日本代表のW杯はまだ終わっていない!今一度、原点に立ち返るべき 短期連載「異例づくめのW杯をゆく」

宇都宮徹壱

連敗が許されないセルビア代表。カメルーン戦に向けて、サポーターも緊張の面持ちだ 【宇都宮徹壱】

スイスの堅守を破ってトーナメント進出を決めたブラジル

 11月28日、FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会9日目。この日はグループGとHの計4試合が開催され、グループステージ2巡目が終わる。3巡目となる明日からは、試合の時間帯が18時と22時になり、同時に2試合ずつが行われる。ハシゴ取材ができるのも今日で最後だ。

 そんなわけでこの日は、13時のカメルーンvs.セルビア(@アル・ジャヌーブ・スタジアム)、そして19時のブラジルvs.スイス(@スタジアム974)を取材することにした。日本のグループEについては、のちほどあらためて触れることとして、まずはグループGの2試合を振り返ることにしよう。

 グループGは、初戦に勝利したブラジルとスイスが1位・2位、敗れたカメルーンとセルビアが3位・4位となっている。どちらも「負けたら終わり」という、カメルーンとセルビアの試合は、激しいゴールの応酬の末に3-3 のドローに終わった。

 1点ビハインドとなったセルビアは、前半アディショナルタイムの2ゴールで逆転。さらに後半早々にも3点目が入り、これで決まりかと思われた。しかし、背後をぶち抜かれて失点するシーンが繰り返され、またたく間に同点に。ひらめきとムラっけをたっぷり含んだ試合展開は、国名がユーゴスラビアだった時代からほとんど変わることはなかった。

苦戦のセレソンを救ったのはカゼミロ(右)のゴールだった 【GettyImages】

 もう1試合は、負傷によるネイマール不在となったブラジルが、スイスとの首位決戦を制してグループ突破となるかが注目された。拮抗した展開が続く中、ブラジルは後半19分にヴィニシウスが抜け出してネットを揺らすも、VARでノーゴールの判定。その後もスイスの堅牢な守備に悩まされたブラジルだったが、後半38分のカゼミロによるゴラッソが決まって、これが決勝点となる。ブラジルはフランスに続き、1試合を残してのトーナメント進出を果たした。
 
 ブラジルとスイスは、どちらも多様なルーツを持つ選手たちで構成されているが、カメルーンとセルビアはその真逆。二重国籍の選手もいるものの、アフリカ系とスラブ系で統一されたチーム同士の対戦ということで、1980年代のW杯を見ているような気分になった。民族的な多様化は不可逆的な時代の流れだが、ネーションズカップとしてわかりやすかった時代が、ふと懐かしく感じられたゲームでもあった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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