12球団の“熱烈”識者が語る!昨シーズンと新シーズン

完全試合の実況アナが熱を込める「ロッテの捕手事情」 上位浮上に欠かせぬ選手の名前とは?

Timely!編集部

熱狂的ファンの吉田さんが「案外やれる」と見ている2023年のマリーンズ 【写真:共同通信社】

 既に始まっている、新シーズンに向けての戦い。監督の交代、ドラフト会議、トレード、新助っ人獲得、現役ドラフトなどを経て、あなたの応援するチームはどのように変貌するのだろうか? そこで、12球団の"熱烈"な識者の皆さん12人とライター菊地高弘さんに、昨シーズンを振り返りつつ、新シーズンへの期待、展望などを対談形式で存分に語って頂きました。

 第8回目となる今回は千葉ロッテマリーンズ編。大のロッテファンであり、実況も数多く担当されているアナウンサーの吉田伸男さんとライター菊地高弘さんの対談をお届けします。

2023シーズンへの光を見た、山口の逆転スリーラン

待望久しい高卒右の大砲として期待がかかる山口航輝 【写真:共同通信社】

菊地 吉田さんと言えば、マリーンズ戦の冷静沈着な実況がすごく印象的なんですが、実は熱狂的なマリーンズファンだとうかがったんですけども。

吉田 川崎球場時代からのファンでして、一応実況するときは冷静沈着を装って仮の姿でやっております。

菊地 (笑)。佐々木朗希投手の完全試合の実況が話題になりましたけども、内心はドキドキだったわけですか?

吉田 スタンドで見たかったですよね。仕事してる場合じゃねぇぞと。

菊地 (笑)。

吉田 朗希君が完全試合を達成した瞬間、両腕を広げて後ろを向いたじゃないですか? あの日、ちょうど春ですごく明るい日差しが、両腕を広げた朗希君に降り注いで「なんて神々しいんだ!」と思いましたもん。あれをね、実況じゃなくてスタンドで見たかったですよ(笑)。

菊地 どんな芸術家が描こうと思っても描けない光景ですもんね。

吉田 そうなんですよ。

菊地 そういう歴史的な快挙があった2022年シーズンを振り返りたいんですけども、マリーンズは69勝73敗1分けのリーグ5位で首位とは7.5ゲーム差。チーム防御率3.39はリーグ4位、チーム打率.231はリーグ5位。なかなか思い通りにいかなかったシーズンだったのかなと思うんですけども、吉田さんから見て、2022年シーズンは100点満点で何点だったでしょうか?

吉田 シーズン前半はだいぶワクワクできたんですけどね、でも後半が冴えなくて5位に終わってしまったということを考えると50点かなと思いますが、マリーンズの実況アナウンサーとして完全試合を実況したり、マーティンのサヨナラホームランとか山口(航輝)の逆転スリーランホームランとかを目の前に見ることができたので、個人的には70点かなと思います。

菊地 順位以上にインパクトの強いシーズンでしたよね。

吉田 そうなんです。それがマリーンズの良いところです。「見所たっぷりなシーズンだったなぁ、あれ? でも5位なんだ」みたいなね。そこを含めて愛していますから。

菊地 そんな2022シーズンで予想外だったことを挙げるとすると?

吉田 そうですねぇ。一番予想外だったのはマーティンの状態が上がらなかったというところじゃないですかね? 本来は勝負強いバッターで、ライトからの強肩もファンを魅了しますし、素晴らしい選手なんですけどね。最後まで状態が上がらなかったですね。あれは最大の誤算だったんじゃないですかねぇ。
 ただ彼はすごい人格者でチームメイトみんなから慕われていて、佐々木朗希君なんかは膝に乗っけちゃうくらい仲良しですからね。だからちょっと残念でしたね。

菊地 テレビでも結構取り上げられていましたね(笑)。そんななかで、吉田さんのなかで印象深かった試合を挙げていただきたいんですけども。

吉田 すごくたくさんありますけど、まずは佐々木朗希君の完全試合ですね。あの日は解説の有藤道世さんが試合前からずっと「もうノーヒットノーランか完全試合やるよ」って仰っていて、「いやいやいや」って思いながら実況をやっていたという、ちょっと不思議な日でしたね。

菊地 有藤さんが1週間前くらいから予言めいたことを仰っていたんですよね?

吉田 そうなんですよ。やっぱりね、レジェンドはただ者じゃないですよ。すごい人です。
 あの完全試合も印象深かったんですけど、その一週間後の次の佐々木朗希君の登板試合も結構印象に残っています。8回までまさかのパーフェクトピッチング、まさかの球数の関係で8回降板という、ちょっともう「え!?」という内容だったんですけど、印象深かったのはそのときのスタンドのお客さんの反応なんですよ。人間って想像を超えたものに出会った時って、どうやって反応していいか分かんなくなるんだなって思いましたね。

菊地 えぇ、えぇ。

吉田 というのは、1週間前の完全試合の時は回を追うごとに緊迫感が高まってきて一球一球にお客さんがすごく反応していたんですよ。ところが一週間後、また完全試合ペースでやっているときは、あまりにも現実離れしていて、お客さんが戸惑っているっていうんですかね、まさか、まさかという感じで現実を受け止めきれない、変な空気でしたよ。ピッチャー交代のアナウンスがあったときも、どよめくでもなくみんなポカーンとしていて。

菊地 (笑)。

吉田 あとは「鳥で試合中断」というのもあったんですけど、まじめなところでいうと最終戦ですよね。山口のライトへの逆転スリーランホームラン。あの一発に、大げさではなく2023シーズンへの光を見ましたね。マリーンズの希望を見ましたよ。あの打球がライトスタンドに入ったときに、「これは来年もできる! 大丈夫だ」と光を見ましたよ。
 同時に、優勝マジック1で迎えたホークスの選手達が僅かな差で優勝に届かなかったという、あの選手達の無念さというのも痛いほど伝わってきた試合でもありましたね。

菊地 マリーンズにとっては、高卒の右打ちの和製大砲が育ってくるって、結構レアというか今までなかなかなかったですよね。

吉田 ないですないです! だから期待していますよ、山口には。

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