23年J1・J2「補強・戦力」を徹底分析!

本命視される清水もJ1昇格プレーオフ圏内止まり? 3人のエキスパートによるJ2展望座談会

飯尾篤史

大分の注目は弓場&保田のダブルボランチ

ライター陣が絶賛したのが、弓場(中央)と保田のアカデミー出身コンビで形成する大分のダブルボランチ。彼らの成長次第では有力な昇格候補に 【写真:共同通信社】

──土屋さんは郡司さんとは反対で、岡山をAクラス、徳島をBクラスにしています。

土屋 徳島はAクラスに入れようか、最後まで迷ったチームの1つです。佐藤さんもおっしゃっていましたけれど、千葉と森の若いストライカー2人は、いずれも二桁得点が狙えるポテンシャルを秘めているし、前線にはさらに実績十分の渡大生(←福岡)と柿谷曜一朗(←名古屋グランパス)まで戻ってきてくれた。そして3センターハーフも、誰が出てもおかしくないくらい定位置争いは超ハイレベルですからね。

 ただ、35歳と若いベニャート・ラバイン監督の手腕が、果たしてどうなのかと。リーズ・ユナイテッドやレアル・ソシエダで分析担当をやられてきた方ですが、いわゆる“大人のカテゴリー”で監督を務めるのは今回が初めてですから、経験不足がネックになるのではないかと判断しました。

 一方の岡山は、ポジションのトータルバランスに関してはJ2でもトップレベル。デュークが抜けたFWにも、櫻川ソロモン(←千葉)、坂本一彩(←ガンバ大阪)という、育成年代で点を取りまくっていた逸材を補強していますからね。かつてのオナイウ阿道(現トゥールーズ)や垣田裕暉(現鹿島)みたいに、そこまで実績のなかった若手ストライカーが、突然二桁得点をマークするようなことが起こりうるのがJ2の面白さ。同じように彼らがブレイクする可能性は大いにありますよ。

──では、次は郡司さんと土屋さんがプッシュする大分を見ていきましょう。

郡司 ボール保持志向型のチームが上位に食い込んでほしいという、個人的な願望込みですね(笑)。ボールを握るチームに、僕はロマンを感じるので。もちろん、厳しい現実にぶつかるかもしれませんが、下平隆宏監督の2年目に期待したいです。

土屋 昨シーズンも最初はかなりビルドアップにこだわっていましたけれど、それをずっと貫いたわけでもなかった。割り切るところは割り切って、バランスを取るようになってから結果が出始めましたよね。去年に関しては、序盤戦でルヴァンカップとの並行を強いられ、チームを構築すべき時期に過密日程に悩まされましたが、今年はその負担がないのもプラス材料でしょう。

 あと、僕がとにかく好きなのが、20歳の弓場将輝と17歳の保田堅心(昨季は2種登録)のアカデミー出身ドイスボランチ(ダブルボランチ)。昨シーズンのロアッソ熊本とのプレーオフでも2人が中盤でコンビを組みましたが、彼らがJ2屈指のドイスボランチに成長すれば、大分はかなり有力な昇格候補になりますよ。

佐藤 大分、強いですよね。昨シーズンもチームとしての総合力の高さを感じました。とはいえ今年は、呉屋大翔(→千葉)や下田北斗(→町田)らの主力が抜けて、戦力の上積みという部分でどうなのかなと。ただ、土屋さんと同じで僕も弓場と保田のコンビは大好きで、特に弓場には衝撃を受けましたね。運動量も凄いんですが、それ以上に戦術眼に優れていて、いてほしい場所に必ずいてくれる。ピッチに3人くらいいるんじゃないかって、いつもそう思わされましたから(笑)。現状ではBクラスとしていますが、彼らがもうひと伸び、ふた伸びしたら、昇格もあり得るでしょうね。

大型補強の町田は「結果で黙らせる」

青森山田で名を馳せた黒田監督が率いる町田は、異例の大型補強を敢行。開幕ダッシュに成功すれば、J1初昇格へ一気に突っ走る可能性も 【写真:共同通信社】

──次は、佐藤さんと郡司さんがAクラス予想の町田(昨季15位)にいきましょう。高校サッカー界の名将、黒田剛監督(←青森山田高)が初めてプロクラブを率いることでも話題の町田は、今シーズン大注目のクラブですよね。

佐藤 「今までの町田とは違うぞ感」が、もうムキムキに出ていますから(笑)。デュークや19年のJ1で横浜F・マリノスの優勝に貢献したエリキ(←長春亜泰)など、かなり派手な補強をしていますけれど、その一方で、例えば黒川淳史(←磐田)や稲葉修土(←ブラウブリッツ秋田)など、チームのために戦える選手もちゃんと補強している。むしろそういった存在の働きが肝であり、上位進出のカギを握るんじゃないかと思っています。

土屋 黒田監督、金明輝ヘッドコーチをはじめとするコーチングスタッフとはみんな知り合いだけに申し訳ないんですが(笑)、僕はBクラスにしました。キャンプ取材をしていないので、どういうチームになるのか、まったく予測がつかなくて。他チームとの比較で、現状はAクラスから外しています。ただ、ロマンは感じますよ。

 キーマンは、黒田監督が唯一青森山田から連れてきた、上田大貴アシスタントコーチかもしれません。青森山田中の監督を10年近くやられてきた方で、現メンバーの宇野禅斗も新加入の藤原優大(←SC相模原)も、上田さんに青森山田のサッカーをたたき込まれたんです。おそらくこの上田さんが、黒田監督と他のコーチたちを上手くつなぐ役割を果たしていくんじゃないかと思いますね。

──じゃあ、喋りたくてウズウズしている町田の番記者、郡司さん、どうぞ(笑)。

郡司 では、満を持して(笑)。まず戦力に関しては、親会社サイバーエージェントの社長で、昨年12月に町田のオーナーから代表取締役社長兼CEOに立場を変えた藤田晋氏が、「1年目から勝負を賭ける」という言葉通りの大型補強を敢行しました。期待値は十分で、番記者としては当然、ゴリゴリ優勝候補に推しますよ(笑)。

 ただ、肝になるのはスタートダッシュ。黒田監督、金明輝ヘッドコーチをはじめとしたコーチングスタッフが、適切なパワーバランスを保ちながらチームをまとめ、大型補強で獲得した選手たちがしっかり活躍できるかどうか、他のチーム以上に注目されているはずなので、余計に「結果で黙らせる」ことが必要になってくる。新しく来た選手たちはみんな、このチームでポジションを取って優勝に貢献したいという強い意欲に満ち溢れています。序盤戦で結果が出れば、どんどん乗っていけると思うので。特に開幕戦が昇格候補の仙台である点も要注目です。

──黒田監督と金明輝ヘッドコーチの役割分担はどうなっているんですか?

郡司 平たく言うと、守備は黒田監督、攻撃は金明輝コーチ、というイメージですね。明確な線引きがあるわけではありませんが、ボールを保持した局面に関しては、金明輝コーチが陣頭指揮を取って指導している感じですね。黒田監督も、ここは金明輝コーチのセッションだなっていうところに関しては、ほぼノータッチに近いような状態です。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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