アジア勢が健闘する中での開催国敗退 短期連載「異例づくめのW杯をゆく」

宇都宮徹壱

アル・ジャノブ・スタジアムにて、国旗を誇らしげにたなびかせるオーストラリアのサポーター 【宇都宮徹壱】

強豪国も気になるけれど「アジア勢の躍進」にも注目!

 11月26日、FIFAワールドカップ(W杯)カタール大会7日目。この日は13時からアル・ジャノブ・スタジアムでチュニジアvsオーストラリアを、そして19時からスタジアム974でフランスvsデンマークをハシゴ取材した。

 後者は意外にも、今大会初となる欧州勢同士の対戦。両者は4年前のロシア大会でもグループで同組になり、この時は0-0で終わっている。4年ぶりとなるW杯での再戦は、キリアン・エムバペの2つのゴラッソで、フランスが2-1で快勝。グループ突破の一番乗りを果たした。

 ただし、一方的な展開というわけではなかった。デンマークもCKから、アンドレアス・クリステンセンが頭で意地の同点弾。後半41分のエムバペの決勝点が決まるまでは、どちらに転んでもおかしくない、さながらトーナメントのように緊迫したゲームだった。

デンマーク戦、後半41分に決勝点決めたエムバペ 【写真:ロイター/アフロ】

 一方の13時キックオフのゲームは、アジアとアフリカによる、いかにもグループステージらしい顔合わせである。今大会のアジア予選では、日本と熾烈な戦いを繰り広げながらも、どこかナイーブさを隠しきれなかったオーストラリア。しかし、その後は過酷なプレーオフを経て、すっかり本大会モードに切り替わっていた。

 連敗すればあとがないオーストラリアは、前半23分のミッチェル・デュークのゴールが決勝点となり、2010年大会以来となるW杯勝利を挙げた。祖国の3大会ぶりのW杯勝利に貢献し、マン・オブ・ザ・マッチにも選ばれたデュークは、J2のファジアーノ岡山所属。われわれの身近なサッカーが、しっかり世界とつながっていることを確認できたゲームでもあった。

 フランスやブラジル、アルゼンチンのような強豪国も確かに気になるけれど、今大会は間違いなく「アジア勢の躍進」にも注目が集まっている。当連載が2日間お休みしている間に、グループステージは2巡目に入った。日本がコスタリカとの重要な一戦を迎える前に、ここまでの流れをアジア勢中心に振り返ることにしたい。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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