨んでくると思いますよ。

 あと、先ほど郡司さんが「デュークが抜けてしまった」と言っていましたが、「町田が抜いたんでしょ」ということは、ちゃんと言っておきたいと思います(笑)。

郡司 すみません、言葉遣いに気を付けます(笑)。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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